教員による盗撮や性暴力のニュースが相次いで報じられています。
学校は、本来であれば子どもたちが安心して学ぶ場所です。
しかし、その学校で、児童生徒を守る立場にある教員が盗撮や性暴力に及んだとされる事案が発覚するたびに、保護者や児童生徒の信頼は大きく傷つきます。
では、教員による盗撮・性暴力事案は本当に増えているのでしょうか。
そして、なぜ学校現場でこうした問題が繰り返されるのでしょうか。
文部科学省のデータをもとに整理すると、単純に「毎年増え続けている」とは言い切れません。
一方で、児童生徒に対する性暴力等で処分される教員は依然として一定数存在しており、学校現場の構造的なリスクを放置することはできません。
文科省データで見る教員の性犯罪・性暴力等
文部科学省の令和6年度調査によると、性犯罪・性暴力等により懲戒処分等を受けた教育職員は281人でした。これは令和5年度の320人からは減少しています。(文部科学省)
このうち、児童生徒性暴力等により懲戒処分を受けた教育職員は134人です。令和5年度は157人だったため、この数字も前年度からは減少しています。(文部科学省)
一方で、令和4年度を見ると、性犯罪・性暴力等により懲戒処分等を受けた教育職員は241人、児童生徒性暴力等による懲戒処分者は119人でした。つまり、令和4年度から令和5年度にかけて増加し、令和6年度には減少した形です。(文部科学省)
つまり、数字だけを見ると「右肩上がりで増え続けている」とは言えません。
しかし、令和6年度でも性犯罪・性暴力等で281人、児童生徒性暴力等で134人が処分されている事実は重いものです。学校現場で子どもを守る立場の教員が、性犯罪・性暴力等で処分されている状況自体が、深刻な問題です。(文部科学省)
児童生徒性暴力等は「原則懲戒免職」の対象
文部科学省は、児童生徒等に対して性暴力等に及んだ教員について、原則として懲戒免職とするよう各教育委員会に求めてきました。2020年9月時点で、すべての都道府県・指定都市教育委員会の懲戒処分基準に、その趣旨の規定が整備されています。(文部科学省)
さらに文科省は、教員による児童生徒性暴力等が起きた場合には、教員性暴力等防止法や基本指針に基づき、原則として懲戒免職にするなど厳正な処分を行うよう求めています。(文部科学省)
つまり、制度上はかなり重い扱いです。
それでも事案がなくならない背景には、処分の厳罰化だけでは防ぎきれない、学校現場の構造的な問題があります。
なぜ学校で盗撮・性暴力が起きるのか
教員による盗撮・性暴力事案が起きる背景には、いくつかの共通したリスクがあります。
第一に、学校には大人と子どもが日常的に近い距離で接する場面が多いことです。
授業、部活動、個別指導、進路相談、行事、宿泊を伴う活動。
教員が児童生徒の生活空間に深く関わることは、教育活動として必要な面があります。
しかし、その立場や距離感が悪用されると、被害は非常に見えにくくなります。
第二に、学校には死角があります。
教室、準備室、部室、更衣場所の周辺、廊下の奥、相談室、職員室から見えにくい場所。
学校は開かれた場所に見えて、実際には大人の目が届きにくい場所が多く存在します。
第三に、児童生徒が声を上げにくいことです。
相手が教員であれば、「先生に言ってもいいのか」「自分が悪く思われないか」「学校生活に影響しないか」と不安を抱えやすくなります。
この相談しにくさが、発覚を遅らせる要因になります。
盗撮はスマートフォン時代に発覚しにくくなった
盗撮が特に厄介なのは、機器の小型化です。
スマートフォンや小型カメラは、日常的に持っていても不自然ではありません。
教員がスマートフォンを持っていること自体は、業務連絡や緊急対応のために必要な場合もあります。
しかし、着替えや身体に関わる場面、部活動の更衣場所、宿泊行事などでは、端末の持ち込みルールが曖昧だとリスクになります。
つまり、現代の盗撮対策は「教員の良心に任せる」だけでは不十分です。
私物端末をどこまで持ち込めるのか。
校内で撮影してよい場面はどこまでか。
部活動や更衣場所の周辺でスマートフォンをどう扱うのか。
児童生徒の写真や動画を誰が、どの端末で、どの目的で撮るのか。
ここを明文化しなければ、学校の現場判断に任されすぎてしまいます。
文科省が求める防止策
文部科学省は、教員による児童生徒性暴力等の防止に向け、複数の対策を示しています。
たとえば、児童生徒とのSNS等による私的なやりとりの禁止、密室状態の回避、採用希望者の経歴確認などです。(文部科学省)
この方針は重要です。
なぜなら、教員による盗撮や性暴力は、単に「悪い教員を処分すれば終わり」ではないからです。
密室を作らない。
私的な連絡を許さない。
採用時に過去の処分歴を確認する。
被害の訴えを握りつぶさない。
児童生徒が相談できる外部ルートを確保する。
こうした仕組みがなければ、同じリスクは学校に残り続けます。
再発防止に必要な7つの対策
教員による盗撮・性暴力を防ぐには、精神論ではなく、具体的な仕組みが必要です。
1. 校内でのスマートフォン管理を明文化する
学校内で教員が私物スマートフォンをどの場面で使用できるのかを明確にする必要があります。
特に、更衣場所、部室、体育館、プール、宿泊行事、健康診断に関わる場面などでは、私物端末の持ち込みを厳しく制限すべきです。
「なんとなく禁止」ではなく、文書化し、全教職員に周知することが重要です。
2. 撮影ルールを統一する
学校では、授業記録、行事記録、広報、部活動などで写真や動画を撮る場面があります。
だからこそ、撮影には統一ルールが必要です。
誰が撮るのか。
何の目的で撮るのか。
どの端末で撮るのか。
保存先はどこか。
誰が管理するのか。
いつ削除するのか。
これを決めないまま、教員個人の端末で撮影する運用を続けると、トラブルの温床になります。
3. 密室での個別指導を避ける
文科省も密室状態の回避を求めています。(文部科学省)
児童生徒と教員が一対一になる場面を完全になくすことは難しいかもしれません。
ただし、扉を開ける、窓のある部屋を使う、管理職に時間と場所を共有する、面談記録を残すなど、密室化を防ぐ方法はあります。
「見られて困らない環境」を作ることが、児童生徒と教員の双方を守ります。
4. 部活動の更衣・部室管理を見直す
盗撮リスクが高くなりやすいのが、部活動です。
部室、更衣場所、遠征、合宿、試合会場。
これらは学校の通常授業よりも管理が緩くなりやすい場面です。
部室周辺に教員が私物端末を持ち込む必要があるのか。
更衣中に教員が近くにいる必要があるのか。
遠征先でスマートフォン管理はどうするのか。
生徒が違和感を訴えた場合、誰に相談できるのか。
部活動こそ、学校とは別に具体的な運用ルールを作る必要があります。
5. 児童生徒が相談できる複数ルートを作る
盗撮や性暴力の被害は、担任に言いにくい場合があります。
相手が担任、部活動顧問、管理職に近い教員であれば、なおさらです。
そのため、相談先は一つでは足りません。
担任。
学年主任。
養護教諭。
管理職。
スクールカウンセラー。
教育委員会。
外部相談窓口。
複数のルートを示し、児童生徒に「誰に言ってもいい」と伝える必要があります。
6. 相談後の二次被害を防ぐ
被害や違和感を相談した児童生徒が、その後に学校で不利益を受けるようなことがあってはいけません。
周囲に知られる。
加害疑いの教員と接触させられる。
学校生活で孤立する。
「大ごとにした」と扱われる。
こうした二次被害が起きると、次の被害者も声を上げられなくなります。
相談を受けた学校は、まず被害を訴えた児童生徒の安全確保を最優先にするべきです。
7. 採用時・再任用時のチェックを徹底する
文科省は、採用希望者の経歴等を十分に確認し、適切な採用判断を行うことも求めています。(文部科学省)
過去に児童生徒性暴力等で処分された教員が、別の自治体や学校で再び子どもに関わる職に就くことを防ぐためです。
「退職したから終わり」ではありません。
処分歴の確認、免許状失効情報の確認、採用時の面接・照会の徹底が必要です。
学校が保護者に説明すべきこと
再発防止策を作っても、保護者に見えなければ不安は残ります。
学校は、少なくとも次の点を説明する必要があります。
校内の撮影ルール。
私物スマートフォンの管理方針。
更衣場所や部室の安全対策。
教員と児童生徒が一対一になる場面のルール。
相談窓口。
被害や違和感があった場合の対応手順。
調査時の被害者保護。
これらを保護者に説明することで、「学校が本気で対策しているか」が見えます。
逆に、対策を作っても説明しなければ、保護者からは「また隠しているのではないか」と受け止められかねません。
「懲戒免職」だけでは再発防止にならない
児童生徒性暴力等に対する原則懲戒免職は当然必要です。(文部科学省)
しかし、処分は事件が起きた後の対応です。
本当に必要なのは、事件を起こさせない仕組みです。
教員個人の倫理観に頼るだけでは限界があります。
悪意ある人間は、ルールの隙間を探します。
だからこそ、学校現場には「不正をしにくい環境」「違和感を拾える仕組み」「相談した子どもを守る体制」が必要です。
ミニ解説|教員盗撮・性暴力を防ぐには
編集部コメント
教員による盗撮・性暴力事案は、数字の増減だけで語れる問題ではありません。
令和6年度は前年度より減少したとはいえ、性犯罪・性暴力等で処分された教育職員は281人。児童生徒性暴力等で懲戒処分を受けた教員は134人います。(文部科学省)
これは、教育現場への信頼に直結する重大な数字です。
学校は、子どもを守る場所でなければなりません。
だからこそ、必要なのは「先生を信じましょう」ではなく、「信頼を守るための仕組み」です。
密室を作らない。
端末管理を徹底する。
撮影ルールを明確にする。
部活動の死角をなくす。
相談した児童生徒を守る。
採用時のチェックを徹底する。
この積み重ねがなければ、同じ問題はまた起きます。
教員の盗撮・性暴力を防ぐことは、子どもを守るだけではありません。
真面目に働く大多数の教員を守り、学校全体への信頼を守ることでもあります。
本記事は、文部科学省の公表資料、教員による児童生徒性暴力等の防止に関する制度、各地の学校問題事例を踏まえた解説コラムです。特定の個別事案を断定するものではなく、児童生徒の安全確保と再発防止の観点から構成しています。
担当記者:一条|週刊TAKAPI 記者
サイト訪問者数

コメント
0件まだコメントはありません。最初のコメントを投稿してみませんか。
この記事のコメント投稿は締め切られています。