愛知県豊橋市議会の6月定例会最終日となった19日、長坂尚登市長の辞職を求める「辞職勧告決議案」が審議され、賛成多数で可決された。
背景にあるのは、豊橋市の新アリーナ建設問題だ。
辞職勧告決議案を提出したのは、市議会最大会派の自民党市議ら。決議案では、長坂市長の就任以降、市政運営が「迷走と混乱を極めている」と批判し、市長に対して自らの責任を明確にしたうえで、速やかに辞職するよう求めた。
自民市議「市政運営は迷走と混乱」
本会議では、自民党の本多洋之市議が、長坂市長の市政運営について厳しく批判した。
本多市議は「長坂尚登市長の就任以降、本市の市政運営は迷走と混乱を極めている」と述べ、「自らの責任を明確にした上で、速やかに辞職することを強く求める」と訴えた。
辞職勧告決議案では、新アリーナ建設をめぐり、長坂市長が議会で議決された事業を反故にしたと指摘。さらに、建設の一時中断によって事業費が約40億円増加したとして、市長の政治責任を問う内容となっている。
新アリーナ中断で約40億円増
豊橋市の新アリーナ建設をめぐっては、おととし11月、建設反対を掲げた長坂市長が当選したことで、事業が一時ストップした。
その後、去年7月に行われた住民投票で建設継続が多数となり、同年10月に事業は再開された。
しかし、この一時中断に伴い、事業費は約40億円増加したとされる。
本多市議は、この増額分について「長坂市長の判断が主たる原因であり、その責任は極めて重大」と指摘した。
提出した市議らは、長坂市長について「自身の明確な意思は示さず、最終的な判断と責任を他者に委ねる姿勢が目立つ」とし、行政トップとしての当事者意識を欠いているなどと批判している。
反対意見も 「40億円増は市長だけの責任ではない」
一方で、辞職勧告決議案には反対する意見もあった。
新しい豊橋の菅谷竜市議は、長坂市長が住民投票の結果を尊重し、建設推進に舵を切ったと指摘した。
そのうえで、約40億円の増額についても「市長の責任だけではない」と述べ、辞職勧告という形で市長個人に責任を集中させることには慎重な考えを示した。
今回の議論では、事業費増加の責任を長坂市長の判断に求める立場と、住民投票後に事業を再開した経緯や物価高騰なども含めて考えるべきだとする立場が分かれた。
つまり、議会内でも「市長辞職を求めるべきか」をめぐって意見は一枚岩ではなかった。
賛成多数で可決 1995年以降で初
採決の結果、辞職勧告決議案は賛成多数で可決された。
豊橋市議会で市長に対する辞職勧告決議が可決されたのは、記録が残る1995年以降で初めてとされる。
ただし、辞職勧告決議は不信任決議とは異なり、法的拘束力はない。
そのため、可決されたとしても、長坂市長が直ちに辞職しなければならないわけではない。
長坂市長「重く受け止めている」も進退明言避ける
長坂市長は、辞職勧告決議について「いただいた議決・提案内容・質疑応答の内容を含めて、重く受け止めています」と述べた。
一方で、進退については明言を避けた。
長坂市長はこれまで、住民投票の結果と自身の進退は関係しないとの考えを示しており、今回の辞職勧告を受けても、市長職を続ける意向をにじませている。
問われるのは「責任追及」と「市政の前進」
今回の辞職勧告決議は、長坂市長の政治責任を問うものだが、同時に、今後の豊橋市政がどう前に進むのかという問題も突きつけている。
市長選で示された民意。
住民投票で示された民意。
そして、市議会で示された辞職勧告という意思。
複数の民意が交差するなかで、新アリーナ問題は単なる公共事業の是非を超え、市長と議会の信頼関係、事業費増加の責任、市民への説明責任を問う局面に入っている。
辞職勧告に法的拘束力はない。
だからこそ今後は、長坂市長が議会とどのように向き合い、市政運営を立て直していくのかが問われる。
本記事は、豊橋市議会での審議内容、報道内容、関係市議の発言をもとに構成しています。今後、市長や各会派、市議から追加説明があった場合、追記・更新します。
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