ショート動画アプリ「TikTok(ティックトック)」を展開する中国IT大手、バイトダンス(ByteDance)創業者の張一鳴(ジャン・イーミン)氏(43)が、アジアで最も資産を持つ富豪となった。
米ブルームバーグが集計する富豪ランキングによると、張氏の推定資産は1,055億ドル(約16兆7,000億円)に達した。
インドの大富豪ゴータム・アダニ氏を上回り、アジア首位に浮上した。
張氏の資産は2019年の約130億ドルから8倍以上に拡大。TikTokの世界的な成長に加え、バイトダンスが進める人工知能(AI)事業への期待が資産価値を押し上げたとみられる。
今回の首位交代は、アジアの富豪ランキングにおいて、エネルギーやインフラなどの伝統産業に加え、デジタル技術やAIを基盤とする企業の存在感が高まっていることを示している。
アジア一の富豪は誰?2026年はバイトダンス創業者の張一鳴氏
2026年10月10日付の中央日報日本語版などによると、ブルームバーグ・ビリオネア指数で張一鳴氏がアジア最高の富豪となった。
報道で示された主な富豪の推定資産額は次の通り。
【アジアの主な富豪と推定資産】
- 張一鳴氏(中国):1,055億ドル(約16兆7,000億円)
- ゴータム・アダニ氏(インド):1,048億ドル
- ムケシュ・アンバニ氏(インド):813億ドル
- 柳井正氏(日本):637億ドル
- 孫正義氏(日本):536億ドル
- 李在鎔氏(韓国):327億ドル
※2026年10月10日付報道で紹介されたブルームバーグの集計値。資産額は株価や企業評価額、為替などによって変動する。
張氏とアダニ氏の資産差は約7億ドルだった。
一方、日本のユニクロを展開するファーストリテイリングの柳井正氏との差は418億ドルに上る。
アジアの富豪ランキングでは、インドの財閥系経営者が上位を占めてきたが、今回、中国のテクノロジー企業創業者が首位に立った。
張一鳴氏の資産はなぜ急増した?2019年から8倍以上に
張氏の資産増加は、ここ数年間で急速に進んだ。
ブルームバーグが2019年3月に張氏の資産を集計した際、推定額は約130億ドルだった。
それが2026年には1,000億ドルを突破した。
約7年間で資産規模は8倍以上となった計算だ。
TikTokの世界的成長が資産形成の基盤に
バイトダンスは2012年に設立された中国のテクノロジー企業だ。
同社は利用者の関心に合わせてコンテンツを表示する推薦アルゴリズムを強みとして成長した。
中国国内ではニュース配信アプリ「今日頭条」を展開。その後、短編動画サービス「抖音(Douyin)」を投入した。
海外市場ではTikTokが世界的な人気を獲得した。
動画を次々と表示する仕組みや、利用者の好みに応じた推薦機能が普及を後押しした。
こうした事業拡大がバイトダンスの企業価値を高め、創業者である張氏の保有資産の増加につながった。
非上場企業でも創業者の資産が増える理由
バイトダンスは非上場企業だ。
そのため、上場企業のように市場で日々の株価が形成されるわけではない。
富豪ランキングでは、投資家による株式評価や企業価値の推計などをもとに、創業者が保有する株式の価値を算定している。
つまり、張氏の推定資産約16.7兆円は、同額の現金を保有していることを意味しない。
保有株式の評価額が大きな割合を占めている。
TikTokだけではない バイトダンスのAI事業が資産急増を後押し
今回の資産増加を考えるうえで重要なのが、バイトダンスのAI事業だ。
同社はショート動画サービスに加え、生成AI分野への投資を進めている。
代表的なサービスとして、中国市場で展開するAIチャットボット「豆包(Doubao)」や、AI動画生成技術「Seedance」がある。
AIチャットボット「豆包」とは?
豆包は、利用者の質問に回答したり、文章作成などを支援したりする生成AIサービスだ。
中国では大手IT企業がAIサービスの開発競争を繰り広げている。
バイトダンスもその一角を担い、従来の動画配信事業とは異なる収益機会を模索している。
AI動画生成「Seedance」にも注目
Seedanceは、AIを利用して動画を生成する技術だ。
バイトダンスがこれまで蓄積してきた動画関連技術とAI開発を組み合わせることで、新たな事業展開が期待されている。
ただし、AI分野では開発費や計算設備への投資負担も大きい。
AIサービスへの期待が企業価値を押し上げる一方、将来的な収益性がどこまで高まるかは引き続き注目される。
張一鳴氏とは何者?43歳でアジア最高の富豪になった経歴
張一鳴氏は1983年、中国福建省生まれ。
南開大学でソフトウエア工学を学び、IT業界で経験を積んだ。
2012年には梁汝波氏らとバイトダンスを創業した。
同社の特徴は、コンテンツを人手だけで選別するのではなく、利用者の行動データを分析して情報を推薦する技術を重視したことにある。
この仕組みはニュース配信からショート動画へと応用され、TikTokの成長にもつながった。
2021年にCEOを退任
張氏は2021年、バイトダンスの最高経営責任者(CEO)を退任した。
現在は共同創業者の梁汝波氏が経営を率いている。
張氏は経営トップを退いたものの、保有株式の価値が高まったことで、推定資産は増加を続けている。
日本の富豪と比較 柳井正氏や孫正義氏との差は?
今回のランキングでは、日本を代表する経営者との資産差も注目される。
ファーストリテイリングを率いる柳井正氏の推定資産は637億ドル。
ソフトバンクグループの孫正義氏は536億ドルと報じられた。
張氏の1,055億ドルと比較すると、柳井氏の約1.66倍、孫氏の約1.97倍に相当する。
ただし、それぞれの資産は保有株式や投資先企業の評価額などによって変動する。
今回の数字だけで、各企業の収益力や経営の優劣を判断することはできない。
【週刊TAKAPI編集部の考察】アジアの富豪ランキングはAI企業中心に変わるのか
今回の首位交代で注目したいのは、張氏個人の資産額だけではない。
アジアの富の形成において、デジタルプラットフォームとAI技術の重要性が増している点だ。
従来、アジアの大富豪にはエネルギー、通信、インフラ、小売りなどの事業で財を築いた経営者が多かった。
一方、バイトダンスは利用者のデータ分析やソフトウエア技術を事業の中核としている。
AI企業の価値は今後も上昇するのか
AI市場では、企業の将来的な成長期待が評価額に大きく影響する場合がある。
バイトダンスもAI事業の拡大によって企業価値が高まる可能性がある一方、競争激化や巨額の設備投資が収益を圧迫する可能性もある。
また、TikTokを巡る各国の規制や個人情報保護に関する問題も、事業の先行きを左右する要因となる。
AI事業への期待が、実際の利益成長につながるか。
今後の富豪ランキングを考えるうえでも重要な視点になりそうだ。
ブルームバーグの2026年10月10日更新の世界富豪ランキングでは、張氏は世界18位に位置している。
特に非上場企業の株式は市場価格が明確でないため、評価方法によって推定資産額に差が生じることがある。
企業価値の下落や保有株式の評価変更、為替変動などによって、推定資産が減少する可能性がある。
富豪ランキングは確定した財産額ではなく、一定時点の推計値である。
まとめ|TikTok創業者がアジア最高の富豪に
バイトダンス創業者の張一鳴氏が、推定資産約1,055億ドルでアジア最高の富豪となった。
2019年から約7年間で資産は8倍以上に拡大した。
TikTokの世界的な成長に加え、生成AI分野への積極的な投資が企業価値の評価に影響している。
一方で、AI事業の収益化や各国の規制など、今後の事業運営には不確実性も残る。
動画配信からAIへ。バイトダンスの事業拡大が、アジアの富豪ランキングにも変化をもたらしている。
今後は、AI関連事業の成長がどこまで続くのかが注目される。
※本記事の資産額は報道時点の推定値です。株価、企業評価額、為替などにより変動します。編集部の考察部分は公開情報をもとにした独自の分析であり、企業や関係者の公式見解を示すものではありません。
週刊TAKAPI 編集部/黒木
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