警察庁長官、全国刑事部長会議でトクリュウ対策強化を訓示 栃木・上三川強盗殺人受け「中核人物の早期検挙」へ

匿流ターゲット取締りチーム「T3」と全国の特殊詐欺連合捜査班「TAIT」を活用 下見情報の共有、海外詐欺拠点の摘発も焦点

警察庁の楠芳伸長官は5月25日、東京都内で開かれた全国刑事部長会議で、匿名・流動型犯罪グループ、いわゆる「トクリュウ」への対策を全国警察で強化するよう訓示した。

念頭に置かれたのは、栃木県上三川町で5月14日に発生した強盗殺人事件だ。住宅に押し入ったグループにより69歳の女性が殺害され、親子3人が死傷した。これまでに実行役とみられる16歳の少年4人と、現場で指示したとみられる夫婦が逮捕されている。

楠長官は会議で、トクリュウの撲滅に向けて「中核的人物の早期検挙」と「同種事案の更なる発生防止」の両面で、全国警察を挙げた対応が必要だと強調した。単に現場にいた実行役を逮捕するだけではなく、スマートフォン、SNSアカウント、通信記録、資金の流れを集約し、背後で指示や勧誘を行った人物まで追う姿勢を明確にした形だ。

今回の会議で重要なのは、刑事部門の全国的な連携が正面から打ち出された点にある。

警察庁はすでに、警視庁に設置された専従捜査班「匿流ターゲット取締りチーム」、通称「T3」を軸に、各県警と連携してトクリュウの中核人物を追う態勢を進めている。T3は、警視庁だけで完結する捜査班ではない。各道府県警から集められた捜査員も加わり、犯罪グループの実態把握、取締りターゲットの特定、海外の特殊詐欺拠点に関する捜査まで担う。

さらに、特殊詐欺事件では、全国の都道府県警に整備された「特殊詐欺連合捜査班」、通称「TAIT」との連携も鍵になる。警視庁、埼玉、千葉、神奈川、愛知、大阪、福岡の7都府県警には専従体制が置かれ、全国からの捜査依頼や防犯カメラ捜査、口座・通信手段の追跡を進める。強盗、特殊詐欺、SNS型投資詐欺、ニセ警察詐欺が別々の事件に見えても、背後で同じ人物や同じ道具が使われるケースがあるためだ。

もう一つの焦点は、事件前の「下見情報」の共有だ。

楠長官は、不自然な徘徊や住宅周辺の確認行為など、強盗や窃盗の下見とみられる動きを把握した場合、実行役が動く前に迅速に確保する対応を求めた。闇バイトで集められた実行役は、事件直前に指示を受け、現場に投入されることがある。だからこそ、事件が起きてから追うだけではなく、下見、移動、集合、通信の段階で止めることが必要になる。

栃木の事件では、警察庁が警察法に基づき、警視庁などに捜査参加を指示した。強盗事件で警視庁の経験や情報分析力を投入するのは、トクリュウによる広域事件の可能性を重く見た対応といえる。押収されたスマートフォンの解析や、SNSアカウントの照合、別事件との関連確認が進められている。

背景には、特殊詐欺被害の急増もある。警察庁によると、2026年3月末時点の特殊詐欺被害額は937.9億円に達し、前年同期から大幅に増加した。1日当たりの被害額は10.4億円規模となっており、SNS型投資詐欺やニセ警察詐欺を含む詐欺被害は、すでに高齢者だけの問題ではなくなっている。

トクリュウは、実行役、指示役、回収役、口座提供役、勧誘役が流動的に入れ替わる。暴力団、海外犯罪グループ、道具屋、資金洗浄を担う人物が関係する場合もあり、都道府県ごとの捜査だけでは全体を追い切れない。

今回の全国刑事部長会議は、栃木の強盗殺人事件への対応にとどまらない。T3、TAIT、各県警の情報共有を重ね、下見段階の把握、SNSアカウントの分析、海外詐欺拠点の摘発までつなげる全国捜査の号令でもある。

警察の捜査は、末端の少年や実行役を捕まえる段階から、指示を出した人物、金を受け取った人物、勧誘した人物、海外拠点を動かした人物へと向かっている。栃木の事件を受け、トクリュウ対策は次の局面に入った。


合わせて読みたい


編集部まとめ

警察庁の楠芳伸長官は5月25日の全国刑事部長会議で、栃木県上三川町の強盗殺人事件を念頭に、トクリュウ対策の強化を全国警察に求めた。焦点は、末端の実行役だけではなく、背後で指示や勧誘を行う中核人物の早期検挙にある。警視庁の専従捜査班「T3」、全国の特殊詐欺連合捜査班「TAIT」、各県警の情報共有を活用し、下見情報の把握や海外詐欺拠点の捜査まで進める方針だ。

記事のポイントQ&A

Q. 全国刑事部長会議で何が訓示されましたか?
A. 警察庁長官が、トクリュウ対策の強化、中核人物の早期検挙、同種事件の発生防止を全国の刑事部長らに求めました。

Q. T3とは何ですか?
A. 警視庁に設置された「匿流ターゲット取締りチーム」の通称です。トクリュウの中核人物や海外の特殊詐欺拠点に関する捜査などを担います。

Q. TAITとは何ですか?
A. 「特殊詐欺連合捜査班」の通称です。全国の都道府県警が連携し、特殊詐欺やSNS型投資詐欺などの捜査を効率的に進めるための態勢です。

Q. なぜ下見情報の共有が重要なのですか?
A. 強盗や窃盗では、事件前に住宅周辺を確認する行動が出る場合があります。下見段階で把握できれば、実行役が動く前に事件を止められる可能性があります。

送信中です

×

※コメントは最大500文字、5回まで送信できます

送信中です送信しました!

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。


最近の記事
  1. Snow Man宮舘涼太、カンヌで華麗なターン 映画『黒牢城』フォトコールで“舘様”世界に刻む
  2. 学童クラブで女児を盗撮か 元アルバイトの22歳男を逮捕 別件誘拐容疑で押収のスマホ解析から発覚
  3. 警察庁長官、全国刑事部長会議でトクリュウ対策強化を訓示 栃木・上三川強盗殺人受け「中核人物の早期検挙」へ
  4. 小金井住宅強盗準備事件 運転役36歳男を逮捕 闇バイト型犯行か
過去記事
提携媒体



メルマガ

週刊TAKAPI

新着記事をメールで確認しませんか?