岩手県の保健福祉部に所属する男性主査級職員(48)が、指定難病患者の療養費支払いや受給者証の交付などを長期間放置し、申請者らに不利益を生じさせていたことが分かった。
男性職員は、指定自立支援医療機関の指定・更新手続について、処理や決裁が終わっていないにもかかわらず、更新済みとする虚偽報告も行っていた。
県は9月30日付で減給2カ月の懲戒処分とした。10月21日に公表された2026年度第2四半期の懲戒処分資料で明らかになった。
難病患者への療養費支払いを放置 受給者証や障害者手帳の交付も遅延
県の公表資料によると、男性職員は特定医療費(指定難病)の療養費支払いや受給者証の交付など、複数の担当事務を相当期間にわたって放置していた。
その結果、療養費の支払いが遅れたほか、特定医療費受給者証や障害者手帳の交付にも遅延が生じた。
県は、こうした事務処理の放置によって申請者らに不利益を与えたことを認めている。
指定難病の医療費助成は、対象となる患者の医療費負担を軽減する制度で、受給者証は助成を受ける際に必要となる。
今回の問題は、単なる行政内部の事務処理の遅れではない。医療費の支払いと福祉関係の証書交付という、申請者の生活に関わる行政サービスに実際の遅延が発生していた。
一方、影響を受けた人数や放置された申請件数、支払いが遅れた療養費の総額は公表されていない。
未処理・未決裁なのに「更新済み」 医療機関の手続で虚偽報告
さらに問題となったのが、指定自立支援医療機関の指定・更新に関する事務処理だ。
男性職員は、一部の事務について必要な是正措置を講じず、そのまま放置していた。
加えて、指定・更新に係る申請が未処理で、決裁も受けていなかったにもかかわらず、更新済みであると虚偽の報告を行っていた。
指定自立支援医療機関は、自立支援医療制度に基づく医療を担当する医療機関として、所定の指定を受ける必要がある。
今回、虚偽報告が何件あったのか、対象となった医療機関の数や手続の遅延による影響は明らかになっていない。
県の公式資料には、虚偽報告が上司にどのように確認されていたのかについても説明がない。
事案は2024年に発生 管理監督責任による懲戒処分はゼロ
県の資料では、今回の事案の発生時期を2024年としている。
ただし、事務処理の放置が具体的にいつ始まり、いつまで継続したのかは示されていない。
問題の発覚経緯、申請者への説明、遅延した手続の処理状況、救済措置についても明らかにされていない。
県が公表した2026年度第2四半期の懲戒処分は、戒告1人、減給1人の計2人。このうち、管理監督責任を理由とする懲戒処分は0人だった。
もっとも、管理監督責任による懲戒処分がなかったことだけで、上司への指導や注意なども行われなかったとは判断できない。
事務処理の進捗を誰が確認し、長期間の放置や虚偽報告を把握できなかったのか。今回の公表資料では、組織としての管理状況までは確認できない。
県立病院でも3人処分 約6年間の不適切会計処理も判明
一方、岩手県医療局が10月21日に公表した別の資料では、県立病院の職員3人が懲戒処分を受けていたことも分かった。
49歳女性職員・減給2カ月
2019年12月から2026年3月までの約6年3カ月間、公費で支払うべき窓口収納金の釣銭などに関する両替手数料を、必要な手続きを経ず私費で支払っていた。不適切な処理と認識しながら続けていたとして、9月28日付で処分された。
64歳女性職員・戒告
4月6日、奥州市内の国道4号で乗用車を運転中、前方の自転車に気付くのが遅れて接触。運転者を転倒させ、負傷させたとして9月28日付で処分された。
27歳女性職員・戒告
7月4日、盛岡市内の国道4号で、指定速度50キロの区間を時速86キロで走行。36キロの速度超過により9月30日付で処分された。
医療局の第2四半期の懲戒処分は、減給1人、戒告2人の計3人となった。
教職員の不祥事も相次ぐ岩手県 県教委は従来対策の限界を認める
岩手県では、教育現場でも教職員による不祥事が相次いでいる。
2026年度は9月14日までに、県教育委員会が公表した教職員の懲戒処分が11人に達した。
週刊TAKAPIは、相次ぐ不祥事を受け、8月27日に県教委へ9項目の質問を送り、再発防止策の実効性や管理監督体制について独自取材を行った。
県教委は文書回答で、従来の不祥事防止策について、服務規律の周知や注意喚起にとどまっていた部分が多く、十分ではなかったとの認識を示している。
さらに本紙は9月、県立学校の20代女性教職員が懲戒免職となった事案についても追加取材を実施。県教委が5月中旬に関係者から情報提供を受けていたことや、学校長への戒告処分に関する県側の判断を確認している。
今回の保健福祉部による事務処理の放置と、教職員による不祥事は、それぞれ所管や事案の性質が異なり、直接的な関連が確認されたものではない。
しかし、県民への行政サービスや公的機関の管理体制に対する信頼という点では、共通する課題がある。
特に今回の事案では、療養費の支払いなどに具体的な遅延が生じたうえ、医療機関の更新手続について虚偽報告まで確認されている。職員本人の処分に加え、組織としてどのような確認体制を設け、同様の問題を防ぐのかが重要となる。
編集部まとめ
岩手県保健福祉部の48歳男性職員が、指定難病患者の療養費支払いや受給者証の交付を長期間放置し、虚偽報告も行っていたとして減給2カ月の処分を受けた。
県内では教職員の不祥事も相次いでおり、週刊TAKAPIの独自取材に対し、県教委は従来の注意喚起中心の対策が十分ではなかったと認めている。
今回の事案についても、県には放置件数や申請者への救済状況、管理体制の問題点を具体的に説明することが求められる。
医療、福祉、教育という県民生活に直結する分野で不祥事や不適切な事務処理が明らかになっている以上、岩手県にとって県民の信頼回復は重要な課題だ。処分の公表だけで終わらせず、是正措置と再発防止策の実施状況を示していく必要がある。
特記事項
本記事は、岩手県および岩手県医療局が2026年10月21日に公表した懲戒処分資料と、週刊TAKAPIが岩手県教育委員会に実施した独自取材に基づき構成した。
岩手県職員の懲戒処分
週刊TAKAPI 編集部/成田
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