中日ドラゴンズ2軍移転「10年420億円」 東三河・蒲郡の可能性と豊橋への波及を検証

中日ドラゴンズの2軍ファーム拠点移転で開業後10年間約420億円の経済波及効果が試算され、東三河の蒲郡市と豊橋への波及を検証する記事のアイキャッチ

中日ドラゴンズが進めるファーム拠点の移転計画をめぐり、候補自治体の競争が本格化している。

球団は現在のナゴヤ球場に代わる新たなファーム拠点を2030年代前半に整備する計画で、東海3県から28自治体が応募。このうち22自治体が一次選定を通過した。その後、選考を辞退した自治体もあり、各自治体は二次提案に向けて候補地や事業計画の具体化を進めている。

移転計画をめぐって注目されているのが、三菱UFJリサーチ&コンサルティングなどが示した経済波及効果だ。

新拠点をまちづくりと一体で整備した場合、建設期間中に約220億円、開業後10年間で約420億円の経済波及効果を見込む。税収増は10年間で約19億~31億円、交流人口は年間約40万人との試算だ。

東三河では蒲郡市が一次選定を通過している。豊橋市は候補自治体に入っていないものの、仮に蒲郡市への移転が実現すれば、交通、宿泊、飲食などを通じ、豊橋を含む東三河全体への波及も検討課題となる。

22自治体が一次選定通過 東三河では蒲郡市

一次選定を通過したのは愛知県18市町、岐阜県3市、三重県1市の計22自治体。

愛知県内では、名古屋市、犬山市、豊田市、瀬戸市、小牧市、蒲郡市、安城市、常滑市などが選定を通過した。

岐阜県では瑞穂市、大垣市、羽島市、三重県では桑名市が残った。

東三河で一次選定を通過したのは蒲郡市だけとなっている。

球団側は候補地について、バンテリンドーム ナゴヤから車で原則1時間以内、公共交通で無理なくアクセスできること、7万~8万平方メートル程度の土地を確保できることなどを条件としている。

必要なのはメイン球場だけではない。

サブ球場、サブグラウンド、屋内練習場、クラブハウス、選手寮、駐車場などを一体的に整備する必要があり、自治体側にはまとまった用地と交通基盤、長期的な施設運営への対応が求められる。

「420億円」は自治体の利益ではない

経済波及効果として示された約420億円は、誘致自治体にそのまま入る収入ではない。

来訪者による飲食、買い物、交通、施設運営、雇用、企業間取引などを通じて地域経済に波及する効果を推計したものだ。

開業後10年間の単純平均では年間約42億円となるが、自治体の建設費や土地取得費、造成費、インフラ整備費、施設の維持管理費を差し引いた利益を示す数字ではない。

誘致の効果を判断するには、経済波及効果だけではなく、自治体が負担する初期投資と長期的な維持費を合わせて見る必要がある。

一次選定後に選考から離れた自治体があることも、事業費や財政負担が重要な判断材料になることを示している。

年間40万人のうち25万人は「野球以外」

試算では、新ファーム拠点による交流人口を年間約40万人と想定している。

内訳は、野球を目的とした来訪者が約15万人、野球以外を目的とした来訪者が約25万人。

つまり、想定される交流人口の6割以上を野球観戦以外の来訪で確保する計画となっている。

この前提に立てば、新施設はファーム公式戦と選手育成だけを行う場所では足りない。

公園、飲食、イベント、地域交流などを組み合わせ、試合のない日にも利用される施設にできるかが、経済波及効果を左右する。

420億円という試算は、こうした「まちづくり型」の整備が進むことを前提とした数字として見る必要がある。

蒲郡市、観光との連携を視野

蒲郡市は、中日ドラゴンズのファーム拠点誘致による交流人口の増加や地域経済の活性化、都市ブランドの向上などを期待している。

市では誘致検討の過程で、形原地区、市民会館関連用地、海陽町など複数の候補地が議論されてきた。

中でも海陽地区は、既存の観光・レジャー機能との連携を考える上で注目されるエリアの一つだ。

蒲郡市はラグーナ蒲郡をはじめ、観光を目的とする来訪者を受け入れてきた。

ファーム拠点と既存の観光資源を組み合わせることができれば、試算で想定されている「野球以外の来訪者」を生み出す可能性がある。

ただし、最終的にどの候補地を二次提案で示すのか、造成やインフラ整備にどの程度の費用が必要になるのかなど、公表されていない点も残る。

蒲郡にはファーム公式戦開催の実績

蒲郡市ではこれまでも、中日ドラゴンズのファーム公式戦が開催されてきた。

プロ野球の試合を受け入れてきた実績は、地域と球団との接点という意味では一つの材料になる。

ただ、常設のファーム拠点となれば、年間数試合の開催とは事業規模が大きく異なる。

試合運営だけではなく、選手や球団関係者の日常的な滞在、練習施設の管理、ファンの来訪、地域イベント、少年野球などとの連携まで含む長期的な運営になる。

誘致効果を判断するには、これまでの公式戦開催実績と、常設拠点の運営を分けて考える必要がある。

豊橋は候補外 それでも経済波及の可能性

豊橋市は今回の一次選定22自治体には入っていない。

一方、蒲郡市への移転が実現した場合、豊橋が担う可能性のある役割はある。

豊橋駅は東海道新幹線の停車駅で、東三河の主要な交通結節点となっている。

宿泊施設、飲食店、商業機能も集積しており、遠方から蒲郡を訪れるファンや球団関係者の一部が豊橋を経由する可能性がある。

現時点で、蒲郡市への移転によって豊橋市に具体的にいくらの経済効果が発生するかという試算は公表されていない。

そのため、豊橋への波及はあくまで今後の地域連携と来訪者の動線次第となる。

豊橋市民球場にもドラゴンズとの接点

豊橋市民球場では、中日ドラゴンズの主催試合が開催されてきた。

蒲郡でもファーム公式戦が行われてきたことから、東三河はすでにドラゴンズとの一定の接点を持つ地域といえる。

蒲郡にファームの常設拠点ができれば、その関係は単発の公式戦開催から、年間を通じたプロスポーツ拠点へ変わる。

豊橋にとっては、球場そのものを持つことよりも、蒲郡へ来る来訪者を宿泊、飲食、交通などに結びつけられるかが重要になる。

東三河全体で問われる来訪者の回遊

年間40万人という交流人口が実現した場合でも、その消費が自動的に東三河全体へ広がるわけではない。

来訪者が試合や施設利用だけで蒲郡を訪れ、そのまま帰れば周辺地域への波及は限定される。

一方、蒲郡での観戦や観光と、豊橋での宿泊や飲食、豊川、田原、新城など周辺地域への観光を組み合わせることができれば、滞在時間と地域内消費を増やせる可能性がある。

これは行政だけでなく、鉄道、ホテル、飲食、観光、商業事業者などを含めた広域的な連携が必要になる。

蒲郡市も誘致効果を市内だけに限定せず、東三河や静岡県西部を含む広域的な活性化につなげる考えを示している。

豊田市は中央公園を候補地に

蒲郡以外の自治体も候補地の具体化を進めている。

豊田市は、豊田スタジアム近くの中央公園第2期整備区域を候補地としている。

中心市街地に近く、既存のスポーツ施設や公共施設との連携が可能な点が特徴となる。

既にスポーツ観戦による人の流れがある地域で、新たなファーム拠点をどのように組み込むかがポイントになる。

瀬戸市、市有地約11万平方メートル

瀬戸市は市有地の窯神鉱山跡地を候補地としている。

面積は約11万3000平方メートルで、球団側が求める規模を上回る。

鉄道駅から徒歩圏にあり、バンテリンドーム ナゴヤへの距離も比較的短い。

市有地でまとまった土地を確保できる点は、土地取得や事業スケジュールを考える上で特徴となる。

小牧市、市民の誘致活動も進む

小牧市では既存のスポーツ施設や周辺用地を活用した誘致案が検討されている。

誘致を求める署名活動も行われ、市民側からの誘致機運が数字として示されている。

長期間にわたるファーム拠点の運営では、施設条件だけでなく、市民や地元企業がどのように関わるかも一つの要素になる。

犬山市、観光との回遊が課題

犬山市も一次選定を通過し、誘致に向けた準備を進めている。

犬山市はすでに観光客を受け入れている都市だが、既存の観光地とファーム拠点との間で来訪者をどのように回遊させるかが課題となる。

観光客が多いこと自体と、ファーム施設周辺に非野球目的の来訪者を年間25万人生み出せることは別の問題だ。

三重県では桑名市が一次選定通過

三重県では桑名市が一次選定を通過した。

岐阜県では瑞穂市、大垣市、羽島市が残っており、候補地域は名古屋近郊だけでなく、東三河、西三河、尾張、岐阜、三重まで広がっている。

各自治体は土地、アクセス、観光、既存施設、財政負担など異なる条件を抱えており、二次選定では具体的な事業計画が比較されることになる。

経済波及効果と自治体負担を同時に検証する必要

今回の移転計画では、「10年間420億円」という経済波及効果が大きく報じられている。

一方、自治体側には土地、造成、道路、上下水道、駐車場などの整備費が発生する可能性がある。

完成後には維持管理費も必要になる。

どの程度を球団側が負担し、どの程度を自治体が担うのかは、候補地や提案内容によって異なる。

誘致効果を判断する際には、経済波及効果だけでなく、公費投入額や将来の維持管理費を含めた費用対効果の検証が必要になる。

東三河にとっては「蒲郡だけの案件」ではない

東三河で一次選定を通過したのは蒲郡市だけだが、移転が実現した場合の影響は市境で区切られるとは限らない。

蒲郡には観光機能があり、豊橋には新幹線や宿泊、商業機能がある。

豊川、田原、新城を含め、それぞれの地域資源と来訪者を結びつけることができれば、ファーム拠点が広域的な交流人口の増加につながる可能性がある。

逆に、自治体ごとに個別対応を続ければ、来訪者の消費を東三河全体へ広げる効果は限定的になる。

蒲郡市への誘致が実現するかどうかだけでなく、誘致後を想定した広域的な受け入れ体制をどこまで準備できるかも論点となる。

編集部まとめ

中日ドラゴンズのファーム拠点移転では、東海3県から28自治体が応募し、22自治体が一次選定を通過した。

経済波及効果は、まちづくりと一体で整備した場合、開業後10年間で約420億円と試算されている。

ただし、その前提となる年間約40万人の交流人口のうち、約25万人は野球以外の目的による来訪者として想定されている。

球場を整備するだけで420億円の効果が生まれるわけではない。

公園、飲食、イベント、観光などを組み合わせ、試合のない日にも人が訪れる施設をつくれるかが重要になる。

東三河では蒲郡市が一次選定を通過した。

蒲郡への移転が実現した場合、豊橋の交通、宿泊、飲食などへの波及も考えられるが、具体的な経済効果額は現時点で示されていない。

今後は候補自治体の選定だけでなく、自治体負担額、候補地の整備費、来訪者の広域回遊策などを含め、事業全体の費用対効果を検証する必要がある。

週刊TAKAPIは、東三河唯一の一次選定通過自治体である蒲郡市の提案内容と、豊橋を含む地域経済への波及について引き続き検証する。

週刊TAKAPI 編集部

特記事項

本記事は2026年10月12日時点で公表されている中日ドラゴンズのファーム拠点移転計画、一次選定結果、候補自治体の公表資料、経済波及効果に関する試算をもとに構成しています。

約420億円は開業後10年間の経済波及効果の試算で、誘致自治体の収入や純利益ではありません。

税収増は10年間で約19億~31億円、交流人口は年間約40万人、うち野球目的約15万人、非野球目的約25万人と想定されていますが、いずれも一定の施設整備や来訪者数などを前提とした試算です。

蒲郡市への移転や候補地は現時点で確定していません。豊橋市を含む東三河各地域への具体的な経済波及額も公表されていません。

Q中日ドラゴンズの2軍本拠地はいつ移転する予定ですか?
A2030年代前半の移転を目指しています。優先交渉権者は2027年5月ごろに決まる予定です。
Q一次選定を通過した自治体はいくつですか?
A東海3県の22自治体が一次選定を通過しました。その後、選考を辞退した自治体もあります。
Q経済波及効果420億円は自治体の利益ですか?
Aいいえ。地域内の消費や企業取引などを含む開業後10年間の経済波及効果の試算で、自治体の純利益ではありません。
Q東三河ではどの自治体が一次選定を通過しましたか?
A蒲郡市です。豊橋市は一次選定22自治体には入っていません。
Q蒲郡への移転が実現した場合、豊橋にも経済効果がありますか?
A豊橋市への具体的な経済波及額は示されていません。ただし、豊橋には新幹線、宿泊、飲食などの機能があり、蒲郡への来訪者を地域内で回遊させることができれば、周辺地域への消費波及につながる可能性があります。

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