愛知県営住宅「風呂設備なし」入居中1万8320戸 自己負担40万~100万円、なぜ今も残る?

愛知県営住宅で入居中の1万8320戸に県設置の風呂設備がなく、入居者が約40万~100万円を自己負担する問題を伝える週刊TAKAPIの報道アイキャッチ

愛知県営住宅で、入居中の1万8,320戸に県が設置した浴槽・風呂釜などの風呂設備がないことが分かった。

2026年10月2日にウェブ上で確認できるようになった愛知県議会の審査記録で明らかになった。県営住宅5万6,465戸のうち、県が風呂設備を設置していない住戸は2万7,889戸。このうち1万8,320戸が入居中となっている。

ただし、「1万8,320戸の住民が風呂のない状態で生活している」という意味ではない。県が設備を設置していない住戸では、入居者自身が費用を負担して浴槽や給湯設備などを設置している。

その費用は県の試算で、設備方式によって約40万円~100万円。さらに2025年度だけでも、県による風呂設備がない住戸へ434戸が新たに入居していた。

住宅に困窮する低所得者などを支える公営住宅で、なぜ現在も数十万円規模の設備負担が残っているのか。

県営住宅の「風呂問題」を数字から検証する。


愛知県営住宅「風呂設備なし」は2万7889戸 約半数に残る

今回明らかになった数字を整理すると、愛知県が管理する県営住宅は5万6,465戸。

そのうち、浴槽や風呂釜などの風呂設備を県が設置していない住戸は2万7,889戸だった。

県営住宅全体の約49.4%に相当する。

さらに、この2万7,889戸のうち1万8,320戸には現在も入居者がいる。

ここで注意したいのが、「風呂設備なし」という言葉の意味だ。

今回の数字は県が風呂設備を設置していない住戸数であり、入居者が浴槽などを設置せず、風呂のない状態で生活している世帯数を示したものではない。

実際には入居者側が自己負担で設備を設置している。


なぜ愛知県営住宅には風呂が付いていない住戸があるのか

では、なぜ県営住宅なのに風呂設備を入居者自身が用意する仕組みが残っているのか。

背景にあるのが、古い公営住宅の設備基準だ。

愛知県は過去の県議会審査で、昭和60年度以前に管理を開始した住宅については、浴室スペースは設けていたものの、風呂釜や風呂桶は入居者が設置する仕組みだったと説明している。

一方、昭和61年4月1日以降に管理を開始した新築住宅については県が風呂設備を設置している。

つまり現在問題となっているのは、主として古い時代の設備方式が残る県営住宅だ。


愛知県営住宅の風呂設置費はいくら?県試算では40万~100万円

入居者にとって特に大きな問題となるのが費用だ。

県が示した試算では、設置方式によって必要となる金額が大きく異なる。

バランス釜式:約40万円

ホールインワン方式:約50万円

屋外給湯器式:約100万円

最も高額な方式では約100万円に達する。

例えば50万円なら、月5万円ずつ貯めても10カ月分に相当する金額だ。

公営住宅は一般的な民間賃貸住宅とは異なり、住宅に困窮する低額所得者に低廉な家賃で住宅を供給する役割を持つ。

その住宅への入居時に数十万円規模の設備費が必要になるケースがあることは、制度の目的との関係からも重要な論点となる。


2025年度も434戸が「県の風呂設備なし」住宅へ新規入居

今回の数字で見逃せないのが、過去から住み続けている世帯だけの問題ではないことだ。

2025年度には434戸が、県による風呂設備のない県営住宅へ新たに入居した。

つまり、古い制度が残っているだけではなく、現在も新規入居者が設備を自ら準備するケースが発生している。

県営住宅への入居を検討する世帯にとっては、家賃だけでなく、「入居時に風呂設備を用意する必要があるのか」「実際にいくら必要なのか」も重要な判断材料になる。


愛知県も風呂設備を設置 2025年度100戸、2026年度も100戸予定

愛知県も既存の県営住宅への風呂設備設置を進めている。

県議会で示された内容によると、2025年度は100戸に風呂設備を設置。

さらに2026年度も100戸への設置を予定している。

県は過去にも、建て替えを行う住宅について新しい住戸に風呂設備を設置するとともに、当面建て替えを行わない既存住宅についても順次整備する方針を示してきた。

問題は、その整備速度だ。


入居中1万8320戸に対して年間100戸 いつ解消できる?

現在入居中で、県による風呂設備がない住戸は1万8,320戸。

一方、2026年度の設置予定は100戸となっている。

単純比較すると、未設置住戸の規模に対して年間の設置戸数は限定的だ。

ただし、「1万8,320÷100=183.2年」と計算して、解消まで183年かかると断定することはできない。

県営住宅には建て替えや用途廃止、退去、空き家化などがあり、今後の管理戸数そのものが変化する可能性があるためだ。

だからこそ重要なのは、愛知県が未設置住宅について具体的な解消目標年度を設定しているのかという点になる。


風呂設備を自己負担したら退去するときどうなる?

もう一つ、入居者にとって重要なのが退去時の扱いだ。

数十万円をかけて設置した浴槽や給湯設備について、

退去時に撤去しなければならないのか。

次の入居者へ残すことはできるのか。

故障した場合の修理費は誰が負担するのか。

こうした点は、実際の負担額を考える上で無視できない。

特に高齢者などが長期間入居する場合、設備の老朽化による修理・交換が必要になる可能性もある。

入居時の設置費だけでなく、入居から退去までにどこまで自己負担が発生するのかを確認する必要がある。


生活保護世帯や高齢者に風呂設置費の支援はある?

県営住宅は、住宅確保に困難を抱える人にとって重要なセーフティーネットだ。

そこで焦点になるのが、数十万円の設備費を簡単には準備できない世帯への対応である。

特に、

生活保護を利用している世帯

高齢者のみの世帯

ひとり親世帯

障害のある人がいる世帯

などについて、風呂設備の設置費に利用できる支援制度があるのかは確認する必要がある。

仮に入居資格を満たしていても、設備費を用意できないことが実質的な入居障壁になっているとすれば、公営住宅政策として検証すべき課題になる。


豊橋・豊川など東三河の県営住宅は何戸が「風呂設備なし」なのか

今回示された2万7,889戸、入居中1万8,320戸はいずれも愛知県全体の数字だ。

そこで週刊TAKAPIが次に確認したいのが、東三河の状況である。

豊橋市、豊川市、蒲郡市、新城市、田原市にある県営住宅のうち、県による風呂設備がない住宅はそれぞれ何戸あるのか。

さらに、そのうち現在入居している世帯が何戸あるのか。

県全体では大きな数字でも、地域別に分解することで初めて住民に身近な問題として実態が見えてくる。


【編集部の考察】「家賃の安さ」だけでは見えない県営住宅の初期費用

県営住宅については、一般的に「民間賃貸より家賃負担を抑えられる」というイメージが強い。

しかし今回明らかになった数字を見ると、家賃だけでは実際の住宅負担を判断できないことが分かる。

入居時に40万円、50万円、場合によっては100万円程度の設備費が必要になれば、まとまった貯蓄を持たない世帯にとって大きなハードルになり得る。

一方、県も既存住宅への設備設置を進めており、建て替えによって設備付き住宅へ切り替わる住戸もある。

したがって問うべきなのは、単純に「県営住宅に風呂がないのはおかしい」ということではない。

なぜ現在も1万8,320戸で入居者側による設備設置が必要なのか。

年間100戸の整備で、県は最終的にいつまでに解消しようとしているのか。

経済的に設備を用意できない人への支援は十分なのか。

この3点だろう。


愛知県に確認したい「県営住宅の風呂問題」6つのポイント

週刊TAKAPIでは今後、愛知県公営住宅課に対し、東三河5市の未設置住宅数と入居戸数、全戸解消の目標年度、年間整備戸数を増やす可能性、国費・補助制度の活用、生活保護世帯や高齢者への設置支援、退去・故障時の費用負担について確認する必要があると考える。

特に、県全体の数字だけでは分からない豊橋市など東三河の実態を明らかにすることが次の取材ポイントになる。


Q県営住宅を申し込む前に風呂設備の有無は確認できる?
A募集する住宅によって設備状況は異なるため、入居を検討する際は募集案内や管理窓口で、浴槽・給湯器などが県設備として設置されているか確認することが重要だ。
Q愛知県営住宅ならすべて同じ設備ですか?
A同じではない。建設・管理開始時期や住宅の改修状況などによって設備条件が異なる。特に古い県営住宅では、入居者側で風呂設備を設置する方式が残っている。
Q豊橋市の県営住宅にも風呂設備がない住戸はありますか?
A今回確認された1万8,320戸は愛知県全体の数字で、豊橋市だけの入居戸数は今回の資料だけでは判断できない。地域別戸数については県への追加確認が必要となる。
Q今後、風呂設備付き県営住宅は増えていきますか?
A県は既存住宅への設備設置を進めるとともに、建て替え時には風呂設備を備えた住宅への更新を進めている。ただし、未設置住宅全体をいつまでに解消するのかは重要な確認事項となる。

記事注記

本記事は愛知県議会の審査記録および愛知県が公表している資料を基に構成しています。「風呂設備なし」は県が浴槽・風呂釜等を設置していない住戸を意味し、入居者が実際に風呂のない状態で生活していることを意味するものではありません。
週刊TAKAPI 編集部/黒木

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