榊英雄被告、性的暴行で懲役8年の実刑確定へ 最高裁が上告棄却、映画監督の立場を悪用と認定

最高裁判所の庁舎外観を用い、映画監督の榊英雄被告に対する懲役8年の実刑判決が上告棄却により確定する見通しとなったことを伝える週刊TAKAPIの報道アイキャッチ

映画監督の榊英雄被告(56)が、出演予定だった女性俳優2人に性的暴行を加えたとして準強姦罪に問われた事件で、最高裁第2小法廷(岡村和美裁判長)は11月4日付で被告側の上告を棄却する決定をした。

11月5日に明らかになった。懲役8年を言い渡した東京地裁の一審判決を東京高裁が支持しており、実刑判決が確定することになる。

最高裁は、被告側の主張について上告理由に当たらないと判断した。決定は審理に加わった裁判官3人の全員一致だった。

榊被告は一貫して、女性との性行為には同意があったとして無罪を主張していた。しかし、一審と二審は、映画監督と俳優という立場の差を悪用した性的暴行だったと認定し、被告側の主張を退けていた。

女性俳優2人に計5回の性的暴行 演技指導の機会を利用

一、二審判決によると、榊被告は2015年3月から2016年9月にかけて、東京都内の事務所やホテルで、当時20代だった女性俳優2人に計5回の性的暴行を加えた。

2人は榊被告が監督を務める作品への出演が決まっていた。

榊被告は監督という立場や演技指導の機会を利用し、女性たちが抵抗できない状態にあることに乗じて犯行に及んだと認定された。

今回の裁判で争われたのは、性的行為の存在だけではない。

映画監督という仕事上の立場が、女性たちの意思にどのような影響を与えていたのか。そして、女性たちは自由な意思で性的行為に応じられる状況だったのかという点が、重要な争点となった。

「同意があった」と無罪主張 東京地裁が退ける

2026年3月6日、東京地裁は榊被告に懲役8年の実刑判決を言い渡した。検察側の求刑は懲役10年だった。

榊被告側は、性的行為は合意に基づくもので、女性側の供述には信用できない部分があると主張していた。

弁護側は、女性が性的行為の後も榊被告の作品に出演していたことなどを挙げ、同意があったと反論していた。

これに対し、東京地裁は女性側の証言を信用できると判断した。

女性たちは、榊被告の要求を拒めば俳優としての活動に支障が生じるのではないかという不安を抱き、抵抗できない状態にあったと認定した。

さらに、榊被告自身もそうした状況を認識していたと判断した。

裁判所は監督と俳優という立場の差を悪用した犯行と評価し、無罪主張を退けた。

仕事上の関係が続いていたことや、性的行為の後も作品に出演していたという事情だけでは、自由な意思による同意があったとは判断されなかった。

東京高裁も控訴棄却 性的自由の侵害を重く評価

榊被告側は一審判決を不服として控訴した。

しかし、7月24日の東京高裁判決は一審の判断を支持し、被告側の控訴を棄却した。

東京高裁は、監督と俳優の立場の差を悪用し、女性たちの性的自由を大きく侵害した悪質な犯行だと評価した。

また、一審が言い渡した懲役8年について、重すぎて不当とはいえないと判断した。

一審に続いて二審でも有罪認定と量刑が維持され、榊被告側は最高裁に上告していた。

最高裁は上告理由に当たらないと判断

最高裁第2小法廷は11月4日付の決定で、榊被告側の上告を棄却した。

最高裁は上告理由に該当しないとの判断を示し、一審・二審の結論が維持されることになった。

ここで区別が必要なのは、最高裁が新たに懲役8年を言い渡したわけではないという点だ。

懲役8年を言い渡したのは一審の東京地裁であり、東京高裁はその判断を支持した。最高裁は上告を棄却したことで、下級審の結論が維持されることになった。

今回の決定によって、榊被告に対する懲役8年の実刑判決は確定する見通しとなった。

なぜ現在の不同意性交等罪ではなく「準強姦罪」なのか

今回の事件では、現在の刑法では使われていない「準強姦罪」という罪名が適用されている。

これは、犯行が2015年から2016年に行われたためだ。

当時の準強姦罪では、相手が心神喪失または抗拒不能の状態にあることに乗じるなどした性的行為が処罰対象とされていた。

その後、2017年の刑法改正で性犯罪に関する規定が見直され、準強姦罪は準強制性交等罪に改められた。

さらに2023年7月13日施行の改正では、強制性交等罪と準強制性交等罪が不同意性交等罪に統合された。

現行法では、同意しない意思を形成・表明・全うすることが困難な状態にあるかどうかが重要な要件となる。

法務省は、そうした状態を生じさせる事情の一つとして、経済的・社会的関係上の地位に基づく影響力によって不利益を心配させることなどを挙げている。

ただし、今回の事件に2023年の改正法が遡って適用されたわけではない。

2022年に告発報道、2024年に逮捕

榊被告をめぐっては、2022年3月、複数の女性俳優が性的な被害を訴えていることが報じられた。

問題の表面化によって、監督作品だった映画「蜜月」と「ハザードランプ」は公開中止となった。

2024年2月20日には、演技指導を名目に女性に性的暴行を加えた疑いで警視庁に逮捕された。

その後の刑事裁判では、2015年から2016年にかけて女性俳優2人に行った計5件の性的暴行が審理され、一審・二審で有罪と判断された。

過去に報じられたすべての被害申告について、今回の判決で犯罪の成立が認定されたわけではない。

刑事裁判で認定された事実と、それ以外の告発内容は区別する必要がある。

映画制作の現場に問われる権限と同意

今回の一、二審判決で重視されたのは、監督と俳優という立場の差が、女性たちの抵抗を困難にしていたという点だった。

映画制作では、監督が出演者に演技を指導し、作品の内容や表現について判断する場面がある。

しかし、その業務上の関係が、性的な要求を拒めば仕事に悪影響が及ぶのではないかという不安につながれば、相手の自由な意思決定を妨げる可能性がある。

今回の事件では、一審・二審がそうした立場の差と女性たちの置かれた状況を重視していた。

再発防止を考えるうえでは、演技指導と私的な関係の境界を明確にし、出演者が監督や制作責任者とは独立した立場の相談先にアクセスできる仕組みも重要になる。

刑事裁判で個人の責任が問われることと、制作現場における安全確保の仕組みを整えることは、区別しながら取り組むべき課題だ。

編集部まとめ

榊英雄被告による女性俳優2人への性的暴行事件は、最高裁が上告を棄却し、懲役8年の実刑判決が確定する見通しとなった。

一審と二審は、映画監督と俳優という立場の差を悪用し、女性たちの性的自由を侵害した犯行と判断した。

被告側は同意があったと主張したものの、その主張は認められなかった。

今回の司法判断は、性的行為の同意を考える際、当事者間の仕事上の関係や、拒絶することで不利益を受けるのではないかという不安が重要な問題になり得ることを示している。

特記事項

本記事は2026年11月5日に明らかになった最高裁の上告棄却決定と、2026年3月6日の東京地裁判決、同年7月24日の東京高裁判決について確認できた公開情報を基に構成した。

最高裁決定の原本および一、二審判決全文は取得できていない。各裁判所の判断は、確認できた報道内容に基づき区別して記述している。

懲役8年の実刑判決については「確定へ」と表記し、刑の執行開始など確認できていない事項は記載していない。

Q榊英雄被告の最高裁判決はどうなりましたか?
A最高裁第2小法廷は2026年11月4日付で上告を棄却する決定をしました。懲役8年の実刑判決が確定することになります。
Q何人の女性への性的暴行が認定されましたか?
A2015~2016年、当時20代だった女性俳優2人に対する計5件の性的暴行が認定されています。
Q榊英雄被告は罪を認めていましたか?
A女性との性行為には同意があったとして無罪を主張していましたが、一審と二審はその主張を退けました。
Qなぜ懲役8年の実刑になったのですか?
A一審・二審は、映画監督と俳優という立場の差を悪用し、女性たちの性的自由を大きく侵害した犯行であることなどを重く評価しました。
Q準強姦罪と不同意性交等罪はどう違いますか?
A準強姦罪は犯行当時に適用されていた罪名です。2017年と2023年の法改正を経て、現在は不同意性交等罪などの規定が設けられています。

週刊TAKAPI編集部/一条

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