【続報】新名神6人死亡事故、拘禁刑7年が確定 遺族「軽すぎる」 袋井市長が厳罰化を要望、亀山市と再発防止協定

津地方裁判所の外観と、新名神高速道路6人死亡事故で元トラック運転手の拘禁刑7年が確定したことを伝える報道アイキャッチ

三重県亀山市の新名神高速道路で2026年3月、大型トラックが渋滞中の車列に追突し、子ども3人を含む6人が死亡した事故で、元トラック運転手の水谷水都代被告(55)=広島県安芸高田市=に拘禁刑7年を言い渡した津地方裁判所の判決が11月5日、確定した。控訴期限の4日までに被告側、検察側の双方が控訴しなかった。

水谷被告は事故直前、スマートフォンで料理動画を見ながら時速約82キロで走行し、約13秒間にわたって前方の安全確認を怠っていた。津地裁は、過失運転致死罪の法定刑上限にあたる拘禁刑7年を言い渡したが、遺族からは量刑への強い不満が示されている。

一家5人を失った静岡県袋井市では、大場規之市長が国に「ながら運転」の厳罰化を要望。事故現場のある三重県亀山市とも再発防止協定を締結した。

6人の命を奪った運転行為に対し、刑事裁判は法定刑の上限で決着した。しかし、遺族が求める法改正と、同じ悲劇を繰り返さないための取り組みは、今も続いている。

約13秒間の脇見運転 時速82キロで停止車両に追突

事故が発生したのは3月20日午前2時20分ごろ。亀山市安坂山町の新名神高速道路下り線、野登トンネル出口付近だった。

現場は工事に伴って車線が規制され、制限速度は時速50キロになっていた。

検察側の冒頭陳述などによると、水谷被告は大型トラックを運転中、ダッシュボードのホルダーに取り付けたスマートフォンで動画投稿アプリ「TikTok」の料理動画を視聴。画面のスクリーンショットを撮影しようとして、約13秒間にわたり前方から目を離していた。

トラックは制限速度を約32キロ超える時速約82キロで進行。渋滞で停止していたミニバンに追突し、その前にいた乗用車も巻き込む多重事故となった。

時速82キロの車両は1秒間に約22.8メートル進む。13秒間では約296メートルに相当する。これは速度と時間から算出した参考値であり、実際の脇見区間を測定した数値ではない。

水谷被告は事故前から運転中にSNSの動画を見る行為を繰り返していたと検察側から指摘されている。8月31日の被告人質問では、家族や知人から運転中のスマートフォン使用を注意されたことも認めた。

一度の判断ミスだけでなく、危険な運転を繰り返していた経緯も、裁判で問われることになった。

誕生日を祝う家族旅行 袋井市の一家5人が犠牲に

最初に追突されたミニバンには、袋井市の会社員、松本幸司さん(当時45歳)、妻の恵梨子さん(当時42歳)、11歳の長女、8歳の長男、5歳の次女が乗っていた。

一家は長女と次女の誕生日を祝うため、大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパンへ向かっていた。

もう一人の犠牲者は、埼玉県草加市で単身赴任中だった団体職員、高峰啓三さん(当時56歳)。家族が待つ兵庫県の自宅へ帰る途中だった。

事故では車両が炎上したが、4月に公表された捜査結果によると、6人はいずれも事故の衝撃による頭部や胸部などの損傷が死因とされた。

事故から約4カ月後の7月25日、松本さん一家の遺族は初めて報道各社の取材に応じた。

一家が暮らしていた自宅には、5人分の遺骨や写真が並び、焼損したスマートフォンや衣類などの遺品が残されていた。

遺族は、突然の事故で家族5人を一度に失った現実を受け止めきれない思いを語った。6月には、同様の悲劇が繰り返されないことを願い、一家の写真を報道機関に提供している。

高峰さんも、家族や地域にとって大切な存在だった。地元では小学生のバレーボール指導に携わり、事故後の連休にも練習や知人との食事会を予定していたという。

単身赴任が終われば、妻と過ごす時間を増やす計画もあった。

二つの家族が当たり前に迎えるはずだった時間が、事故によって奪われた。

津地裁「過失は重大」 法定刑上限の拘禁刑7年

水谷被告は6月10日の初公判で起訴内容を認めた。

その後の公判では、事故前から「ながら運転」をしていたことや、周囲から注意を受けていたことも明らかになった。

10月20日の判決で、津地裁の出口博章裁判官は、スマートフォンに気を取られて前方の安全確認を怠った運転について、事故の危険を顧みない軽率な行為であり、過失は重大だと指摘した。

さらに、被害者側に落ち度がなかったこと、6人の命が奪われた結果が極めて重大であることを重視。過去の過失運転致死事件と比較しても最も重い部類に位置付けられると判断した。

被告が反省の態度を示している事情などを考慮しても、法定刑の上限で処罰することが相当だとして、検察側の求刑通り拘禁刑7年を言い渡した。

判決直後、弁護人は控訴について被告本人が検討していると説明していた。しかし、最終的に控訴は行われず、11月5日に判決が確定した。

遺族「6人の命が7年では軽すぎる」 判決への複雑な思い

法定刑の上限となる判決が下された一方、遺族が納得できたわけではない。

10月20日の判決後、松本恵梨子さんの兄は、最も重い量刑になることを理解していたものの、7年という結果では納得できないと訴えた。

高峰啓三さんの長男も、法定刑上限の判決は当然だと思う一方、6人の命が失われても7年なのかという複雑な思いを明らかにした。

高峰さんの妻は、夫を失った後も自宅の至るところに夫の面影が残り、事故が起きた毎月20日が近づくと、その日の出来事を思い出してしまうと語っている。

夫婦は子育てを経て、これから二人で過ごす時間を楽しみにしていたという。

遺族が求めているのは、単に被告への厳罰だけではない。

これほど重大な結果を引き起こした運転行為が、なぜ危険運転致死罪の対象とならないのか。現在の法律が、ながら運転の危険性を十分に反映しているのかという問題だ。

なお、これらの発言は7月から10月にかけて公表されたもので、11月5日の判決確定を受けた新たなコメントではない。

袋井市長が国に法改正を要望 8月25日に陳情書

松本さん一家が暮らしていた袋井市も、事故を受けて具体的な行動を始めた。

大場規之市長は8月25日、警察庁、法務省などに対し、ながら運転の厳罰化を求める陳情書を提出した。

要望では、運転中のスマートフォン操作による重大事故について、危険運転致死傷罪の対象に「ながら運転」を追加することなどを求めている。

大場市長は要望活動後、法律を整備することで運転者一人一人の行動を変える必要があるとの認識を示し、犠牲となった家族の思いをくんで声を上げ続ける考えを明らかにした。

市は8月27日、市職員952人による「ながら運転根絶宣言書」を袋井警察署に提出。9月18日には袋井駅前で啓発キャンペーンを実施した。

刑罰の見直しを国に求めるだけでなく、自治体職員や地域住民の運転行動を変える取り組みも進めている。

事故現場の亀山市と協定 自治体を超えた再発防止へ

10月22日には、袋井市と事故現場のある亀山市が「ながら運転根絶パートナーシップ協定」を締結した。

協定の柱は、共同での交通安全啓発、事故防止に向けた情報共有、地域社会や事業者との連携、広域的な取り組みの推進だ。

亀山市は10月27日の市長定例記者会見で、袋井市の取り組みを知り、両市が協力してながら運転の根絶を目指すことになったと説明した。

袋井市の大場市長は、自治体が持つネットワークを生かし、運転者の行動変容につなげる必要性を訴えている。

家族5人を失った自治体と、死亡事故が発生した自治体が協力する今回の協定は、刑事裁判とは別の形で事故の教訓を残そうとする動きでもある。

なぜ危険運転致死罪ではないのか 法改正後も残る問題

今回、6人を死亡させた水谷被告に適用されたのは、自動車運転処罰法の過失運転致死罪だった。

過失運転致死傷罪の法定刑は、7年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金である。死亡者が複数いても、その人数に応じて刑期の上限が自動的に加算される制度ではない。

一方、危険運転致死罪には、さらに重い法定刑が定められている。ただし、危険運転致死傷罪が成立するには、法律で定められた危険な運転行為の類型と要件に該当しなければならない。

スマートフォンを長時間注視しながら運転する行為は重大な危険を伴うものの、それだけで危険運転致死罪が成立するという規定にはなっていない。

2026年6月25日には、自動車運転処罰法などの改正法が成立し、7月21日に施行された。

改正では、飲酒運転や高速度運転に数値基準を導入するなど、危険運転致死傷罪の適用対象が見直された。しかし、ながら運転を独立した危険運転類型として追加することは見送られた。

法務省の有識者による検討では、ながら運転にはさまざまな行為があり、その危険性や悪質性を一律に区分することが難しいといった課題が指摘された。

今回の事故は改正法施行前の3月に発生しており、改正法を遡って適用することはできない。

もっとも、今回のように大型トラックが高速走行中に長時間前方から目を離し、多数の死者を出した事案について、従来の過失運転致死罪による処罰で十分なのかという問題は残る。

判決確定で終わらない安全管理 運転者の習慣をどう防ぐか

裁判で明らかになったのは、水谷被告が事故直前だけでなく、日常的に運転中のスマートフォン使用を繰り返していたとされることだ。

こうした危険行為を防止するには、運転者本人への教育と注意喚起に加え、運行管理や安全指導の実効性を高める必要がある。

大型トラックを扱う運送事業者では、運転者の健康状態や勤務状況、運転中の危険行為をどのように確認するかが重要になる。

ただし、今回の事故について、勤務先の安全管理に法令違反があったと確認されたわけではない。事業者の管理上の責任と、水谷被告本人の刑事責任は区別して考える必要がある。

袋井市と亀山市が進める啓発活動を、運転行動の改善や事業者の安全管理にどこまで結び付けられるかも、今後の課題となる。

編集部まとめ

新名神高速道路で6人が死亡した事故は、元トラック運転手に拘禁刑7年の判決が確定し、刑事手続きの大きな区切りを迎えた。

しかし、長女と次女の誕生日を祝うために旅行へ向かっていた一家5人も、家族の待つ自宅へ帰る途中だった男性も、戻ることはない。

遺族が示した疑問は明確だ。スマートフォンを約13秒間注視し、制限速度を超えて走行した大型トラックが6人の命を奪っても、現在の法律では過失運転致死罪の上限である7年という結論になる。

裁判所は現行法の枠組みで最も重い刑を選択した。一方、その枠組み自体が適切なのかという問題は、判決の確定によって解決するものではない。

袋井市長による国への要望と亀山市との協定は、事故を繰り返さないための一歩となる。

今後必要なのは、量刑への賛否だけで議論を終わらせず、法制度の見直しと運転現場での具体的な再発防止策を検証し続けることだ。

特記事項

本記事は2026年11月5日までに確認された判決確定の情報、公判内容、遺族の公表発言、袋井市・亀山市の公式資料、法務省の公表資料に基づいて構成した。

袋井市長および遺族の発言は、判決確定前に公表されたものである。11月5日の判決確定を受けた新たなコメントとしては扱っていない。

事故に関係する運送事業者の安全管理については一般的な再発防止上の論点として取り上げており、当該事業者の法令違反を認定したものではない。

Q新名神高速6人死亡事故の判決はいつ確定したのか?
A2026年11月5日、津地方裁判所が元トラック運転手の水谷水都代被告に言い渡した拘禁刑7年の判決が確定した。控訴期限の11月4日までに双方が控訴しなかった。
Q新名神高速の事故はなぜ起きたのか?
A水谷被告が大型トラックを運転中、スマートフォンで料理動画を見て約13秒間前方から目を離し、渋滞で停止していた車に追突した。事故当時の走行速度は時速約82キロだった。
Q死亡した6人は誰なのか?
A静岡県袋井市の松本幸司さん一家5人と、埼玉県草加市の高峰啓三さん。一家には11歳、8歳、5歳の子ども3人が含まれていた。
Q6人が死亡しても拘禁刑7年が上限なのはなぜか?
A適用された過失運転致死傷罪の法定刑が7年以下の拘禁刑などと定められているため。死亡者数に応じて法定刑の上限が自動的に加算されるわけではない。
Q袋井市長はどのような法改正を求めているのか?
A運転中のスマートフォン操作などの「ながら運転」を危険運転致死傷罪の対象に追加することなどを求めている。袋井市は亀山市との再発防止協定も締結し、啓発活動を進めている。

週刊TAKAPI編集部/黒木

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