2026年6月15日 7時50分更新
週刊TAKAPI編集部/担当記者:松本
中東情勢の混乱を背景に、塗料やシンナーなどナフサ由来製品の不足が、東三河を含む地域の建設・土木・製造業に影響を広げている。
こうした中、デジタル兼内閣府副大臣の今枝宗一郎衆議院議員(愛知14区)が、ナフサ由来製品不足への政府対応について地元で説明した。製品を偏りなく適切に供給している企業を「供給適正優良企業」として公表する方針を示し、中小企業に製品が届きにくい現状の改善へ動き出す考えを明らかにした。
今回の問題は、単なる原材料不足ではない。塗料、シンナー、溶剤、樹脂、接着剤などは、建設現場、工場、車両整備、インフラ補修など幅広い分野で使われる基礎材料だ。供給が詰まれば、工事の遅れ、納期の混乱、価格転嫁の困難、事業継続リスクに直結する。
今枝副大臣が問題視する「偏った供給」
現場で特に深刻なのは、限られた製品が大口取引先や大手企業に優先的に回り、中小規模の事業者に十分届かないという供給の偏りだ。
中小企業からは、注文しても納期回答が出ない、必要量が確保できない、価格が急騰しているといった声が上がっている。建設・土木の現場では、塗料や溶剤が確保できなければ仕上げ作業や補修工程が止まる。製造業でも、材料不足は生産計画の遅れにつながる。
今枝副大臣が今回踏み込んだのは、この「見えにくい供給格差」だ。大手だけが材料を確保し、中小企業が後回しにされる構造が続けば、地域経済の下支えをしている現場から先に疲弊していく。
政府が「供給適正優良企業」を公表する方針を示した背景には、こうした供給の偏りを是正し、公平な流通を促す狙いがある。
「供給適正優良企業」公表は業界への強いメッセージ
今回の公表方針は、単なる企業表彰ではない。
製品を適切に供給している企業を明らかにすることで、取引先、発注者、自治体、金融機関、地域社会に対し、「どの企業が中小企業や地域産業を支えているのか」を見える化する意味を持つ。
同時に、偏った供給を続ける企業に対しては、無言の圧力にもなる。政府が優良企業を公表するということは、裏を返せば、供給姿勢が問われる企業も業界内で浮かび上がるということだ。
中小企業にとっては、どの企業から調達すべきか、どの取引先が安定供給に協力的かを判断する材料にもなる。制度が実効性を持てば、現場の不安を和らげる一手になる可能性がある。
トルエン転用で塗料・シンナー不足の打開を急ぐ
政府は、供給に余裕があるトルエンを溶剤や塗料原料に転用するプロジェクトも進める。
塗料やシンナー不足が長期化すれば、住宅工事、公共工事、橋梁・道路などのインフラ補修、工場設備の維持管理にも影響が出る。代替原料の活用は、現場にとって即効性のある対策として期待される。
ただし、実際に中小企業の手元まで製品が届かなければ意味がない。原料を確保するだけでなく、流通の末端まで目詰まりを起こさない仕組みが必要になる。
石油輸入ルートも見直し ホルムズ海峡リスクに備え
中東情勢の悪化を受け、石油輸入ルートの見直しも進んでいる。
従来の輸送ルートでは、ホルムズ海峡周辺の緊張が高まった場合、石油の安定確保に大きなリスクが生じる。政府は、ホルムズ海峡内の港湾に依存しすぎない輸送体制を整え、有事リスクの低減を図る考えだ。
原油やナフサの供給不安は、国際政治のニュースに見えて、実際には地域の工務店、塗装業者、町工場、物流会社、農林水産業者、そして家計にまで波及する。今枝副大臣が地元でこの問題を説明した意味は大きい。
補正予算3.1兆円 家計と産業を同時支援
政府は、物価高やエネルギー価格への対応として、総額3.1兆円規模の補正予算も成立させている。
柱となるのは、地方創生臨時交付金、電気・都市ガス料金の負担軽減、燃料価格抑制のための予備費だ。
地方創生臨時交付金は、工場などが使う特別高圧電力への支援を含む地域経済対策に活用される。電気・都市ガス料金の軽減策では、一般家庭の負担を抑えるほか、LPガス利用世帯への支援も継続される。
さらに、ガソリン、軽油、重油などの燃料価格対策は、運送業、建設業、農業、林業、水産業にとって重要だ。燃料費と原材料費が同時に上がれば、中小企業の経営体力は一気に削られる。
今回のナフサ由来製品不足は、補正予算による物価対策とも密接につながっている。
週刊TAKAPIの視点
今回の今枝副大臣の説明で重要なのは、政府が単なる価格高騰対策だけでなく、供給の偏りそのものに目を向け始めた点だ。
中小企業が本当に苦しんでいるのは、「高い」だけではない。「入らない」「納期が読めない」「大手に先に回っているのではないか」という不公平感である。
材料が届かなければ、現場は止まる。現場が止まれば、売上も雇用も地域経済も傷む。大手企業だけが材料を確保し、中小企業が後回しにされる構造があるなら、そこには行政の監視と是正が必要だ。
「供給適正優良企業」の公表が本当に機能するかどうかは、これからが勝負になる。看板だけで終わるのか、それとも中小企業の手元に製品が届く実効策になるのか。
週刊TAKAPIは、ナフサ由来製品の供給状況、価格高騰、地元中小企業への影響、政府対応の実効性を引き続き注視していく。
編集部まとめ
ナフサ由来製品不足は、塗料やシンナーの問題にとどまらない。建設、土木、製造、物流、インフラ補修まで巻き込む地域産業の重大な供給不安だ。
今回、今枝宗一郎副大臣が地元で政府対応を説明し、「供給適正優良企業」の公表方針を示したことは、中小企業にとって重要な一歩となる。
焦点は、制度の名前ではない。実際に中小企業へ材料が届くのか。大手優先の供給偏りが是正されるのか。そこにある。
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