全国で新築一戸建て住宅の「平屋化」が進んでいる。
住宅情報サイト「SUUMO(スーモ)」の調査によると、新築木造一戸建て住宅に占める平屋の割合は、2015年の8.1%から2025年には19.6%に上昇した。
この10年間で割合は約2.4倍となり、新築木造一戸建てのおよそ5軒に1軒が平屋という状況になっている。
特に平屋率が高いのは九州地方だ。宮崎県では63.4%、鹿児島県では59.5%に達し、新築住宅の半数以上を平屋が占めている。
背景には、地震への備えや高齢化による住まい方の変化があるとみられる。一方、東京都の平屋率はわずか1.9%で、地域による大きな違いも浮き彫りになった。
全国の平屋率は19.6% 10年間で約2.4倍に拡大
リクルートが運営するSUUMOの調査では、新築木造一戸建て住宅に占める平屋の割合が大きく上昇している。
全国平均の推移は次の通り。
2015年:8.1%
2025年:19.6%
増加幅:11.5ポイント
倍率:約2.4倍
かつては2階建て住宅が一般的だった新築一戸建て市場で、平屋が存在感を強めている。
ただし、この数字は新築木造一戸建て住宅を対象とした割合であり、マンションや既存住宅を含む国内住宅全体の平屋率を示したものではない。
平屋率ランキング2025 宮崎県63.4%で全国トップ
都道府県別に見ると、平屋の普及には大きな地域差がある。
今回の報道で確認できた主な都道府県の割合は次の通り。
平屋率が高い地域
宮崎県:63.4%
鹿児島県:59.5%
香川県:52.9%
熊本県:37.4%
石川県:32.0%
宮崎県と鹿児島県では新築木造一戸建て住宅の約6割が平屋となっている。
また、九州以外では香川県も52.9%と高く、平屋人気が九州だけに限らないことが分かる。
平屋率が低い地域
東京都:1.9%
神奈川県:3.9%
大阪府:4.2%
東京都と宮崎県の差は61.5ポイントに達する。
大都市圏では土地価格や敷地面積などの条件から、限られた土地を立体的に活用できる2階建て以上の住宅が選ばれやすいと考えられる。
一方、比較的広い敷地を確保しやすい地域では、平屋を建築する選択肢が広がる。
ただし、こうした土地条件が今回の地域差にどの程度影響したかについては、別途検証が必要だ。
熊本県の平屋率は37.4% 地震への備えが住宅選びに影響か
熊本県では、2015年に25.3%だった平屋率が2025年には37.4%に上昇した。
10年間で12.1ポイント増加したことになる。
共同通信の報道によると、2016年の熊本地震をきっかけに平屋の増加傾向が加速したという。
平屋は一般的に2階建て住宅と比較して建物の重心を低く設計しやすく、地震時の揺れに対して有利な面がある。
また、階段を使わずに屋外へ移動できるため、高齢者や足の不自由な人にとって避難しやすい構造でもある。
ただし、平屋であれば必ず地震に強いというわけではない。
実際の耐震性能は、建物の構造、耐力壁の配置、地盤、基礎、施工品質などによって異なる。
平屋を検討する場合も、耐震等級や地盤調査の結果を確認することが重要だ。
石川県では平屋率が約8倍に 能登半島地震の影響も
今回の調査で注目されるのが石川県だ。
石川県の2025年の平屋率は32.0%となり、2015年と比較した倍率は約8倍に達した。
報道では、2024年の能登半島地震の影響に加え、屋根の雪下ろしがしやすいことも平屋の評価につながっている可能性が指摘されている。
積雪地域では、建物の高さや屋根の形状が維持管理の負担に影響する。
ただし、平屋であっても屋根の雪下ろしには転落などの危険があり、必ず安全に作業できるわけではない。
石川県の増加についても、地震だけを理由と断定することはできず、住宅需要や土地条件など複数の要因を考える必要がある。
なぜ平屋が人気なのか?耐震性だけではない3つの理由
平屋への関心が高まる背景には、防災以外にも住宅購入者の暮らし方の変化がある。
① 階段のない生活で老後も暮らしやすい
平屋の大きな特徴は、基本的な生活空間をワンフロアにまとめられることだ。
寝室、浴室、トイレ、リビングなどを同じ階に配置できるため、階段の上り下りが不要になる。
高齢になってからも生活しやすい住宅を求める人にとって、平屋は有力な選択肢となる。
② 家事動線を短く設計しやすい
洗濯、掃除、料理などの日常生活でも、上下階の移動がないことはメリットになる。
洗濯機から物干し場、収納までを近くに配置するなど、生活動線をコンパクトに設計できる。
ただし、間取りによっては廊下が長くなる場合もあり、平屋だから必ず家事が楽になるとは限らない。
③ 地震時に屋外へ避難しやすい
階段を使わずに玄関や掃き出し窓へ移動できる点も特徴だ。
特に高齢者や小さな子どもがいる世帯では、避難経路を考えるうえで重要な要素になる。
一方で、浸水想定区域では2階以上への垂直避難が難しくなる可能性がある。
住宅を建てる際には、地震だけでなく洪水や津波などの災害リスクも確認する必要がある。
平屋は2階建てより安い?建築費と土地代には注意
平屋は階段が不要で、構造が比較的シンプルになる場合がある。
しかし、必ずしも2階建てより建築費が安くなるわけではない。
同じ延べ床面積で比較すると、平屋は2階建てより基礎や屋根の面積が大きくなりやすい。
そのため、建築条件によっては平屋の方が費用が高くなる場合もある。
また、平屋では居住空間をすべて1階に配置するため、一定の敷地面積が必要になる。
都市部では土地代の負担が大きくなり、平屋を建てにくいケースも考えられる。
住宅購入時には建物本体価格だけでなく、土地取得費、外構工事費、地盤改良費などを含めた総額で比較することが重要だ。
【編集部の考察】平屋人気は住宅市場の変化を示しているのか
全国の平屋率が約2割に達したことは、住宅購入者の価値観が変化している可能性を示している。
従来の住宅市場では、部屋数を確保しやすい2階建て住宅が広く普及してきた。
しかし、少人数世帯や高齢世帯では、必ずしも上下階に分かれた広い住宅が必要とは限らない。
今後は延べ床面積の大きさだけでなく、生活動線や維持管理のしやすさを重視した住宅選びが広がる可能性がある。
愛知県でも平屋需要は拡大するのか
愛知県でも、土地条件によって平屋の建築しやすさは異なる。
名古屋市中心部など土地価格が高い地域では、敷地を効率的に利用できる2階建て以上の住宅に一定の優位性がある。
一方、豊橋市、豊川市、田原市などの東三河地域では、敷地条件によって平屋を選びやすい場所もあると考えられる。
ただし、今回確認できた報道資料には愛知県の2025年の平屋率が示されていないため、県内でどの程度普及しているかは今後の調査課題となる。
週刊TAKAPI編集部としては、愛知県内の平屋率の推移に加え、土地価格や住宅建築費との関係にも注目したい。
ただし、耐震等級3は平屋であることだけで認められるものではなく、建物の構造計算や設計内容などによって判断される。
例えば延べ床面積30坪の平屋を建てる場合、建ぺい率60%の土地では、単純計算で最低50坪の敷地が必要となる。
ただし、実際には建物の配置、駐車スペース、道路との関係なども考慮する必要がある。
固定資産税は土地や建物の評価額などによって決まる。
同じ延べ床面積でも、基礎や屋根の仕様などによって建物の評価額が変わる可能性がある。
平屋を希望する購入者がいる一方、敷地面積や間取りによっては購入希望者が限られる場合もある。
将来の売却を考えるなら、建物だけでなく土地そのものの需要も重要になる。
まとめ|全国の新築住宅で平屋が約5軒に1軒の時代へ
全国の新築木造一戸建て住宅に占める平屋率は、2025年に19.6%となった。
2015年の8.1%から大きく上昇し、特に宮崎県や鹿児島県など九州地方で高い割合となっている。
背景には、地震への備えや老後の暮らしやすさなどがあるとみられる。
一方で、東京都などの大都市圏では平屋率が低く、住宅選びには地域の土地事情が大きく関係している可能性がある。
平屋の人気が今後も続くのか。
住宅価格の上昇や高齢化が進むなか、住宅市場の変化が注目される。
出典・参考資料
・共同通信「全国の平屋率2割に、耐震性注目 新築一戸建て、九州で特に高く」(2026年10月11日)
・SUUMOの平屋率調査(共同通信報道による)
・住宅金融支援機構「フラット35住宅仕様実態調査報告」
※本記事は公開されている調査結果、報道内容、住宅市場の動向などをもとに構成しています。「編集部の考察」には独自の見解が含まれており、住宅会社や関係者が公表した見解を示すものではありません。
週刊TAKAPI 編集部/黒木
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