豊橋市で、地域の公共交通を支えるバス・タクシー運転士の確保に向けた取り組みが進んでいる。市と愛知県東三河総局は11月28日、市内の交通事業者4社が参加する運転体験会と会社説明会を初めて共同開催する。日本人だけでなく外国人にも参加を呼びかけ、慢性的な人手不足の解消につなげる考えだ。
背景にあるのは、路線バスの運転士不足である。豊橋市の都市交通計画によると、豊鉄バスの2024年度の運転士数は130人、充足率は80.2%。前年よりわずかに改善したものの、必要な人員を十分に確保できていない状態が続いている。
運転士不足は既に路線の減便や最終便の繰り上げにつながっており、通勤・通学だけでなく、高齢者の通院や買い物にも影響する問題となっている。
運転士130人、充足率80.2% 不足が続く豊鉄バス
豊橋市が公表した「都市交通計画2026–2035」の資料編によると、豊鉄バスの運転士は2019年度の134人から2023年度には128人に減少し、2024年度は130人だった。
充足率は2023年度の78.5%から2024年度には80.2%へ改善したものの、2017年度も80.4%で、長期間にわたり8割前後で推移している。
この充足率は、週休や年次休暇などを確保して運行するために必要な人員に対する、実際に勤務する運転士の割合を示している。
運行規模にも変化が表れている。豊鉄バスの年間実車走行距離は2019年度の約469万キロから2024年度には約431万キロへ減少した。市は運転士不足に伴う減便などが走行距離の減少につながっていると説明する。
もっとも、運行距離の変化には路線やダイヤの見直しなど複数の要因が関係し得るため、減少分のすべてを運転士不足の影響とみなすことはできない。
2024年には市内4路線を減便 最終便も最大46分繰り上げ
運転士不足による影響が具体化したのは2024年7月20日だった。
豊鉄バスは、レイクタウン線、二川線、金田方面の路線、飯村岩崎線の計4路線でダイヤを改正し、平日10便、土休日9便を削減した。最終便の時刻も一部で繰り上げられ、その幅は最大46分に及んだ。
この減便は2024年の措置であり、2026年10月に新たな減便が決定したという意味ではない。しかし、運転士不足が利用者の生活に影響することを示す事例となった。
公共交通を利用する市民にとって、運行本数や最終便の時刻は生活に直結する。とりわけ自家用車を使えない住民にとっては、代替手段の確保が難しくなる可能性もある。
11月28日、市と県が初共催 外国人向けに4言語の通訳
今回の運転体験会と会社説明会は、11月28日に豊橋市神野新田町の「とよはし産業人材育成センター」で開かれる。
参加するのは豊鉄バス、東海交通、豊鉄タクシー、ヨシダ交通の4社。参加者は教習コースでバスやタクシーの運転を体験できるほか、各社の仕事内容や採用条件について説明を受けられる。第二種運転免許の取得に関する説明も予定されている。
対象は普通自動車免許を持つ人、または1年以内に取得する見込みの人。AT限定免許も対象となるが、実際の運転体験は免許所持者に限られる。
外国人にも参加しやすいよう、タガログ語、ポルトガル語、英語、ベトナム語の通訳を配置する。参加費は無料で、運転体験の定員は各時間帯15人。
豊橋市は従来から運転体験会を開催し、愛知県東三河総局も9月に外国人向けの就業支援事業を実施した。11月28日の開催は、双方が初めて共同で取り組む点に特徴がある。
なお、申し込み期限は豊橋市の案内が11月21日、愛知県の案内が11月15日となっている。それぞれ募集窓口が異なるため、参加希望者は申し込み先の条件を確認する必要がある。
外国人運転士の採用には第二種免許と日本語能力も必要
今回の取り組みでは、東三河に暮らす外国人を新たな担い手として位置づけている。
自動車運送業は在留資格「特定技能1号」の対象分野となっており、外国人がバスやタクシーの運転士として働く道は制度上設けられている。
ただし、外国籍であることだけで採用条件が決まるわけではない。在留資格によって就労上の条件は異なり、特定技能制度を利用する場合には、分野別の技能評価試験や第二種運転免許、所定の日本語能力などの要件を満たさなければならない。バス・タクシー運転士には新任運転者研修も求められる。
2026年には日本語能力に関する制度の見直しも進められており、資格取得から営業運転に至るまでには、相応の準備と支援が必要になる。
利用者との会話や運行案内、緊急時の対応が求められる仕事だけに、採用対象を広げる取り組みと、安全な運行を支える教育体制を一体で整備することが重要となる。
7月の体験会から6人が就職 採用後の定着も焦点
豊橋市はこれまでにも運転士確保に向けた体験会や就業支援を続けている。
10月26日の地域報道によると、今年7月の体験会に参加した人のうち6人が、バスやタクシーの運転士として就職したという。実際の採用につながった成果といえるが、就職先別の人数や、その後の継続勤務の状況までは確認できていない。
市は今回も体験会の開催後、希望者を対象に適性分析やキャリアデザイン研修、模擬面接、個別相談を実施する予定だ。
一方、運転士の高齢化も課題として指摘されている。2026年時点の詳しい年齢構成や退職予定者数は確認できていないが、新規採用だけでなく、既存の運転士が働き続けられる環境の整備も欠かせない。
勤務時間や休暇、待遇、免許取得支援など、採用後の定着に関わる課題は多い。運転士の確保を一時的な募集活動で終わらせないためには、交通事業者と行政が継続して成果を検証していく必要がある。
編集部まとめ
豊橋市のバス運転士不足は、2024年度に130人まで人員が回復しても、なお充足率が約8割にとどまる構造的な問題となっている。
外国人にも就業の選択肢を広げる今回の初共催は、人材確保に向けた取り組みの一つだ。しかし、体験会の参加者を増やすだけで、直ちに路線の維持につながるわけではない。
採用された運転士が何人いて、そのうち何人が定着し、実際の運行体制がどこまで改善したのか。
行政と交通事業者に求められるのは、参加者数だけでなく、その先の成果を示すことだ。地域の交通を将来にわたって維持できるかどうかは、継続した人材確保と労働環境の整備にかかっている。
特記事項
本記事は、豊橋市「都市交通計画2026–2035」資料編、豊橋市都市交通課の運転士確保支援事業案内、愛知県東三河総局の事業発表、出入国在留管理庁の特定技能制度資料、2024年7月の減便報道、2026年10月26日の地域報道を照合して構成した。
運転士数130人、充足率80.2%は2024年度の豊鉄バスの数値であり、2026年10月現在の人員を示すものではない。
2026年度の運転士の年齢構成、最新の欠員数、採用後の定着率については公表資料で確認できていない。また、7月の体験会から6人が就職したとの情報は地域報道に基づくものであり、編集部が独自に採用記録を確認したものではない。
週刊TAKAPI 編集部/松本
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