愛知県新城市で、経営者の高齢化や後継者不足が進む中、地域の会社や個人事業を誰が引き継いでいくのか。
「新城市には後継者がいない会社がどれくらいあるのか」「事業承継について市役所に相談できるのか」「M&Aへの支援はあるのか」「事業承継で使える補助金はあるのか」――。
週刊TAKAPI編集部は、新城市の事業承継を担当する職員に電話取材し、市内の現状や相談内容、支援策について聞いた。
市によると、市内の後継者不在企業・事業者の具体的な社数や業種別割合について、市として詳細な数字は把握していない。
一方、実際の相談ではM&Aによる売却よりも、「息子や娘に事業を継がせるために、何を準備すればいいのか」といった親族内承継に関する相談が多いという。
また、事業承継をきっかけに新たな事業へ進出する「第二創業」については、上限20万円の補助制度があることも分かった。
新城市の事業承継・後継者不足の現状は?
最初に編集部が確認したのは、「新城市内に後継者不在の企業・事業者が何社あるのか」という点だ。
市の担当者によると、後継者が決まっていない企業について、市が個別に調査して具体的な社数を把握しているわけではないという。
そのため今回の取材では、
「新城市内の後継者不在企業は○社」
という市独自の数字は確認できなかった。
後継者不在率などを考える際には、民間調査会社などによる統計と、市が直接把握している行政データを区別して見る必要がある。
後継者不足が目立つ業種は?「結構バラバラ」
編集部は、製造業や建設業、小売業、サービス業など、特定の業種で後継者不足が目立つのかについても聞いた。
担当者は、事業承継で悩んでいる企業の業種について「結構バラバラ」との認識を示した。
業種別の割合について市では集計しておらず、「この業種が最も深刻」と断定できる行政データはない。
一方、新城市には製造業などの事業者も存在することから、事業承継問題は一つの業種だけではなく、地域の幅広い事業者に関係する課題といえそうだ。
新城市役所で事業承継の相談はできる?
では、経営者が「子どもに会社を継がせたい」「後継者が見つからない」と悩んだ場合、新城市役所に相談することはできるのか。
担当者によると、市が最初の相談窓口になるケースはあるという。
ただし、市職員だけで事業承継の具体的な手続きまで完結させる仕組みではない。
市は商工関係機関や国の事業承継に関する支援機関などと連携しており、専門的な相談については専門家につなぐ形で対応している。
担当者は、市に直接相談が入ること自体は「稀にはある」としながら、基本的には専門機関につなぎ、必要に応じて一緒に対応する形だと説明した。
新城市で多い事業承継相談は「息子・娘に継ぐための準備」
今回の取材で具体的に見えてきたのが、事業者から寄せられる相談の内容だ。
事業承継という言葉から、近年注目されるM&Aを思い浮かべる人も多いだろう。
しかし、新城市の担当者によれば、M&Aによって会社や事業を第三者へ売却する相談が中心ではないという。
担当者は、
「普通に息子さん、娘さんに継ぐから、そのために何を準備したらいいか、という相談が一番多い」
との趣旨で説明した。
つまり、新城市の相談現場では、少なくとも担当者の認識として、親から子への「親族内承継」に向けた準備に関する相談が目立っている。
子どもが後継者でも「準備」が必要
後継者となる子どもが決まっていても、それだけで事業承継が完了するわけではない。
実際の承継では、経営権や事業用資産、取引先との関係、従業員への説明、新経営者への引き継ぎなど、さまざまな準備が必要になる。
「誰に継がせるか」だけではなく、「いつ、どのように継がせるのか」まで考える必要がある。
新城市で「何を準備すればいいのか」という相談が出ていることは、後継者が決まった後の実務的な支援にも一定のニーズがあることを示している。
後継者がいない場合はM&Aや事業譲渡も選択肢
一方、親族や従業員の中に後継者がいない企業はどうすればいいのか。
新城市の担当者は、事業者が廃業した場合、その会社だけでなく、利用していた顧客や取引先にも影響が及ぶ可能性があると指摘した。
その上で、後継者がいない場合には、M&Aや事業譲渡なども選択肢になり得るとの考えを示した。
地域の会社が一つなくなることは、経営者だけの問題ではない。
例えば、地域に必要な商品・サービスを提供する事業者が廃業すれば、そのサービスを利用していた住民にも影響する。
取引関係にある別の中小企業や、そこで働く従業員への影響も考えられる。
だからこそ、「後継者がいない=廃業」だけではない選択肢を早い段階で検討できる環境が重要になる。
新城市の事業承継で使える補助金は?「第二創業」に最大20万円
事業承継を考える経営者にとって気になるのが、行政から受けられる補助だ。
新城市の担当者によると、事業承継を行う際、承継を契機として新しい事業に進出する「第二創業」について補助制度が設けられている。
取材時点で担当者から示された補助上限額は、
20万円
だった。
ただし、担当者によれば利用実績は多くないという。
また、補助金は条件によって対象となるかどうかが変わるため、実際に利用する場合には最新の募集要項や対象経費などを市に確認する必要がある。
「第二創業」とは?
第二創業とは、一般的に、既存企業の後継者などが事業を引き継いだ後、新しい事業分野への進出や新サービスの展開などに挑戦することを指す。
例えば、親から会社を継いだ後継者が、従来の事業だけを続けるのではなく、新商品を開発したり、新たな市場へ進出したりするケースなどが考えられる。
事業承継を単なる「世代交代」で終わらせず、次の成長につなげる考え方だ。
新城市独自の定期的な事業承継セミナーは?
編集部は、市独自で定期的な事業承継セミナーや相談会などを開催しているのかについても確認した。
今回の電話取材では、担当者から市独自で定期開催している事業承継セミナーなどは「ない」との回答があった。
一方、新城市では外部の専門機関などと連携して相談対応を行っている。
そのため現在の支援体制は、市だけですべての相談を処理するのではなく、
市役所などへの相談 → 必要に応じて専門機関へ → 専門家による支援
という連携型の支援が中心とみられる。
企業が廃業すると新城市の地域経済にどんな影響がある?
担当者が取材の中で指摘したのが、企業や事業者が廃業した際の周囲への影響だ。
事業者がなくなれば、その商品やサービスを利用していた顧客が困る可能性がある。
さらに、その会社に商品を納入していた企業や業務を請け負っていた企業など、取引先への影響も考えられる。
特に地方では、長年地域を支えてきた事業者がなくなった後、同じサービスを提供する事業者が近くに存在しないケースも考えられる。
事業承継は「会社を誰が相続するか」という経営者一家だけの問題ではなく、地域のサービス、取引、雇用をどう残すのかという地域経済の問題でもある。
新城市の事業承継、今後の課題は「早めに相談できるか」
今回の取材では、新城市内に後継者不在企業が具体的に何社あるのかについて、市独自の数字は確認できなかった。
一方で、市の相談現場では、息子や娘への親族内承継に向けて「何を準備すればいいのか」という相談が目立つことが分かった。
後継者がいない場合にはM&Aや事業譲渡という選択肢もある。
そして承継後、新しい事業へ挑戦する場合には、新城市の第二創業に関する補助制度も用意されている。
重要になるのは、経営者が高齢になり、廃業するかどうかを直前で判断する段階になって初めて動くのではなく、事業を続けられるうちから承継について考えられるかどうかだ。
新城市にとっても、地域の企業や個人事業を次世代へどう残していくのかは、今後さらに重要な地域経済政策の一つになりそうだ。
編集部の視点|「後継者不在企業の数字がない」ことも一つの課題
今回の取材で見えてきたポイントの一つが、新城市内に後継者不在の事業者がどの程度存在するのか、市として具体的な全体像を把握していないことだ。
もちろん、行政が個々の企業の後継者事情をすべて把握することは容易ではない。
一方、地域経済への影響を考えれば、「どの業種で」「どの地域で」「どの程度の事業者が承継問題を抱えているのか」を把握することは、今後の支援策を考える上で重要になる。
現在は親族内承継の相談が中心でも、経営者の高齢化が進めば、親族内で後継者を確保できない事業者が増える可能性もある。
相談が来るのを待つ支援から、廃業の可能性が高まる前に事業者へ情報を届ける支援へ移れるか。
新城市の事業承継政策を今後検証していく上で、一つのポイントになりそうだ。
※編集部の考察:公開情報、取材内容、地域経済・事業承継を取り巻く状況を基に週刊TAKAPI編集部が独自に考察しています。一部に見解を含みます。
※本記事は新城市担当者への取材内容をもとに構成しています。発言は会話の趣旨を損なわない範囲で整理しています。補助制度の対象要件や金額などは変更される可能性があります。制度を利用する場合は新城市などの最新情報をご確認ください。
週刊TAKAPI 編集部/黒木
独立メディアだからこそできる、忖度しない報道を。

コメント
0件まだコメントはありません。最初のコメントを投稿してみませんか。
この記事のコメント投稿は締め切られています。