竹前夫婦と接点、神奈川県内でバール購入か 事件3日後に中国出国、東南アジア方面へ逃亡の可能性
16歳の高校生4人が実行役とされ、69歳の女性が自宅で殺害された。
栃木県上三川町で5月14日に起きた強盗殺人事件は、いわゆる「闇バイト」型の事件を超え、匿名・流動型犯罪グループ「トクリュウ」の危険性を改めて突きつけている。
死亡したのは、上三川町の住宅に住む富山英子さん(69)。自宅に押し入った複数の人物に襲われ、胸を刺されるなどして死亡した。
これまでに逮捕されたのは、実行役とされる16歳の高校生4人と、現場指示役とみられる竹前海斗容疑者(28)、妻の美結容疑者(25)の計6人。さらに警察は5月29日、事件を主導した疑いがあるとして、住居・職業不詳の益田和彦容疑者(48)を強盗殺人容疑で公開手配した。
警察は、益田容疑者が事件後の5月17日に成田空港から中国へ出国し、その後、東南アジア方面に移動した可能性があるとみている。
この事件の重さは、現場で逮捕された少年たちだけでは説明できない。
10代の高校生が住宅に入り、20代夫婦が指示役とされ、48歳の男が上位の主導役として海外へ逃げた疑いがある。若者を前面に出し、上位の人物が離れた場所から動かす。そこに、トクリュウ型犯罪の怖さがある。
白昼の住宅で何が起きたのか
事件は5月14日午前、栃木県上三川町の住宅で起きた。
住宅に複数人が押し入り、富山英子さんが襲われた。警察には「強盗です。家族がバールで殴られた」といった趣旨の110番通報が入ったとされる。
近くの防犯カメラには、目出し帽をかぶり、黒っぽい服装で、バールのようなものを持った人物の姿が映っていた。
逮捕された少年4人はいずれも16歳の高校生とされる。警察は、4人が実行役として住宅に侵入し、竹前夫婦が現場の外から指示を出していたとみている。
被害者は、自宅にいた69歳の女性だった。特別な施設でも、繁華街でもない。地方の住宅街にある民家が、突然、強盗殺人の現場になった。
益田和彦容疑者を公開手配 事件を持ちかけた中心人物か
警察が新たに公開手配したのは、益田和彦容疑者(48)だ。
益田容疑者は、竹前海斗容疑者、美結容疑者の夫婦側と接点があり、事件を持ちかけた中心人物とみられている。秘匿性の高い通信アプリを使い、被害者宅に関する情報を送っていた疑いもある。
さらに、事件前には神奈川県内のホームセンターでバールを購入し、竹前容疑者を通じて高校生らに渡った可能性があるとされる。
バールは、住宅に押し入るための道具であり、暴行にも使われた可能性がある。つまり、事件はその場の偶発的な犯行ではなく、道具、情報、実行役、指示役が事前に用意されていた疑いが強い。
益田容疑者は事件3日後の5月17日、成田空港から中国へ出国したことが確認されている。警察は、中国経由で東南アジア方面に逃亡した可能性があるとみて、海外当局と連携して行方を追っている。
竹前海斗容疑者もマニラ逃亡を図ったか
逃亡を図ったとみられるのは、益田容疑者だけではない。
指示役とされる竹前海斗容疑者も、事件後に韓国を経由してフィリピン・マニラ方面へ逃亡しようとしていたと報じられている。竹前容疑者は5月17日、羽田空港の国際線ターミナルで逮捕された。
ここで見えてくるのは、単なる逃げ足の速さではない。
事件後すぐに国外へ出る。
別々の空港を使う。
中国、韓国、東南アジア方面が逃亡先として浮上する。
この動きは、事件後の逃走まで想定していた可能性を示している。警察が調べるべきなのは、誰が航空券を取ったのか、誰が渡航先を決めたのか、海外側に受け入れ先があったのかという点だ。
高校生4人は「使い捨ての実行役」だったのか
今回の事件で最も強い衝撃を与えているのは、実行役とされる4人が16歳の高校生だった点だ。
トクリュウ型犯罪では、SNS上で「高額報酬」「簡単な仕事」「運ぶだけ」「受け取るだけ」といった言葉が使われることがある。最初は犯罪と分かりにくい形で近づき、身分証や個人情報を送らせ、後から逃げにくくする手口もある。
実行役は若い。
指示役は現場に出ない。
主導役は通信アプリ越しに動かす。
逮捕されるのは、最前線に置かれた少年たちだ。
高校生4人がどのように誘われたのかは、今後の捜査で明らかにされるべき重要な点だ。ただ、今回の事件では、16歳の少年たちが住宅へ入った一方で、上位にいたとみられる人物は海外へ逃げている。
ここに、トクリュウ型犯罪の残酷さがある。
少年たちは、金を得るための「仕事」に参加したつもりだったのかもしれない。だが、現場で起きたのは強盗殺人だった。被害者の命は戻らない。少年たちの人生も、事件前には戻らない。
トクリュウ型犯罪はなぜ止めにくいのか
トクリュウとは、匿名・流動型犯罪グループを指す。
固定した事務所や組織名を前面に出さず、SNSや知人関係を通じて人を集める。犯行ごとに実行役を替える。連絡には秘匿性の高いアプリを使う。現場に出る人間と、金や情報を握る人間が分かれている。
そのため、現場で少年らを逮捕しても、上位の指示役に届かないことがある。
栃木の事件では、実行役とされる高校生4人、指示役とされる竹前夫婦、さらに主導役とみられる益田容疑者が浮上した。警察はその先に、さらに別の関係者がいないかも調べる必要がある。
警察庁は、トクリュウ対策を強めている。楠芳伸長官は、栃木県の強盗殺人事件を念頭に、中核的人物の早期検挙と同種事件の発生防止に向け、全国警察を挙げた対策強化を求めた。
今回の事件は、実行役の逮捕だけでは終われない。被害者宅の情報を誰が持っていたのか。少年らを誰が集めたのか。凶器を誰が用意したのか。逃亡ルートを誰が整えたのか。そこまで追わなければ、同じ形の事件は繰り返される。
元警察関係者や専門家が見る危険性
元警察関係者や犯罪問題に詳しい識者は、トクリュウ型犯罪について、暴力団よりも摘発が難しい点を指摘している。
暴力団のように組織名や拠点が見えにくい。SNSで人を集め、事件ごとに実行役を替える。通信アプリを使い、指示役が現場に出ない。こうした特徴が、捜査を難しくしている。
犯罪ジャーナリストの石原行雄氏は、暴力団の弱体化や半グレ層の流動化を背景に、SNSで集められた若者が実行役として使われる流れを指摘している。
今回の事件は、その危険が最悪に近い形で表に出た事案だ。
高齢女性が自宅で殺害され、実行役とされるのは高校生4人。指示役夫婦の背後に48歳の主導役が浮上し、その男は事件3日後に海外へ出たとみられている。
これは、地方の住宅街で起きた1件の強盗殺人であると同時に、SNS時代の組織犯罪が家庭の玄関先まで来ていることを示している。
次に問われること
今後の焦点は、益田容疑者の身柄確保だけではない。
被害者宅の情報はどこから出たのか。
少年4人は誰に、どんな言葉で誘われたのか。
竹前夫婦は誰から指示を受けていたのか。
益田容疑者より上位の人物はいるのか。
海外逃亡を手助けした人物はいるのか。
これらが明らかにならなければ、事件の全容解明には届かない。
闇バイトの募集を見た若者は、そこで立ち止まれるのか。
家族や学校は、その異変に気づけるのか。
SNS事業者は、犯罪募集の投稿をどこまで止められるのか。
警察は、実行役ではなく中核人物までたどり着けるのか。
上三川町の事件は、被害者遺族だけでなく、社会にこの問いを突きつけている。
69歳の女性が自宅で命を奪われた。実行役とされるのは16歳の高校生4人。背後には、指示役夫婦と海外逃亡した疑いのある48歳の男がいる。
トクリュウ型犯罪は、遠い世界の話ではない。
次に狙われるのは、別の町の住宅かもしれない。
次に誘われるのは、別の学校の生徒かもしれない。
今回の事件を、単なる「闇バイト事件」で終わらせてはいけない。
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編集部まとめ
栃木県上三川町で5月14日、69歳の富山英子さんが自宅で殺害された強盗殺人事件では、実行役とされる16歳の高校生4人、指示役とされる竹前海斗容疑者と妻の美結容疑者が逮捕されています。
さらに警察は5月29日、事件を主導した疑いがあるとして、益田和彦容疑者(48)を公開手配しました。
益田容疑者は、竹前夫婦側と接点があり、秘匿性の高い通信アプリで被害者宅の情報を送っていた疑いがあります。事件前には神奈川県内のホームセンターでバールを購入し、竹前容疑者を通じて高校生らに渡った可能性もあります。
益田容疑者は事件3日後に成田空港から中国へ出国し、東南アジア方面へ逃亡した可能性があります。竹前海斗容疑者も韓国経由でフィリピン・マニラ方面へ逃亡しようとしていたとされます。
今後の焦点は、益田容疑者の身柄確保、被害者宅情報の入手経路、少年4人の勧誘方法、竹前夫婦の上位にいる人物の有無、海外逃亡を支援した関係者の存在です。
事件のポイントQ&A
Q1. 栃木・上三川町の強盗殺人事件で何が起きたのですか?
5月14日、栃木県上三川町の住宅で、住人の富山英子さん(69)が殺害されました。実行役とされる16歳の高校生4人、指示役とみられる竹前海斗容疑者と妻の美結容疑者が逮捕されています。
Q2. 益田和彦容疑者はなぜ公開手配されたのですか?
警察は、益田容疑者が事件を主導した疑いがあるとして、強盗殺人容疑で公開手配しました。竹前夫婦側と接点があり、被害者宅の情報を伝えた疑いや、凶器とみられるバールの準備に関わった疑いがあります。
Q3. 益田容疑者はどこへ逃げたとみられていますか?
益田容疑者は事件3日後の5月17日に成田空港から中国へ出国し、その後、東南アジア方面へ移動した可能性があるとみられています。
Q4. 竹前海斗容疑者も逃亡しようとしていたのですか?
竹前海斗容疑者は、事件後に韓国を経由してフィリピン・マニラ方面へ逃亡しようとしていたと報じられています。5月17日、羽田空港の国際線ターミナルで逮捕されました。
Q5. なぜトクリュウ型事件といわれるのですか?
SNSや知人関係で実行役を集め、秘匿性の高い通信アプリで指示し、犯行ごとに人を入れ替える点が、匿名・流動型犯罪グループ「トクリュウ」の特徴と重なるためです。
Q6. 今後の焦点は何ですか?
益田容疑者の逮捕、少年4人の勧誘経路、被害者宅情報の入手先、凶器準備の流れ、竹前夫婦の上位にいる人物の有無、海外逃亡を支援した関係者の存在が焦点です。

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