外国人犯罪は本当に増えているのか 統計と見出しが作る「治安不安」

外国人犯罪は、本当に増えているのか。

この問いに対する答えは、単純ではない。警察庁の統計を見る限り、2025年の来日外国人犯罪は、検挙件数、検挙人員ともに前年を上回っている。数字だけを見れば、「増えている」と言える。

ただし、その数字だけで「外国人全体が危険になった」と結論づけることはできない。

警察庁が使う「来日外国人犯罪」という言葉は、日本にいる外国人全体による犯罪を意味しない。永住者、永住者の配偶者等、特別永住者、在日米軍関係者、在留資格不明者などは、この分類から外れる。つまり、一般に使われる「外国人犯罪」という言葉と、警察統計上の「来日外国人犯罪」は、同じ範囲を指していない。

ここを分けずに報じると、読者には「外国人犯罪が増えている」という短い印象だけが残る。

確かに、来日外国人犯罪は増えている。
しかし、それは「外国人全体が日本の治安を悪くしている」という意味ではない。

この違いをどこまで丁寧に伝えるか。
いま、犯罪報道に問われているのはそこだ。

統計上、来日外国人犯罪は増えている

警察庁の資料によると、2025年の来日外国人犯罪の総検挙件数は2万5,480件だった。前年より3,686件多く、増加率は16.9%。総検挙人員は1万2,777人で、前年より607人増えた。

刑法犯に限ると、検挙件数は1万7,614件で、前年から31.4%増加した。検挙人員は7,333人で、前年から15.2%増えている。

この数字を前にして、「外国人犯罪は増えていない」と書くことはできない。
少なくとも、警察が検挙した来日外国人犯罪は増えている。

警察庁は、刑法犯の検挙件数が増えた主な要因として、ベトナム、タイなどによる窃盗犯の増加を挙げている。刑法犯の検挙人員が増えた主な要因としては、ベトナムによる窃盗犯や知能犯の増加を挙げている。

ここまでは、公式統計で確認できる事実である。

問題は、その数字の出し方だ。
数字の見せ方によって、読者の受け取り方は大きく変わる。

「来日外国人」と「外国人全体」は同じではない

外国人犯罪をめぐる議論で、最も注意すべきなのは定義である。

警察庁統計の「来日外国人」は、日本にいる外国人全体を指していない。永住者、永住者の配偶者等、特別永住者などは含まれない。在日米軍関係者や在留資格不明者も外れる。

つまり、2025年の来日外国人犯罪が増えたからといって、日本で暮らすすべての外国人の犯罪が同じように増えたとは言えない。

一方で、出入国在留管理庁によると、2025年末の在留外国人数は412万5,395人となり、初めて400万人を超えた。前年末より35万6,418人増え、過去最多を更新している。

人の数が増えれば、社会の中で起きる事件への関与件数も変動する。
犯罪統計を見るときは、検挙件数だけではなく、母数の変化も見なければならない。

「外国人犯罪が増えた」
この一文は、検索では強い。

しかし、報道としては不十分だ。

正確に書くなら、こうなる。

「警察庁統計で見る来日外国人犯罪の検挙件数は増えている。一方で、在留外国人数も過去最多となっており、外国人全体の犯罪率を単純に示す数字ではない」

この書き方なら、数字から逃げず、印象だけにも寄らない。

日本全体の犯罪も増えている

もう一つ、見落としてはいけない数字がある。
日本全体の犯罪も増えているという点だ。

警察庁の「令和7年の犯罪情勢」によると、2025年の刑法犯認知件数は77万4,142件だった。前年より3万6,463件増え、増加率は4.9%。戦後最少となった2021年から4年連続で前年を上回った。

刑法犯の検挙件数は30万1,055件。検挙人員は20万663人。どちらも前年より増えている。

つまり、2025年は、来日外国人犯罪だけが増えた年ではない。
日本全体の刑法犯も増えている。

来日外国人による刑法犯検挙件数1万7,614件を、日本全体の刑法犯検挙件数30万1,055件と比べると、割合は約5.9%になる。検挙人員では、来日外国人が7,333人、日本全体が20万663人なので、割合は約3.7%である。

この割合だけで軽く見るべきではない。
地域によっては、窃盗、万引き、住宅対象の侵入窃盗などが住民の不安を強めている。被害に遭った人にとって、全国統計の割合は慰めにはならない。

ただし、全国統計として見れば、来日外国人犯罪は刑法犯全体の一部である。

ここを抜いたまま「外国人が治安を悪くしている」と書けば、記事は事実よりも印象に寄る。

外国人事件はなぜ目立つのか

多くの読者が「外国人犯罪が増えている」と感じる理由は、統計だけではない。
報道の見出しも影響している。

日本人が事件を起こした場合、見出しに「日本人」と入ることは少ない。
しかし、外国籍の人物が関係する事件では、「ベトナム人」「中国籍」「外国人グループ」といった表記が見出しに入ることがある。

国籍を報じること自体が、すべて不適切というわけではない。

犯罪の背景、組織性、在留資格、逃走のおそれ、同種事件への注意喚起に関係する場合、国籍や地域名は報道上の意味を持つ。

しかし、国籍を出す必要性が説明されないまま、国籍だけが強く見える見出しになると、読者の記憶には「また外国人事件か」という印象が残る。

一つの記事では事実でも、積み重なると社会の見え方を変える。
これが、見出しが作る体感治安である。

読者は、毎日、警察庁の統計表を見て暮らしているわけではない。
目に入るのは、スマートフォンに流れてくる短い見出しだ。
SNSで引用される投稿だ。
事件の一部だけを切り取った動画だ。

そこで国籍付きの事件見出しを繰り返し見れば、実際の割合以上に「外国人犯罪ばかりが増えている」と感じやすくなる。

不安を「差別」で片付けても、犯罪対策にはならない

一方で、外国人犯罪への不安をすべて「差別」として片付けることもできない。

警察庁は、来日外国人による犯罪について、日本人による犯罪と比べて多人数で行われる傾向があると説明している。2025年の来日外国人による刑法犯検挙件数に占める共犯事件の割合は45.3%。日本人の11.5%を大きく上回っている。

住宅対象の侵入窃盗では、来日外国人の共犯事件割合は70.8%。日本人は10.9%だった。万引きでも、来日外国人は31.8%、日本人は3.6%となっている。

この数字は無視できない。

ただし、ここで見るべきなのは「外国人だから危険」という話ではない。
見るべきなのは、犯行の形である。

単独犯なのか。
共犯事件なのか。
窃盗なのか。
詐欺なのか。
入管法違反なのか。
海外の指示役がいるのか。
盗品を国外に送る役割分担があるのか。
店舗や住宅が狙われているのか。

必要なのは、国籍でひとまとめにすることではない。
どの犯罪が、どの地域で、どの手口で増えているのかを分けることだ。

治安不安に向き合うなら、外国人全体を敵にするのではなく、被害を出している犯行手口を具体的に止める必要がある。

報道が本当に問うべきこと

報道がやるべきことは、国籍を隠すことではない。
同時に、国籍だけを大きく見せることでもない。

必要なのは、順番である。

まず、統計上の増加を正確に伝える。
次に、「来日外国人」と「外国人全体」の違いを説明する。
そのうえで、日本全体の犯罪動向、在留外国人数の増加、犯罪の種類、地域差、共犯事件の割合を見る。

最後に、報道自身が作っている印象にも目を向ける。

「外国人犯罪は増えている」
この一文は、統計上は間違いではない。

しかし、それだけでは足りない。

「警察庁統計では、来日外国人犯罪の検挙件数は増えている。ただし、それは外国人全体が危険になったという意味ではない。統計の分類、在留外国人数、日本全体の犯罪動向、そして国籍が見出しで強調されやすい報道の出し方を分けて見る必要がある」

ここまで書いて、ようやく読者は判断できる。

外国人犯罪は増えている。しかし、見出しだけで社会を見てはいけない

外国人犯罪は、本当に増えているのか。

警察庁統計で見る限り、2025年の来日外国人犯罪の検挙件数と検挙人員は増えている。ここを否定する必要はない。

しかし、それは「外国人全体が危険になった」という意味ではない。
「外国人が日本の治安を悪くしている」と短く言い切れる話でもない。

同じ年、日本全体の刑法犯も増えている。
在留外国人数も過去最多になっている。
警察統計の「来日外国人」は、一般に使われる「外国人全体」と同じではない。

そして、外国籍の人物が関係する事件では、国籍が見出しに入りやすい。
その積み重ねが、読者の中に「外国人事件ばかりが起きている」という印象を残す。

治安不安を無視してはいけない。
被害を受けた地域や住民の声を軽く扱ってもいけない。

しかし、犯罪対策に必要なのは、国籍への怒りではない。
必要なのは、数字の読み方、犯行手口の確認、地域ごとの対策、そして報道の見出しが読者に残す印象への自覚である。

外国人犯罪は増えている。
ただし、外国人だけが社会の治安を悪化させているわけではない。

統計が示す増加と、見出しが作る不安。
この2つを分けて見なければ、社会は事実ではなく、印象で動いてしまう。

【合わせて読みたい】

参考資料

警察庁「令和7年における組織犯罪の情勢」
警察庁「令和7年の犯罪情勢」
出入国在留管理庁「令和7年末現在における在留外国人数について」

Q. 外国人犯罪は本当に増えていますか?

A. 警察庁統計では、2025年の来日外国人犯罪の検挙件数と検挙人員は増えています。ただし、これは日本にいる外国人全体の犯罪件数を意味するものではありません。

Q. 来日外国人犯罪とは何ですか?

A. 警察庁統計で使われる分類です。永住者、永住者の配偶者等、特別永住者、在日米軍関係者、在留資格不明者などを除いた外国人による犯罪を指します。

Q. なぜ外国人犯罪が多く見えるのですか?

A. 外国籍の人物が関係する事件では、国籍や地域名が見出しに入ることがあります。その見出しを繰り返し見ることで、実際の割合以上に外国人犯罪が目立って見える場合があります。

Q. 外国人犯罪の報道で注意すべき点は何ですか?

A. 統計上の増加、来日外国人という分類、在留外国人数の増加、日本全体の犯罪動向、犯罪の種類、報道での国籍表示を分けて伝えることです。

Q. 外国人犯罪への不安は差別ですか?

A. 不安そのものを差別と決めつけるべきではありません。地域で被害が出ている場合、不安は当然あります。ただし、外国人全体を一括りにするのではなく、どの犯罪がどの手口で増えているのかを確認する必要があります。


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