東京商工リサーチが2026年10月8日に発表した調査によると、2026年度上半期(4~9月)の全国の飲食業倒産件数は514件となり、前年同期比3.4%増加した。
年度上半期としては、調査対象となる1997年以降の30年間で最多を更新。初めて500件を超えた。
特に深刻なのがラーメン店だ。
ラーメン店の倒産は41件、前年同期比46.4%増となり、調査で示された主な飲食業態の中で最大の増加率を記録した。
背景には、食材価格や光熱費、人件費の上昇に加え、販売不振や人手不足など、飲食店経営を圧迫する複数の要因がある。
飲食店の倒産が増え続けるなか、地域に根差した個人経営店や小規模事業者の経営環境が厳しさを増している。
2026年度上半期の飲食業倒産は514件、過去30年間で最多
東京商工リサーチによると、2026年度上半期の飲食業倒産は514件となった。
前年同期から3.4%増加し、年度上半期として過去最多を更新した。
今回の調査は、全国で発生した負債1,000万円以上の企業倒産を対象としている。
飲食業には、レストラン、ラーメン店、居酒屋、喫茶店、持ち帰り飲食サービス業などが含まれる。
飲食業倒産の主な数字
- 飲食業全体:514件
- 前年同期比:3.4%増
- ラーメン店:41件
- ラーメン店の増加率:46.4%
- 物価高倒産:79件
- 人手不足倒産:41件
- 資本金1,000万円未満:460件
特に注目されるのが、倒産企業の規模だ。
資本金1,000万円未満の企業は460件に達し、飲食業全体の**89.4%**を占めた。
倒産した企業の約9割が小規模事業者だったことになる。
大手飲食チェーンと比較して、仕入れ価格の交渉力や資金力が限られる小規模店舗ほど、コスト上昇の影響を受けやすい構造が浮き彫りになった。
ラーメン店の倒産はなぜ46.4%も増加したのか?
今回の調査で、特に大きな増加率を示したのがラーメン店だった。
2026年度上半期のラーメン店倒産は41件。
前年同期の28件から13件増加し、増加率は46.4%となった。
ラーメン店の経営を圧迫する3つの要因
① 食材価格の上昇
ラーメン店では、小麦粉を使用した麺、豚肉や鶏肉などのスープ材料、チャーシュー、野菜、調味料など、多くの食材を使用する。
これらの仕入れ価格が上昇すると、販売価格を据え置いた場合、利益率が低下する。
② 光熱費の負担
ラーメン店では、スープの仕込みや調理にガスや電気を使用する。
特に長時間の加熱を必要とする調理工程では、エネルギー価格の上昇が経営コストに影響する。
③ 人件費の上昇と人手不足
最低賃金の引き上げや人材確保の難しさも、飲食店経営に影響している。
従業員を確保するために賃金を引き上げれば、固定費が増加する。
一方、人手不足によって営業時間の短縮や定休日の増加を余儀なくされれば、売上機会を失う可能性もある。
こうした複数の負担が重なることが、ラーメン店を含む飲食業界全体の経営課題となっている。
ラーメン1杯1,000円でも利益が残らない?値上げが難しい飲食店の現実
飲食店の経営では、売上高だけでなく、食材費や人件費などを差し引いた利益が重要になる。
例えば、ラーメン1杯を1,000円で販売していても、その金額がそのまま店舗の利益になるわけではない。
売上から食材費、人件費、家賃、光熱費、設備維持費などを支払う必要がある。
仮に、これまで1杯当たり100円の利益が残っていた店舗で、食材費や光熱費などの負担が合計50円増加した場合、販売価格を据え置けば利益は50円に減少する。
これは説明のための仮定であり、実際の店舗の利益構造を示すものではない。
しかし、利益率が低い店舗では、わずかなコスト増加でも経営に大きな影響を与える。
一方、販売価格を引き上げれば、消費者の来店頻度が減少する可能性もある。
値上げしなければ利益が減り、値上げすれば客離れが懸念される。
こうした難しい経営判断が、多くの飲食店に求められている。
居酒屋96件、レストラン110件 ラーメン店以外も倒産増加
倒産が増えているのはラーメン店だけではない。
東京商工リサーチの調査では、複数の飲食業態で倒産件数が増加している。
主な飲食業態別の倒産件数
| 業態 | 倒産件数 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 食堂・レストラン | 110件 | 27.9%増 |
| 居酒屋 | 96件 | 15.6%増 |
| ラーメン店 | 41件 | 46.4%増 |
| 喫茶店 | 35件 | 12.9%増 |
| 中華料理店 | 16件 | 33.3%増 |
※東京商工リサーチの公表資料をもとに週刊TAKAPI編集部作成。業態区分には集計上の包含関係があるため、単純合算はできない。
倒産件数では食堂・レストランが110件と多い一方、増加率ではラーメン店が突出している。
中華料理店も33.3%増加しており、飲食業界の幅広い業態で経営環境が厳しくなっている。
飲食店の倒産原因は「販売不振」が82.4%
飲食業倒産514件の原因別内訳を見ると、最も多かったのは販売不振だった。
販売不振による倒産は424件で、全体の**82.4%**を占めた。
前年同期比でも7.3%増加している。
次いで、過去の赤字累積などを示す「既往のシワ寄せ」が33件、「事業上の失敗」が24件となった。
また、販売不振や赤字累積などに関連する「不況型倒産」は457件に達し、全体の88.9%を占めている。
物価高倒産は23.4%増、人手不足倒産は57.6%増
今回の調査では、コスト上昇や人材確保の問題も目立った。
物価高倒産は79件で、前年同期比23.4%増加。
人手不足倒産は41件となり、前年同期比57.6%増加した。
食材費や光熱費の上昇に加え、人材確保の難しさが飲食店経営に影響している。
販売価格への転嫁が進まない店舗では、こうした負担が利益や資金繰りを圧迫することになる。
飲食店の倒産は個人店や小規模企業に集中
今回の調査で見逃せないのが、倒産企業の規模だ。
資本金1,000万円未満の企業は460件で、全体の89.4%を占めた。
さらに、負債額別では、1,000万円以上5,000万円未満の倒産が379件となり、全体の73.7%に達している。
負債1億円未満の倒産は456件で、全体の88.7%を占めた。
つまり、大規模な飲食企業の経営破綻だけでなく、比較的小さな負債を抱える事業者の倒産が中心となっている。
大手チェーンと個人経営店の違い
一般的に、大手飲食チェーンは大量仕入れや物流の効率化などによって、一定のコスト削減効果を得られる場合がある。
一方、個人経営店や小規模事業者は、仕入れ価格の上昇を自社の努力だけで吸収することが難しい。
さらに、店舗数が少ない場合、1店舗の売上減少が事業全体の資金繰りに直結する。
今回の調査結果は、こうした小規模事業者の経営上の脆弱性を示すものといえる。
ラーメン店の閉店は今後も増えるのか?2026年後半の焦点
2026年度下半期に向けて、飲食業界では引き続きコスト負担が課題となる。
特に注目されるのは、最低賃金の引き上げによる人件費の増加だ。
人材を確保するためには待遇改善が必要となる一方、売上が伸びなければ利益が圧迫される。
また、食材価格や光熱費の動向によっては、追加の価格改定を検討する店舗が増える可能性もある。
ただし、今回の調査だけで、今後のラーメン店の倒産件数が必ず増加すると断定することはできない。
実際の動向は、消費者の外食需要、価格改定の浸透状況、仕入れ価格、人件費などによって左右される。
【編集部の考察】ラーメン店の倒産増加は地域経済にも影響するのか
今回の調査で注目すべきなのは、ラーメン店の倒産が46.4%増加したという数字だけではない。
飲食業全体の倒産の約9割を、資本金1,000万円未満の小規模事業者が占めている点だ。
ラーメン店や喫茶店、個人経営の飲食店は、地域住民の日常生活と密接に関わっている。
こうした店舗が減少すれば、地域の飲食店の選択肢が狭まるだけでなく、従業員の雇用や食材の仕入れ先などにも影響が及ぶ可能性がある。
愛知県・東三河の飲食店にも共通する課題
愛知県の豊橋市、豊川市、蒲郡市、新城市、田原市などの東三河地域でも、飲食店は地域経済を支える重要な事業者の一つだ。
全国的に食材費や人件費が上昇するなか、地域の個人経営店も同様の経営課題に直面している可能性がある。
ただし、今回の東京商工リサーチの公表資料からは、東三河地域のラーメン店倒産件数や増加率までは確認できない。
全国の倒産増加が、そのまま東三河でも同じ割合で発生しているとは限らない点には注意が必要だ。
今後は、地域別の倒産状況や店舗の価格改定、閉店・廃業の動向を確認することが重要になる。
また、倒産件数には、負債1,000万円未満の事業者や自主的な廃業などが含まれていない。
そのため、今回の514件という数字だけで、飲食店の市場退出の全体像を把握することはできない。
まとめ|ラーメン店倒産46.4%増、飲食業界は厳しい経営環境が続く
2026年度上半期の飲食業倒産は514件となり、1997年以降の年度上半期で最多を更新した。
なかでもラーメン店は41件、前年同期比46.4%増と大幅に増加した。
倒産企業の約9割を小規模事業者が占め、販売不振に加えて物価高や人手不足が経営を圧迫している。
飲食店は地域住民に身近な存在である一方、原材料費や人件費などの変化に影響されやすい業種でもある。
今後、飲食店が価格改定と顧客確保をどのように両立していくのか。
地域の個人経営店を含め、飲食業界の動向が注目される。
倒産は、資金繰りの悪化などによって事業の継続が困難になった状態を指す。一方、閉店は店舗の営業を終了することであり、必ずしも経営破綻を意味しない。
経営者の高齢化や後継者不足、店舗移転、事業転換などによる閉店もある。そのため、今回の倒産件数をラーメン店の閉店総数と考えることはできない。
会計上は利益が出ていても、借入金の返済や仕入れ代金の支払いに必要な現金が不足すれば、事業を継続できなくなる場合がある。
これを一般に「黒字倒産」と呼ぶ。利益と手元資金は必ずしも一致しないため、飲食店経営では資金繰りの管理も重要になる。
閉店までの期間を調べるには、開業年別の店舗数や廃業状況などを追跡した統計が必要になる。
また、法人の倒産と個人事業主の自主廃業では集計対象が異なるため、単純に比較することはできない。
価格は食材費、人件費、店舗の立地、競合店の状況、消費者の需要などによって決まる。
一方、コスト上昇が続けば、採算を確保するために価格改定を検討する店舗が増える可能性はある。
事業者が破産した場合、利用者が返金を求める債権者となっても、必ず全額が返金されるとは限らない。
前払い式のサービスには、資金決済法に基づく保護制度が適用される場合もあるため、購入した券の種類や発行条件を確認する必要がある。
ただし、調査会社によって集計対象や業種分類、調査期間が異なる場合がある。
倒産件数を比較する際は、同じ調査機関の同じ基準で集計された数字を使用することが重要だ。
ただし、制度ごとに審査や要件があり、必ず融資や支援を受けられるわけではない。
資金繰りが悪化してからでは選択肢が限られることもあるため、早い段階で専門機関に相談することが重要になる。
※本記事は東京商工リサーチの公表資料をもとに作成しています。「編集部の考察」には、公開情報や一般的な経営環境を踏まえた週刊TAKAPI編集部の見解が含まれます。個別企業・店舗の倒産理由を断定するものではありません。
週刊TAKAPI 編集部/黒木
独立メディアだからこそできる、忖度しない報道を。

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