愛知県豊橋市が2026年10月に公表した人事行政の報告書によると、2025年度に懲戒処分を受けた市職員は4人だった。内訳は戒告3人、停職1人で、減給と懲戒免職はなかった。一方、正式な懲戒処分には当たらない訓告や厳重注意については、年間の実施件数が報告書に記載されておらず、職員に対してどの程度の指導措置が行われたのかは分からない。
豊橋市は懲戒処分の公表基準を設けており、管理監督者に対する訓告や厳重注意も、一定の場合には公表対象としている。ただし、懲戒処分とは別に行われる指導措置について、すべての件数や内容を市民に知らせる仕組みにはなっていない。市が公表している人事行政報告書と処分基準を照合し、職員の不適切行為に対する措置がどこまで公表されるのかを調べた。
2025年度の懲戒は4人、服務違反2人と公務外非行など
豊橋市の「人事行政の運営等の状況に関する報告書」は、地方公務員法などに基づき、職員の勤務条件や服務、人事管理の状況をまとめたものだ。2026年10月に公表された資料には、前年度に当たる2025年4月1日から2026年3月31日までの懲戒処分実績が掲載されている。
行為別では、一般服務違反等が2人、公務外の非行が1人、職務遂行中の交通事故・交通法規違反が1人だった。一般服務違反等の2人と交通事故・交通法規違反の1人は戒告、公務外非行の1人は停職となっており、いずれも地方公務員法第29条第1項第1号の法令違反に分類されている。
ただし、この4人は2025年度に行われた懲戒処分の人数であり、2026年4月以降の処分は含まれていない。また、報告書から確認できるのは行為の区分と処分人数などで、個々の不祥事の詳しい経緯や、処分に至るまでの判断過程がすべて記載されているわけではない。
戒告と厳重注意、処分としての位置付けは違う
地方公務員法に基づく懲戒処分は、免職、停職、減給、戒告の4種類に限られる。戒告は職員の規律違反について責任を問う正式な懲戒処分だが、訓告や厳重注意は一般に服務指導や管理監督上の措置として行われ、法的な位置付けが異なる。
職員の言動や事務処理に問題があった場合でも、その内容や程度によっては懲戒処分に至らず、上司からの訓告や厳重注意にとどまることがある。こうした措置も職員の服務を正すために行われるものだが、正式な懲戒処分と同じ集計には含まれない。
豊橋市の人事行政報告書でも、戒告以上の懲戒処分については人数が示されているものの、訓告や厳重注意の実施状況は同じ表から確認できない。市が職員に対して行った指導措置の全体像を知るには、懲戒処分の公表資料だけでは足りないことになる。
管理監督者への訓告・厳重注意は公表する規定も
豊橋市職員の懲戒処分公表基準は2005年4月に施行され、2007年と2012年に改定された。市が公開している基準では、免職、停職、減給、戒告の各懲戒処分に加え、刑事事件で起訴された場合の休職処分を公表対象としている。
このほか、懲戒処分の対象となった事案に関連して、管理監督者に訓告や厳重注意が行われた場合には、その内容も併せて公表すると定めている。例えば、職員本人の不適切行為について懲戒処分が行われ、上司にも管理監督上の責任が認められた場合には、上司への指導措置も公表の対象になる。
一方、懲戒処分に関連しない単独の訓告や厳重注意については、同基準の公表対象として明示されていない。ただし、公表基準に記載がないことを理由に、すべて非公表だと断定することもできない。人事上の指導としてどのように記録し、どのような場合に公表しているのかは、実際の運用を確認しなければ分からない。
年次報告書に記載がない指導措置、実数の把握はできず
今回の検証で確認できなかったのが、2025年度に豊橋市で行われた訓告や厳重注意の件数だ。市の人事行政報告書には懲戒処分の人数や行為区分が掲載されているものの、懲戒に至らなかった指導措置については、同じ形式で年間の実施状況が示されていない。
もっとも、報告書に記載がないからといって、訓告や厳重注意が実際に行われていなかったとは言えない。反対に、未公表の不祥事があったと決めつけることもできず、今回確認できた資料から判断できるのは、年間の実施件数が読み取れないという点までだ。
行政機関が職員の不適切行為にどのように対処しているかを調べる際、懲戒処分の人数は一つの指標になる。ただ、正式な懲戒処分に至らなかった事案について、組織がどのような指導を行い、再発防止につなげたのかを把握するには、別の資料や説明が必要となる。
被害者保護による非公表も、公表基準には例外規定
公務員の不祥事であっても、処分に関する情報をすべて公表できるわけではない。豊橋市の基準では、被害者が公表を望まない場合や、公表によって被害者が特定されるおそれがあり、人権への配慮が必要となる場合などには、公表しないこととしている。市の機密に関する事項が含まれる場合や、他の公務に多大な影響が生じると見込まれる場合も例外に当たる。
また、所属部局や職種、年齢、性別などから処分対象者が特定される場合には、情報の一部または全部を公表しないことができる。職場でのハラスメントや個人情報に関係する問題では、処分内容を明らかにすることで、かえって被害者が特定される危険もあるため、慎重な判断が必要だ。
ただし、個人が特定される情報を公表することと、年間の発生件数や指導措置の区分を統計として示すことは同じではない。個人情報を保護したうえで、行政組織としてどの程度の問題を把握し、どのような措置を講じたのかを市民に説明する方法は考えられる。
懲戒処分は速やかに公表、単独の指導措置は運用確認が必要
豊橋市の公表基準では、懲戒処分を行った後、速やかに市政記者クラブへ資料を配付し、市のホームページにも掲載することとしている。原則として公表する情報には、所属部局や職種、年齢、処分内容、処分理由、処分年月日などが含まれるが、被害者保護などの理由がある場合は例外も認められている。
懲戒処分については、年次報告書で人数や行為区分を確認し、個別の公表資料で処分理由などを調べることができる。一方、単独の訓告や厳重注意については、年間件数が公表資料に見当たらないため、市の人事担当部署や各任命権者がどのように記録し、公表の要否を判断しているかを確認する必要がある。
ハラスメントや個人情報の不適切な取り扱い、事務処理上の問題などは、その内容によって懲戒処分にも指導措置にもなり得る。豊橋市が2025年度にこうした事案を何件把握し、どのような措置を行ったのかは今回の資料だけでは分からず、懲戒に至らない指導措置を含めた実態の確認が必要だ。
編集部まとめ
豊橋市が公表した2025年度の懲戒処分は4人だった。市は一定の訓告や厳重注意も公表対象としているが、年間の実施件数は人事行政報告書に記載されておらず、指導措置の全体像は確認できない。
市民への説明責任を果たすには、個人の権利や被害者のプライバシーを守りながら、行政が職員の不適切行為にどう対応しているかを伝えることも必要だ。訓告や厳重注意の集計方法と公表の判断基準について、市の運用を確認する余地がある。
特記事項
本記事は、豊橋市が2026年10月に公表した人事行政報告書、豊橋市職員の懲戒処分の公表基準および地方公務員法に基づき構成した。未公表の不祥事や指導措置の存在を独自に確認したものではない。
週刊TAKAPI 編集部/成田
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