愛知県豊橋市は、牟呂町にある市青少年センターの宿泊棟と運動広場の夜間照明設備について、2027年4月1日から利用を廃止する。1978年の開設から48年が経過し、市は施設の老朽化を理由に挙げている。センター全体を閉館するわけではなく、体育室や研修室などは引き続き利用できる。
市教育委員会の資料によると、2025年度のセンター全体の利用者は6万5329人で、前年度より9164人増えた。一方、市は今年3月に策定した公共施設の最適化計画で、宿泊棟の整理によって約962平方メートルを削減する方針を示していた。
廃止後の宿泊先として市が案内する施設も、将来的な集約の対象になっている。老朽化への対応を進める一方で、子どもたちや地域団体の活動場所をどう確保するのか。今回の決定は、豊橋市が進める公共施設再編の課題も映し出している。
宿泊定員49人の施設、夜間スポーツの照明も廃止
豊橋市青少年センターは1978年4月11日に開設された社会教育施設で、現在は青少年団体や地域のサークルなどが研修、スポーツ、レクリエーションに利用している。
宿泊棟には和室や洋室、食堂、厨房、浴室があり、公式の施設案内では現在の宿泊定員を49人としている。原則5人以上の団体が利用でき、宿泊する際には1泊につき5時間以上の研修などを行うことが条件となっている。
約3600平方メートルの運動広場では、ランニングやキャッチボール、ミニサッカーなどが可能で、4月から11月までは夜間照明を利用できる。
今回の廃止によって、センター内での宿泊研修や夜間照明を使った屋外活動ができなくなる。ただし、市が発表したのは宿泊棟の利用と夜間照明設備の廃止であり、運動広場そのものの閉鎖や宿泊棟の解体が決まったわけではない。
市の計画では962平方メートル削減 宿泊機能の整理は既定方針
宿泊棟の廃止は、今回初めて示された方針ではない。
豊橋市が2026年3月に策定した「施設最適化計画2026-2035」では、青少年センターを規模適正化の対象に位置付け、2026年度末までに宿泊棟を整理する方針を明記している。
計画上の施設延べ床面積は3870.18平方メートル。そのうち962.51平方メートルを削減対象としており、全体の約25%に相当する。
市は公共施設の老朽化や人口減少、将来的な維持管理費の負担を踏まえ、施設の保有量を見直している。青少年センターについても、建物を従来の規模で維持するのではなく、必要な機能を残して縮小する方向で検討を進めてきた。
もっとも、削減対象面積は計画上の数値であり、建物の撤去面積を示すものではない。宿泊棟を使わなくなった後、建物をどのように管理するかについても、今回の市の発表では明らかにされていない。
利用者は2年間で約1万2000人増 宿泊棟の需要は分からず
一方、青少年センター全体の利用者数は増加している。
市教育委員会の「豊橋市の教育2026」によると、2023年度の5万3375人から2024年度は5万6165人、2025年度には6万5329人となった。2年間で1万1954人増加している。
ただし、これらは体育室や研修室などを含めた施設全体の数字であり、廃止対象となる宿泊棟や夜間照明の利用者数ではない。利用者全体が増えていることをもって、宿泊機能の需要まで増加していたと判断することはできない。
市が老朽化を理由に一部機能の廃止を決めた以上、重要になるのは、設備ごとの利用実績と維持管理に必要な費用との比較だ。
宿泊棟が年間何団体に利用され、改修して使い続けるにはどの程度の費用が必要だったのか。夜間照明についても、利用件数や設備更新費の具体額は、今回確認した公表資料では把握できない。
施設の縮小によって財政負担がどれだけ軽減されるのかという点も含め、廃止判断の根拠を確認する必要がある。
代替施設の少年自然の家も2030年度までに集約へ
市は宿泊棟の廃止後について、伊古部町の少年自然の家と野外教育センターを代替施設として案内している。夜間照明が必要なスポーツ活動には、学校体育施設の開放事業や市内スポーツ施設の利用を勧めている。
ただ、施設が変われば、利用できる設備や予約条件、移動にかかる負担も変わる。特に子どもたちを引率する団体にとって、活動場所の変更がどの程度影響するのかは、個別に確認する必要がある。
さらに、市の施設最適化計画では、少年自然の家についても2030年度までに野外教育センターへ集約する方針が示されている。
青少年センターの宿泊機能を廃止した後、その受け皿として案内されている施設も、数年後には再編される計画だ。市は野外教育センターに機能を集約することで施設の効率化を進める考えだが、複数の青少年団体が利用する場合の受け入れ能力や予約への影響については、今後の運用が重要となる。
宿泊棟には病児保育室も 廃止後の扱いは確認が必要
もう一つ、確認しておきたい点がある。
市教育委員会の施設資料には、青少年センターの宿泊棟内に病児保育室「つくし」が設置されていることが記されている。
「つくし」は2022年4月に開設された病児保育施設で、病気やけがの状態が安定しているものの、通常の集団生活が難しい子どもを一時的に預かる。現在も市の病児保育事業の案内に掲載されており、1日の定員は3人となっている。
市の今回の廃止告知は、宿泊棟の利用終了を伝えているが、病児保育室の今後の運営については言及していない。
宿泊機能の廃止が病児保育室の運営に影響するとは確認されておらず、両者を同一視することはできない。ただ、同じ建物に異なる行政サービスが設けられている以上、廃止後の建物管理と保育室の取り扱いについては、市の説明を確認する必要がある。
編集部まとめ
公共施設の老朽化が進むなか、すべての設備を従来どおり維持し続けることは容易ではない。改修費や利用実績を踏まえ、必要な機能を選び直すこと自体は、行政に求められる判断の一つだ。
一方、今回の青少年センターの再編では、宿泊機能がなくなるだけでなく、代替施設の一つも将来的に集約される計画となっている。
センター全体の利用者が増加していることと、宿泊棟を廃止する判断に矛盾があるとは限らない。しかし、その判断を市民が理解するには、設備ごとの利用状況と改修費、廃止によって生じる影響を具体的に示すことが欠かせない。
豊橋市は2027年4月からの青少年センターの管理運営について、新たな指定管理期間を3年間とする方針も示している。
施設の面積を減らし、維持管理費を抑える。その一方で、子どもたちや地域団体が必要とする活動の機会をどう残すのか。
今回の廃止は、青少年センターだけでなく、豊橋市の公共施設再編全体にも通じる問題といえる。
特記事項
本記事は、豊橋市が公表した「青少年センター宿泊棟及び運動広場の夜間照明利用の廃止について」、市教育委員会「豊橋市の教育2026」、「豊橋市施設最適化計画2026-2035」、青少年センターの公式施設案内、市の病児保育事業に関する公表資料を照合して構成した。
年間利用者数6万5329人は施設全体の実績であり、廃止対象設備の利用者数ではない。962.51平方メートルは施設最適化計画に記載された削減対象面積であり、建物の解体決定を意味するものではない。
また、宿泊棟内に設置されている病児保育室「つくし」については、今回の廃止告知から運営への影響を確認できないため、継続・移転・廃止のいずれも断定していない。
宿泊棟と夜間照明の個別利用実績、修繕費用、利用団体への説明状況、病児保育室の今後の取り扱いについては追加確認が必要となる。
週刊TAKAPI 編集部/一条
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