豊橋市上下水道局の60代男性職員が自家用車で自転車と衝突し、相手に約3週間のけがを負わせた事故で、懲戒処分まで約1年2カ月を要したのは、被害者との示談成立を待っていたためだったことが、週刊TAKAPIの取材で分かった。
事故は2025年8月20日に発生し、戒告処分が行われたのは2026年10月14日。市は事故発生から5日後の8月25日に、職員本人から事故報告書を受理していたことも明らかにした。
取材では、事故が退勤途中に起きていたことや、職員が強い西日の影響で自転車に気づくのが遅れたと説明していたことも判明した。市は処分の判断基準や被害者との示談、再発防止策についても回答した。
退勤途中に自転車と衝突 職員は「西日で見えにくかった」と説明
市の公式発表によると、事故は2025年8月20日午後5時35分ごろ、豊橋市野依町の交通整理が行われていない交差点で発生した。
上下水道局の60代男性事務職員が私用車で左折する際、横断歩道を渡る自転車の有無や安全確認が不十分なまま交差点に進入し、自転車と衝突。相手に加療約3週間のけがを負わせた。
事故当時の勤務状況について、市は週刊TAKAPIの取材に対し、職員は勤務を終え、職場から自宅へ帰る途中だったと説明した。
市は事故後、職員本人から事情を聞いている。
職員は、事故当時は日差しが強く、西日の影響で周囲が見えにくかったため、自転車に気づくのが遅れたと説明。そうした状況で車を進めてしまったという。
これは職員本人の説明であり、西日の影響が客観的に確認されたわけではない。市の公式発表では、横断歩道を渡る自転車の有無や安全確認が不十分だったことが示されている。
事故報告書は8月25日に受理 提出したのは職員本人
市が事故報告書を受理したのは2025年8月25日。事故発生から5日後だった。
報告書は警察などの外部機関からではなく、事故を起こした職員本人から提出されたという。
ただし、8月25日は正式な事故報告書の受理日であり、上下水道局が最初に事故を把握した日とは限らない。事故当日に上司などへ口頭で報告があったかどうかについては、今回の取材では確認できていない。
処分まで約1年2カ月 市「示談の完了を待っていた」
事故から戒告処分まで約1年2カ月を要した理由について、市は被害者との示談成立を待っていたためと説明した。
担当者によると、相手方との示談が完了したとの報告を受け、その後、今回の懲戒処分に至ったという。
戒告を選択した判断基準についても確認した。
市によると、交通事故に関する職員の懲戒処分には、市全体で統一した基準が設けられている。交通事故によって罰金などの刑事罰を受けた場合に戒告とする基準があるという。
今回の処分についても、市の統一基準を踏まえ、所定の審査会で審査したうえで戒告としたと説明した。
ただし、担当者が説明した罰金などに関する基準は、交通事故に対する懲戒判断のルールであり、今回の職員が実際に受けた刑事処分の具体的な内容については、取材では確認できていない。
市の公式発表では、地方公務員法第29条第1項第1号および第3号に該当し、同法第33条の信用失墜行為の禁止に違反したことを処分理由としている。
運転免許に関する処分 市は「6点」と説明
事故に伴う運転免許の行政処分についても確認した。
市の担当者は、職員の交通違反に関する点数について「6点」と聞いていると回答した。また、職員が講習を受けたとの報告も受けているという。
ただし、講習の正式名称や運転免許停止の有無、停止期間については、今回の回答からは確定できなかった。
今回の戒告は市が職員に対して行った懲戒処分であり、運転免許の行政処分や刑事処分とは区別される。
被害者の回復に市が肯定的回答 職員本人が対応し示談成立
被害者への謝罪や損害賠償などについて、市は組織として直接対応していないと回答した。
事故は退勤後に私用車で起こしたもので、被害者への対応は事故を起こした職員本人が行ったという。
被害者の回復状況について尋ねたところ、市の担当者は回復しているかとの質問に肯定的に応じ、そうした事情もあって示談がすべて終了したとの報告を受けていると説明した。
市が確認しているのは示談成立の報告であり、具体的な治癒時期や示談成立日までは明らかになっていない。
毎年の交通安全講習に加え、局内会議でも注意喚起
再発防止策について、市は毎年、職員を対象とした交通安全講習会を開催していると説明した。
今回の事故についても、上下水道局内の会議で所属職員に対して注意喚起を行ったという。
一方、今回の事故を受けて新たな研修制度や特別な安全対策を設けたかについては、具体的な説明はなかった。
また、事故発生後、どの段階で局内の注意喚起を実施したのかについても、今回の取材では確認できていない。
編集部まとめ
今回の取材で最も重要なのは、事故から戒告処分まで約1年2カ月を要した理由について、市が「被害者との示談成立を待っていた」と説明した点だ。
市は統一した処分基準に沿って審査会で判断し、示談完了の報告を受けて戒告処分に至ったとしている。被害者への対応は職員本人が行い、市は毎年の交通安全講習に加え、局内会議でも注意喚起を実施した。
ただし、事故発生後、上下水道局が最初に報告を受けた時期や、職員への注意喚起を実施した具体的な時期までは明らかになっていない。
示談成立を待って懲戒処分を決定した経緯は確認できた。一方、事故の把握から安全指導までの対応がどのように進められたのかは、別途検証が必要だ。
処分の妥当性だけでなく、事故を把握した段階で組織としてどのような再発防止措置を講じたのか。その経過についても、具体的な説明が求められる。
週刊TAKAPI 編集部/成田
特記事項
本記事は、豊橋市上下水道局が2026年10月14日に公表した懲戒処分資料と、週刊TAKAPIが同月15日に実施した独自取材に基づき作成した。
取材では、処分まで約1年2カ月を要した理由、事故報告書の受理日、事故当時の勤務状況、職員本人による事故状況の説明、戒告処分の判断基準、運転免許に関する市の把握状況、被害者の回復と示談成立、再発防止策について確認した。
事故報告書の受理日と事故の第一報の日付は区別している。また、西日による視界への影響は職員本人の説明として扱い、被害者の回復状況は市の回答内容に基づいて記載した。
刑事処分の具体的な内容、運転免許停止の有無、講習の正式名称、示談成立日など、取材で確定できなかった事項については断定していない。
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