全国の弁当店が厳しい経営環境に直面している。
東京商工リサーチが2026年9月19日に公表した調査によると、2026年1月から8月までの弁当店の倒産件数は83件に達した。前年の年間倒産件数89件に迫り、過去最多を更新する勢いとなっている。
背景には、コメや食用油、肉類などの原材料価格の上昇に加え、人件費や光熱費、包装資材の高騰がある。
さらに、コンビニエンスストアやスーパーマーケット、ドラッグストアなどが弁当・総菜の販売を強化。地域密着型の小規模弁当店は、価格競争とコスト上昇の板挟みに置かれている。
なぜ、日常生活に欠かせない弁当を販売する店が次々と経営難に陥っているのか。そして、街の弁当店が生き残るためには何が必要なのか。
最新の倒産データを基に、週刊TAKAPI編集部が経営環境と今後の生き残り戦略を考察する。
弁当店の倒産は2026年8月までに83件 過去最多更新の可能性
東京商工リサーチの調査によると、2026年1~8月の弁当店の倒産は83件だった。
2026年1~8月
83件
弁当店の倒産件数
2025年年間
89件
これまでの年間最多
前年年間件数に対する到達率
93.3%
2026年は8か月間で前年年間件数の約93%に到達。出典:東京商工リサーチ
このペースが続けば、年間の倒産件数が過去最多を更新する可能性は高い。
地域別では、関東が35件と全体の42.1%を占め、近畿と九州がそれぞれ10件で続いた。
また、倒産企業のうち資本金1,000万円未満が67.4%を占めており、資金力の乏しい小規模事業者への影響が目立っている。
帝国データバンクの調査とは数字が違う?
帝国データバンクが2026年3月に公表した調査では、2025年の弁当店の倒産件数は55件だった。
一方、東京商工リサーチは2025年の年間件数を89件としている。
両社では調査対象や集計基準が異なるため、数字を単純に比較することはできない。
ただし、両社の調査に共通しているのは、弁当店の倒産が増加し、小規模事業者を中心に経営環境が悪化しているという点だ。
なぜ弁当店の倒産が増えているのか? 5つの要因
① コメ価格の高騰が利益を圧迫
弁当店にとって、コメは欠かすことのできない主要食材だ。
コメの仕入れ価格が上昇すると、販売する弁当のほぼすべてに影響が及ぶ。
例えば、コメをはじめとする食材費が1食当たり30円上昇した場合、1日200食を販売する店舗では、単純計算で1日6,000円、月25営業日なら15万円の追加負担となる。
販売価格を据え置けば、その分だけ利益が減少する。
一方で、値上げをすれば客離れにつながる可能性がある。
② コンビニ・スーパーとの価格競争
弁当店にとって大きな脅威となっているのが、コンビニやスーパーとの競争だ。
スーパーでは500円以下の弁当が販売されるケースもあり、コンビニも商品開発や販売網の強みを生かしている。
大手企業は大量仕入れや製造工程の効率化によって、コストを抑えやすい。
しかし、小規模な弁当店では仕入れ数量が限られ、同じ価格帯で競争することが難しい。
価格だけで比較される状況になれば、地域の弁当店は不利になりやすい。
③ 人件費と人手不足
弁当店では早朝からの仕込みや調理、盛り付け、配達など、多くの作業が必要になる。
特に仕出し弁当では、指定時間までに大量の商品を完成させなければならない。
人手不足によって従業員の確保が難しくなれば、採用費や人件費も増加する。
④ 電気・ガス・包装資材の値上がり
弁当の製造には、冷蔵設備、炊飯器、調理器具などが必要だ。
さらに、持ち帰り用の容器、箸、袋などの包装資材も欠かせない。
こうした費用が同時に上昇しているため、食材費だけを見直しても経営改善につながらない場合がある。
⑤ 法人向け弁当需要の変化
かつて弁当店の重要な収入源だった企業向けの日替わり弁当や、会議・イベント向けの仕出し弁当にも変化が生じている。
テレワークの普及や会議・行事の開催方法の変化によって、従来型の大口注文が減少した事業者もある。
帝国データバンクも、こうした需要変化を弁当店の経営を圧迫する要因として挙げている。
コンビニやスーパーに勝つための条件とは?
ここからは週刊TAKAPI編集部の考察となる。
小規模な弁当店が大手企業と同じ土俵で価格競争を続けることは、必ずしも得策ではない。
重要なのは、大手には提供しにくい価値を明確にすることだと考えられる。
① 「できたて」を最大の武器にする
コンビニやスーパーの商品は、一定の時間をかけて製造・配送・陳列されるものが多い。
一方、街の弁当店では、注文を受けてから調理するなど、できたての商品を提供しやすい。
温かいご飯、揚げたての唐揚げ、手作りの総菜などは、差別化につながる可能性がある。
② 価格よりも満足度で選ばれる店になる
安い弁当を求める消費者がいる一方で、品質や健康面を重視する消費者もいる。
例えば、地元産の野菜を使った弁当や、栄養バランスに配慮した商品などが考えられる。
帝国データバンクも、付加価値を高めた高単価商品と、大手の仕組みを活用した低価格商品の二極化を指摘している。
③ 法人向けの定期注文を確保する
個人客だけに依存せず、企業や事業所などから継続的な注文を獲得することも重要だ。
事前予約によって製造数量を把握できれば、食材の廃棄ロスを減らせる可能性がある。
ただし、配達コストや注文数の変動を考慮し、利益が残る契約条件を設定する必要がある。
④ 売れ残りを減らす
弁当は消費期限が短く、売れ残りが損失につながりやすい商品だ。
予約販売、販売数量の予測、時間帯別の製造などを組み合わせることで、廃棄ロスを抑えられる可能性がある。
単純に販売数を増やすだけでなく、売れ残りを減らすことも利益改善の重要な要素となる。
⑤ 地域密着型の強みを生かす
地域の企業、学校行事、スポーツ大会、自治会などとの関係づくりも、小規模弁当店ならではの戦略になり得る。
地元の食材を使用した商品や、地域の好みに合わせたメニューなど、全国一律の商品展開とは異なる価値を提供できる。
ただし、地域密着だけで経営が安定するわけではない。継続注文と適切な利益率の確保が不可欠だ。
高級弁当でも倒産する時代 人気店が生き残れるとは限らない
価格競争を避けるため、高級路線に転換すれば成功するのだろうか。
実際には、高価格帯の商品を扱う店舗でも経営破綻は起きている。
東京商工リサーチによると、高級海苔弁当を販売していた「海苔弁いちのや」の運営会社は、原材料費や人件費、出店費用などの負担が経営を圧迫し、2026年8月に事業を停止した。
同社の商品はテレビやSNSでも紹介されていたが、知名度が必ずしも安定経営につながるわけではないことを示している。
なお、一部のフランチャイズ店舗は営業を継続している。
愛知県・東三河の弁当店にも影響はあるのか?
愛知県の豊橋市、豊川市、蒲郡市、田原市などにも、地域密着型の弁当店や仕出し業者が存在する。
製造業の事業所などを対象にした昼食需要や、地域の行事に伴う仕出し需要は、こうした店舗にとって重要な市場になり得る。
しかし、原材料価格や人件費の上昇は全国共通の問題だ。
東三河でも、今後は弁当店の販売価格、法人向け契約、配達コスト、後継者不足などが経営を左右する可能性がある。
ただし、今回確認した全国統計だけでは、東三河の弁当店で倒産が増加しているとまでは判断できない。
地域の実態を把握するには、個別事業者への取材や地域別倒産統計の確認が必要となる。
今後、弁当店の倒産はさらに増えるのか?
東京商工リサーチは、コメ価格の下落の兆しなどを好材料としながらも、食材費や光熱費、包装資材などの負担が依然として大きいと指摘している。
また、競争相手はコンビニやスーパーだけではない。
フードデリバリー、キッチンカー、ドラッグストアなど、弁当や総菜を購入できる場所が増えている。
今後は、売上高だけでなく、商品ごとの利益率や固定費、資金繰りを管理できるかどうかが重要になると考えられる。
まとめ|「安さ」だけでは生き残れない時代に
2026年の弁当店倒産は、8月までに83件に達した。
原材料価格や人件費の高騰に加え、コンビニやスーパーとの競争が激しくなり、街の弁当店は厳しい経営環境に置かれている。
週刊TAKAPI編集部としては、今後の弁当店経営では、価格の安さだけでなく、品質、できたての価値、地域密着型のサービス、そして利益を確保できる販売体制が重要になると考える。
消費者にとって身近な存在である街の弁当店が、今後どのような形で生き残っていくのか。
地域の食生活を支える事業者の動向が注目される。
週刊TAKAPI 編集部/黒木
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