【世界初へ】日本企業が宇宙ごみを捕獲・除去する歴史的挑戦 重さ3トンの巨大デブリを回収へ、2027年度に打ち上げ

日本企業アストロスケールが2027年度に挑む宇宙ごみ捕獲・除去プロジェクトを紹介する週刊TAKAPIのアイキャッチ画像

日本の宇宙技術が、世界の宇宙開発の歴史を変える可能性がある。

日本の宇宙関連企業、アストロスケール⁠が、地球の周囲を漂う巨大な「宇宙ごみ(スペースデブリ)」を捕獲し、軌道上から除去する世界初の本格的な実証ミッションに挑む。

対象となるのは、全長約11メートル、直径約4メートル、重量約3トンという巨大なロケットの残骸だ。

同社は2026年9月1日、欧州のロケット開発企業との打ち上げ契約を締結したと発表。2027年度にノルウェーから専用衛星を打ち上げる予定だ。

すでに2024年には、宇宙を漂う大型デブリへの接近や近距離撮影に成功している。

次の段階では、実際に宇宙ごみを捕まえ、地球周回軌道から取り除く。

成功すれば、日本発の技術が世界の宇宙環境問題を解決する大きな一歩となる。

ただし、2026年10月12日時点で大型デブリの捕獲・除去が完了したわけではない。世界初の成果として実証されているのは、先行ミッションによる接近・観測技術であり、実際の除去はこれからの挑戦となる。


日本企業「アストロスケール」とは?宇宙ごみ除去で世界をリード

今回のプロジェクトを進めるアストロスケールは、宇宙ごみの除去や人工衛星の点検、寿命延長などを手がける日本発の宇宙関連企業だ。

宇宙空間で人工衛星などを安全に運用し続けるための「軌道上サービス」を事業の中心としている。

同社が目指すのは、使い終わった人工衛星やロケットの残骸が宇宙空間に放置され続ける状況を改善することだ。

地球の周囲には、役割を終えた人工衛星やロケットの部品など、多くの人工物が存在している。

こうした宇宙ごみが増え続ければ、将来の宇宙開発にも深刻な影響を及ぼす可能性がある。

アストロスケールは、宇宙空間に存在する不要な人工物を安全に除去する技術の実用化を目指している。


世界初を目指す「ADRAS-J2」とは?重さ3トンの宇宙ごみを捕獲

今回の計画の中心となるのが、宇宙ごみ除去衛星「ADRAS-J2(アドラス・ジェイツー)」だ。

この衛星は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が進める「商業デブリ除去実証(CRD2)」の第2段階として開発されている。

対象となる宇宙ごみは、日本のロケット上段部分だ。

その規模は次の通り。

  • 全長:約11メートル
  • 直径:約4メートル
  • 重量:約3トン
  • 対象:長期間宇宙空間を漂うロケットの残骸
  • 打ち上げ予定:2027年度
  • 打ち上げ場所:ノルウェー
  • 使用ロケット:Spectrum(スペクトラム)

ADRAS-J2は対象物に接近した後、ロボットアームを使用して捕獲し、軌道から離脱させることを目指す。

今回の特徴は、あらかじめ回収を想定して設計された人工衛星ではなく、捕獲されるための装置を備えていない既存の大型宇宙ごみを対象とすることだ。

アストロスケールによると、2026年7月時点の公開情報では、このような本格的な大型デブリ除去はまだ実現されていないという。


2024年には世界初の快挙 宇宙ごみに15メートルまで接近

今回の計画が注目される理由は、すでに先行ミッションで重要な成果を上げていることだ。

アストロスケールは2024年2月、宇宙ごみの接近・観測を目的とした衛星「ADRAS-J」を打ち上げた。

このミッションでは、実際に宇宙空間を漂う大型デブリに接近し、その状態を詳しく調査した。

主な成果は、以下の通りだ。

① 大型宇宙ごみへの接近

地上からの観測だけでは把握が難しい対象物に、宇宙空間で直接接近することに成功した。

② 約50メートルの距離から周回観測

対象物との距離を維持しながら周囲を移動し、状態を観測する技術を実証した。

③ 約15メートルまで接近

対象となる宇宙ごみの近くまで接近し、撮影に成功した。

④ 捕獲予定部分の状態を確認

次のミッションで捕獲する予定の部分について、大きな損傷が見られないことを確認した。

この成果は、実際に宇宙ごみを捕獲するための重要な技術的基盤となっている。

アストロスケールは2026年3月25日、ADRAS-Jの運用終了に向けて軌道降下を開始したと発表した。


なぜ宇宙ごみの除去が必要なのか?人工衛星との衝突リスク

宇宙ごみは、単なる宇宙空間の環境問題ではない。

私たちの日常生活を支える人工衛星にも影響を及ぼす可能性がある。

GPSや通信、天気予報にも関係

現在、人工衛星はさまざまな分野で利用されている。

例えば、スマートフォンの位置情報、カーナビゲーション、気象観測、衛星通信などだ。

宇宙ごみが人工衛星に衝突すれば、衛星の故障や機能停止につながるおそれがある。

また、宇宙ごみ同士の衝突によって破片が増えれば、さらに別の衝突を引き起こす危険性も高まる。

宇宙空間を安全に利用し続けるためには、新たな宇宙ごみを発生させない対策に加え、すでに存在している宇宙ごみを除去する技術が重要となる。


なぜ宇宙ごみの捕獲は難しい?地上の回収作業とは違う3つの課題

宇宙ごみの除去は、地上で不要な物を回収する作業とは大きく異なる。

① 高速で移動する対象物に接近する必要がある

地球を周回する物体は、非常に高速で移動している。

そのため、除去衛星は対象物との相対的な位置や速度を精密に調整しなければならない。

② 対象物が捕獲を想定して設計されていない

今回の対象は、長期間宇宙空間に存在しているロケットの残骸だ。

捕獲のための専用装置を備えていないことから、ロボットアームによる把持には高度な技術が求められる。

③ 接近時の衝突を避ける必要がある

捕獲に失敗して対象物に衝突すれば、新たな破片が発生する危険性がある。

そのため、対象物への接近だけでなく、異常を検知した際に安全な距離まで退避する技術も重要となる。

ADRAS-Jでは、こうした衝突回避機能についても実証が行われた。


プロジェクトの契約額は約132億円 JAXAと日本企業が連携

今回のADRAS-J2は、日本の宇宙開発政策にとっても重要なプロジェクトだ。

アストロスケールの公式情報によると、JAXAとの商業デブリ除去実証フェーズⅡの契約額は、約132億円(税込)となっている。

この事業には、大きく2つの目的がある。

1つ目は、宇宙ごみを除去するための技術を獲得すること。

2つ目は、日本企業が宇宙関連の新たな市場で事業を展開できるようにすることだ。

つまり、今回のプロジェクトは宇宙環境の改善だけでなく、将来の宇宙産業の発展にも関わる取り組みといえる。


2027年度にノルウェーから打ち上げ ドイツ企業と契約

アストロスケールは2026年9月1日、ドイツの宇宙企業Isar Aerospaceとの打ち上げ契約締結を発表した。

ADRAS-J2は同社が開発するロケット「Spectrum」に搭載され、ノルウェーのアンドーヤ宇宙港から打ち上げられる予定だ。

打ち上げ時期は2027年度(2027年4月~2028年3月)を予定している。

今回の打ち上げ契約によって、実際の宇宙ごみ捕獲・除去に向けた準備が進むことになる。

ただし、打ち上げ予定日は今後変更される可能性がある。


【編集部の考察】宇宙ごみ除去は日本の新たな成長産業になるのか

今回の取り組みは、日本の宇宙産業に新たな市場を生み出す可能性がある。

これまで宇宙開発では、人工衛星やロケットを打ち上げる技術に注目が集まりやすかった。

しかし、今後は打ち上げた人工衛星を維持・管理し、不要になった物体を安全に処理する技術の重要性も高まると考えられる。

宇宙にも「維持管理サービス」が必要になる

地上では、自動車や建物などを長期間使用するために、点検や修理、廃棄といったサービスが存在している。

宇宙空間でも同様に、人工衛星の点検、修理、寿命延長、除去といったサービスが必要になる可能性がある。

アストロスケールが進める宇宙ごみ除去技術は、こうした新たな産業の基盤となり得る。

一方で、技術的に成功したとしても、商業サービスとして成立するかは別の問題だ。

宇宙ごみの所有者との調整、除去費用の負担、国際的なルールの整備など、解決すべき課題も残されている。

週刊TAKAPI編集部としては、今回のミッションが成功するかだけでなく、その技術が継続的な事業として成り立つかにも注目したい。


今後の焦点は「世界初の捕獲成功」 宇宙開発の歴史を変えるか

アストロスケールは、2024年の先行ミッションで大型宇宙ごみへの接近・観測に成功した。

そして2027年度には、実際に対象物を捕獲し、軌道から取り除く段階へ進む予定だ。

成功すれば、これまで宇宙空間に放置されてきた大型の人工物を、専用の宇宙機によって除去できることを実証する重要な成果となる。

今後は、ADRAS-J2の機体開発、打ち上げ準備、宇宙空間での接近・捕獲試験の進展が注目される。

日本企業の技術が、宇宙空間を安全に利用し続けるための新たな国際的基盤となるのか。

世界初を目指す挑戦が続いている。


Q宇宙ごみは誰の所有物になる?
A宇宙空間に放置されている物体でも、所有権や管轄権などの問題がなくなるわけではない。

そのため、他国の人工衛星やロケットの残骸を自由に回収できるとは限らない。

実際の除去には、関係国や所有者との調整が必要となる場合がある。

Q宇宙ごみは地球に落下してくることもある?
Aある。

地球の大気圏に再突入する人工物の多くは、大気との摩擦による加熱などで燃え尽きる。

ただし、大型の物体などでは一部が燃え残る可能性もあり、安全性を考慮した軌道離脱が重要となる。

Q日本以外にも宇宙ごみを除去する企業はある?
Aある。

欧州などでも宇宙ごみ除去技術の開発が進められている。

今回のアストロスケールの特徴は、すでに宇宙空間に存在し、捕獲を想定して設計されていない大型デブリを対象としている点だ。

Q宇宙ごみをすべて回収することは可能?
A現時点では、すべての宇宙ごみを回収することは現実的ではない。

大きさや軌道が異なる多数の物体が存在しており、すべてを個別に捕獲するには膨大な費用と技術が必要となる。

そのため、大型で衝突時の影響が大きい物体などを優先して除去する考え方が重要になる。


※本記事は2026年10月12日時点で確認できる公表情報をもとに構成しています。宇宙ごみの捕獲・除去は今後実施予定のミッションであり、現時点で成功が確定したものではありません。「世界初」の位置付けは、アストロスケールが2026年7月時点の公開情報に基づいて示したものです。

週刊TAKAPI 編集部/黒木

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