「2つのアルバイトのスケジュールがタイトで、精神的につらかった。ストレス解消だった」
そんな身勝手な理由で、命を守るための非常停止ボタンを繰り返し押したとされる男が逮捕された。
偽計業務妨害の疑いで逮捕されたのは、東京・瑞穂町に住むアルバイト、竹下志郎容疑者(51)。
竹下容疑者は3月4日夜、瑞穂町内にあるJRの踏切3か所で非常停止ボタンを相次いで押し、列車の運行を妨害した疑いが持たれている。
約20分で3か所を移動
警視庁によると、竹下容疑者はアルバイトを終えて帰宅する途中、最初の踏切で非常停止ボタンを押した。
その約5分後には、およそ200メートル離れた別の踏切へ移動。さらに約800メートル先でも、同じ行為を繰り返したとされる。
一連の行為は、およそ20分の間に行われたという。
緊急事態が起きたわけではない。場所を変えながら、命を守る装置を3回も作動させた疑いだ。
指にティッシュ 指紋を残さないためか
竹下容疑者は、非常停止ボタンを押す際、指にティッシュペーパーを巻いていたとみられている。
警視庁は、指紋を残さないためだった可能性があるとみて調べている。
本当に衝動だけで行ったのか。踏切を移動しながら繰り返し、痕跡まで隠そうとした疑いがある以上、悪質と言わざるを得ない。
「3回目は慣れて緊張しなかった」
竹下容疑者は容疑を認めているという。
当時、警備員など2つのアルバイトを掛け持ちしており、「スケジュールに追い込まれてイライラしていた」「精神的につらかった。ストレス解消だった」などと供述している。
さらに、「1回目は緊張したが、3回目は慣れて緊張しなかった」とも話しているとされる。
最初に後ろめたさを感じながら、それでも2回目、3回目と繰り返した。仕事のつらさを持ち出しても、到底正当化できる行為ではない。
命を守る装置を“気晴らし”に悪用
非常停止ボタンが押されたことで、列車の運行に遅れが発生し、多くの利用者に影響が出た。
踏切の非常停止ボタンは、人や車が線路内に取り残された場合など、重大事故を防ぐための装置だ。
それを自分の感情を晴らすために押したとすれば、単なるいたずらでは済まされない。
本人にとっては数秒の“気晴らし”でも、乗客は帰宅や約束、乗り換えの時間を奪われる。鉄道職員には安全確認と運行調整の負担が生じる。何の関係もない人々を巻き込んだ、あまりにも身勝手な行為だ。
豊橋駅なら複数路線の乗り換えに波及
今回の事件は東京都内で起きたが、鉄道利用者の多い愛知県や東三河でも人ごとではない。
豊橋駅には東海道新幹線、JR東海道線、飯田線、名鉄名古屋本線、豊橋鉄道渥美線などが集まっている。いずれかの列車に遅れが出れば、名古屋方面への通勤や通学だけでなく、新幹線や飯田線、渥美線への乗り換えにも影響が広がりかねない。
名鉄とJRが並行して名古屋方面への輸送を支える東三河では、わずかな運行障害でも駅や車内の混雑につながる。
非常設備の悪用は「少し電車を止めただけ」ではない。地域の移動を支える仕組み全体を、自分勝手な感情で乱す行為だ。
命を守る設備を感情のはけ口に
踏切の非常停止ボタンは、人や車が線路内に取り残された際に列車へ危険を知らせるための装置だ。仕事の負担やストレスを理由に悪用することは、無関係の乗客や鉄道職員を巻き込み、公共交通の安全を揺るがす。豊橋駅のように新幹線、JR、名鉄、豊橋鉄道が接続する駅では、一つの運行障害が複数路線の乗り換えへ波及する可能性もある。
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