感染経路は不明、患者4人の共通点も確認されず。市担当者は「10~11月ぐらいまでは気が抜けない」と警戒を呼びかける。
愛知県豊橋市で、マダニなどが媒介する感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」の患者が相次いで確認されている。
豊橋市は2026年10月7日、市内4例目となるSFTS患者が確認されたと発表した。患者は70代女性で、発熱や下痢、血小板減少、白血球減少、肝機能障害、意識障害などの症状があり、発表時点で医療機関に入院し、治療を受けていた。
豊橋市では9月8日に市内初の患者が公表されており、約1か月で4例が確認されたことになる。
なぜ短期間で患者が相次いでいるのか。感染した場所はどこなのか。特定の地域で感染が広がっている可能性はあるのか。
週刊TAKAPI編集部は、豊橋市保健所の保健医療企画課に独自電話取材を実施した。
市の担当者は、患者の感染場所について「特定できていない」と説明。さらに、感染が疑われる地区名を公表しない理由や、今後の感染リスクについても見解を示した。
豊橋市でSFTS患者4例目 70代女性が入院、意識障害などの症状
豊橋市が10月7日に公表した報道発表資料によると、4例目の患者は豊橋市内に住む70代女性。
市内の医療機関から豊橋市保健所にSFTS患者の発生が報告され、検査の結果、感染が確認された。
4例目の患者概要
公表日: 2026年10月7日
発生地域: 愛知県豊橋市
患者: 70代女性
主な症状: 発熱、下痢、血小板減少、白血球減少、肝機能障害、意識障害
発症日: 2026年9月25日
医療機関受診: 2026年9月30日
入院日: 2026年9月30日
検査依頼日: 2026年10月6日
陽性判明日: 2026年10月7日
発表時点の状態: 医療機関に入院加療中
感染経路: 不明
出典:豊橋市「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)患者の発生について(市内4例目)」2026年10月7日付
発症から感染判明まで12日間
市の発表資料によると、患者は9月25日に症状が現れ、9月30日に市内の医療機関を受診し、入院した。
その後、10月6日に豊橋市から愛知県衛生研究所へ検査を依頼。
翌7日に検査結果が陽性となり、SFTSと判明した。
発症から陽性判明まで12日間が経過していたことになる。
ただし、この期間について、診断の遅れがあったと判断できる情報は確認されていない。
【独自取材】4例目の感染場所はどこ?豊橋市「感染経路はわからない」
週刊TAKAPI編集部が最初に確認したのは、4例目の患者がどこで感染したのかという点だ。
市の報道発表資料には、「感染経路は現時点では不明です」と記載されている。
そこで編集部は、豊橋市保健医療企画課の山本氏に、感染場所や感染経路が判明しているか質問した。
担当者は、患者が豊橋市内の居住者であることは確認できているものの、感染した場所については把握できていないと説明した。
さらに、市内で感染したのか、市外で感染したのかについても特定できていないという。
豊橋市内の患者でも、市内で感染したとは限らない
今回の取材で重要なのは、「豊橋市内で患者が確認されたこと」と「豊橋市内で感染したこと」は同じではないという点だ。
患者が市内に住んでいても、通勤や外出、農作業、登山などで市外に出かける可能性がある。
そのため、患者の居住地だけで感染場所を判断することはできない。
市の担当者は、野生動物が移動することでマダニも移動する可能性があることに触れ、感染経路の特定は難しいとの認識を示した。
なぜ豊橋市で約1か月に4例?患者の共通点は確認されず
豊橋市では9月8日に市内初のSFTS患者が公表された。
その後、10月7日までに計4例が確認されている。
約1か月という短期間で患者が相次いだことについて、編集部は4人に何らかの共通点があるのか質問した。
山本氏は、
「それについては確認できているものはないです」
と回答した。
また、4例については、それぞれ独立した感染事例との認識を示した。
現時点で、患者4人が同じ場所で感染したことを示す情報は確認されていない。
愛知県内12例のうち4例が豊橋市
10月7日付の豊橋市報道発表資料では、2026年の愛知県内のSFTS患者は12例とされている。
そのうち豊橋市内で確認された患者は4例となる。
単純計算すると、県内報告数の約33.3%を豊橋市の患者が占める。
ただし、これは10月7日時点の公表数を比較したものであり、豊橋市内の感染リスクが県内の他地域より高いことを直接示すものではない。
また、患者の居住地と感染場所が一致するとは限らない点にも注意が必要だ。
【独自取材】患者が相次ぐ理由は?市担当者が「検査への意識」に言及
編集部は、短期間で患者が相次いで確認された背景についても質問した。
市の担当者は、明確な原因については説明できないとした一方、医療機関の検査に対する意識が変化した可能性に言及した。
市内で初めて患者が確認されたことで、医療機関側がSFTSを疑う機会が増え、検査につながりやすくなった可能性があるという。
ただし、担当者はこの見方について、
「あくまで私の推測」
と明確に断っている。
感染が増えたのか、発見されやすくなったのか
患者の報告数が増える背景には、実際の感染機会の増加だけでなく、検査や診断の状況が影響する可能性も考えられる。
しかし、今回の豊橋市の4例について、どちらが主な要因なのかを判断できる情報はない。
市担当者の発言は、あくまで一つの可能性を示したものであり、豊橋市として正式に分析した結果ではない。
【独自取材】なぜ感染地区を公表しない?豊橋市が説明した2つの理由
今回の取材で、編集部が特に詳しく確認したのが、感染が疑われる地区名や町名を公表しない理由だ。
豊橋市には山林や農地が広がる地域があり、住民が自然環境に接する機会も少なくない。
感染場所がわかれば、市民が予防行動を取るうえで役立つ可能性がある。
そこで編集部は、地区名を公表しない理由について質問した。
理由① 感染した場所そのものが特定できない
市の担当者は、患者の居住地がわかっていても、そこでマダニに刺されたとは限らないと説明した。
感染した場所が特定できていない以上、特定の町名や地区名を危険地域として示すことは難しいという。
また、野生動物が移動することで、マダニの生息状況も変化する可能性があるとした。
理由② 特定地域への風評被害も懸念
担当者は、感染場所が確認できていない段階で特定の山林や地区を示すことについて、風評被害につながる可能性にも言及した。
そのうえで、
「この地域が危ないっていうのは、やっぱりちょっと言えないですね」
と説明した。
市としては、特定の地域だけを危険視するのではなく、山林や草むら、農地など、マダニが生息する可能性のある場所で広く注意してほしいという考えだ。
なお、取材中には二川などの地名が例として挙げられたが、これらの地域が今回の感染場所として確認されたわけではない。
4例目の70代女性は現在どうなっている?市はその後の容体を把握せず
4例目の患者について、10月7日付の報道発表資料には「医療機関入院加療中」と記載されている。
編集部は電話取材で、その後の容体や回復状況についても確認した。
市の担当者は、患者が入院していたことは認めたものの、その後の状況については把握していないと説明した。
そのため、今回の取材では、患者が現在も入院しているのか、回復しているのか、退院したのかについて確認できなかった。
10月7日時点で入院加療中だったことは市の公式発表で確認できるが、その後の経過は不明となっている。
豊橋市のSFTS感染リスクは今後どうなる?「11月ぐらいまでは気が抜けない」
編集部は、今後さらに患者が増える可能性についても質問した。
市の担当者は、マダニの活動が活発になる季節であることを踏まえ、引き続き注意が必要との認識を示した。
秋は野山での活動や農作業などで、マダニに接触する機会が生じる。
一方、冬場は気温の低下に伴ってマダニの活動や人の野外活動の状況も変化するため、リスクが低下する可能性があると説明した。
そのうえで、
「10月、11月ぐらいまでは気が抜けないのかなと思っております」
と話した。
ただし、これは担当者の季節的な見通しであり、今後の患者数の増減を予測したものではない。
マダニの種類や気象条件などによって活動状況は異なるため、冬場であっても一律に感染リスクがなくなるわけではない。
豊橋市は追加の感染対策を実施する?現時点では従来の注意喚起を継続
市内で4例が確認されたことを受け、編集部は新たな感染予防対策を実施する予定があるか質問した。
担当者は、現時点で特別な追加対策を予定しているとの説明はせず、これまで実施してきた注意喚起を継続する考えを示した。
豊橋市では、ホームページや報道発表資料などを通じて、マダニによる感染症への注意を呼びかけている。
市の担当者は、
「今だけというわけではないので、常に気をつけてくださいという注意喚起をしていく」
と説明した。
市が最も重視するのは「刺されないこと」
取材の最後に、市民が特に注意すべきことを尋ねた。
担当者は、登山などで山に入る際、短パンなど肌を露出した服装の人を見かけることがあると話し、服装への注意を呼びかけた。
そして、
「まず刺されないっていうところが、やっぱり大事かなと思っております」
と強調した。
市としては、感染場所を限定するよりも、マダニに刺されないための基本的な予防行動を徹底してもらうことが重要との考えだ。
SFTSとは?発熱・下痢・意識障害などを引き起こす感染症
SFTSは、SFTSウイルスによって引き起こされる感染症で、主にウイルスを保有するマダニに刺されることで感染する。
豊橋市の発表資料によると、主な初期症状は発熱や全身倦怠感などで、重症化して死亡することもある。
今回の70代女性には、発熱や下痢に加えて、血小板減少、白血球減少、肝機能障害、意識障害が確認されている。
また、SFTSウイルスに感染した犬や猫などの動物との接触や、患者の体液との接触による感染も報告されている。
マダニに刺されないための予防方法
豊橋市は、10月7日付の報道発表資料で、次のような予防方法を呼びかけている。
① 草むらや藪に入るとき
- 長袖・長ズボンを着用する
- 足を完全に覆う靴を履く
- 肌の露出を少なくする
- 虫除け剤を適切に使用する
- 屋外活動後は入浴し、マダニに刺されていないか確認する
② マダニに刺された場合
マダニが皮膚に付着している場合、無理に引き抜くと口器の一部が皮膚内に残る可能性がある。
そのため、市はできる限り直接手で取り除こうとせず、皮膚科などの医療機関で処置を受けるよう呼びかけている。
また、刺された後は数週間程度、体調の変化に注意し、発熱などの症状が現れた場合は速やかに医療機関を受診することが重要だ。
③ 動物との接触にも注意
SFTSに感染して発症している動物の血液や唾液などに直接触れると、感染する可能性がある。
野生動物との接触を避けるほか、動物に触れた後は手洗いを徹底することが求められる。
【週刊TAKAPIの検証】約1か月で4例、市の情報発信は十分なのか
今回の独自取材では、豊橋市で患者が相次いで確認されているものの、感染した場所や4人に共通する特徴が特定されていないことが明らかになった。
また、市が感染地区を公表しない理由についても、感染場所を裏付ける情報がないことや、風評被害への懸念があることが確認できた。
一方、約1か月で4例が確認された状況を受け、市民が感染リスクをどのように受け止め、日常生活の中でどのような対策を取るべきなのかという課題もある。
編集部の考察|感染場所が不明でも、より具体的な注意喚起はできないか
感染場所が特定できていない段階で、特定地区を危険地域として公表することは適切とはいえない。
しかし、感染場所を示せないことと、市民への情報提供を充実させることは別の問題だ。
例えば、患者が確認された際に、個人情報に配慮したうえで、感染が疑われる活動歴の有無や、注意が必要な野外活動の具体例などを示すことは検討できるのではないだろうか。
また、今回の取材では、短期間に患者が相次いだ背景について、市として明確な分析結果は示されなかった。
今後も患者が確認される場合には、発生件数だけでなく、感染状況について何が判明し、何がわかっていないのかを継続的に説明することが重要になる。
週刊TAKAPIでは、今後も豊橋市のSFTS発生状況と行政の対応について取材を続ける。
マダニに刺されても痛みやかゆみを感じないことがあり、刺されたことに気づかない場合もあります。
野外活動後は、衣服や体にマダニが付着していないか確認することが重要です。
患者の血液や体液との直接的な接触などによって感染した事例が報告されています。
ただし、一般的な日常生活で容易に感染が広がる病気ではありません。
SFTSに感染した犬や猫などから、人への感染が報告されています。
ペットの体調に異変がある場合は、動物病院に相談してください。
そのため、マダニに刺されないための予防対策が重要です。
まとめ|豊橋市で相次ぐSFTS、感染場所は特定されず
豊橋市では、2026年9月8日の市内初確認から約1か月で、SFTS患者4例が公表された。
10月7日に発表された4例目は70代女性で、発熱や下痢、意識障害などの症状があり、発表時点で入院加療中だった。
週刊TAKAPIの独自取材では、感染場所や感染経路が特定されておらず、患者4人に共通する特徴も確認されていないことがわかった。
また、市は特定の地区を危険地域として公表することは難しいと説明。新たな特別対策については示さず、従来の注意喚起を継続する考えを明らかにした。
担当者は10~11月ごろまで警戒が必要との認識を示しており、市民には引き続きマダニに刺されないための対策が求められる。
※本記事は、豊橋市の公式報道発表資料および週刊TAKAPI編集部による電話取材をもとに作成しています。市担当者個人の推測については、豊橋市の公式見解と区別して記載しています。
独立メディアだからこそできる、忖度しない報道を。

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