防犯カメラに残されたのは、室内滞在わずか約7分という数字だった。
東京都狛江市の20代女性会社員の自宅で、酒に酔った女性客に性的暴行を加えたとして、警視庁調布署は5月12日、埼玉県川越市のタクシー運転手・赤坂光章容疑者(39)を不同意性交等と住居侵入の疑いで逮捕した。
事件そのものの重大性に加え、ネット上で反応が集中したのが、この「7分」だった。
「7分で何ができるのか」
「滞在時間が短すぎる」
「そこに一番驚いた」
Yahoo!ニュースのコメント欄などでは、滞在時間の短さに触れる投稿が相次いだ。数字としては、たしかに強烈だ。乗客を自宅まで送り届け、部屋に入り、性的行為に及び、外へ出るまでが約7分。短すぎる時間が、事件の異様さを一気に伝えてしまう。

出典:Yahoo!ニュース コメント欄より
ただ、この7分は単なるネットのネタでは終わらない。むしろ、この短さこそが事件の怖さを示している。
事件が起きたのは5月3日早朝。女性は東京・高円寺で同僚と飲酒した後、1人でタクシーに乗った。目的地は自宅だった。赤坂容疑者は女性を自宅アパートまで送り届けた後、介抱するような形で室内に入ったとみられている。
本来、タクシー運転手の仕事は、乗客を目的地まで安全に届けるところで終わる。酔った乗客であっても、玄関先までの確認や必要に応じた通報、家族や管理者への連絡など、取るべき対応はある。だが、乗客の部屋に入ることは、介抱という言葉だけでは説明しにくい。
赤坂容疑者は、酒に酔って抵抗できない状態だった女性に性的暴行を加えた疑いが持たれている。調べに対し、性交した事実は認める一方で、「女性は酔っていなかったと思う」といった趣旨の供述をしているとされる。
不同意性交等事件では、「相手は酔っていなかった」「同意があったと思った」という供述が出ることは少なくない。だからこそ、捜査では女性の酩酊状態、歩行や会話の様子、室内に入った経緯、防犯カメラ映像、運行記録、容疑者の認識が細かく確認されることになる。
今回の「7分」は、計画を練った長時間の犯行というより、酔った乗客の状態を見て、短時間で行動に移した疑いをうかがわせる。もしそうであれば、タクシー業界にとってはより重い問題になる。なぜなら、深夜や早朝の車内では、運転手が酔った乗客の状態、自宅住所、降車場所をすべて把握する立場にあるからだ。
乗客は運転手を選べない。酒に酔っていれば、判断力も落ちる。女性が1人で乗車していれば、助けを呼ぶ相手も限られる。タクシーは密室に近い空間でありながら、同時に「安全に帰るための最後の手段」として使われている。
その運転手が、自宅の玄関先で仕事を終えず、室内に入った疑いがある。ここが今回の事件で最も重い点だ。
7分という数字がネットで注目されるのは自然だ。短すぎるから目を引く。異様だから記憶に残る。だが、その短さは、笑いよりも先に、泥酔した乗客がどれほど簡単に危険な状態へ置かれ得るのかを示している。
警視庁は、防犯カメラ映像やタクシーの運行記録、女性の飲酒状況、容疑者の供述内容などをもとに、当時の詳しい経緯を調べている。
今回の事件が示したのは、タクシーという移動手段そのものへの不信ではない。問題は、乗客が最も無防備になる深夜の帰宅時に、最後の安全網であるはずの場所が、一瞬で危険な場所に変わり得るという現実だ。

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