ANA機長(44)に懲役1年8月の実刑 同僚CAへの不同意わいせつ、東京地裁が無罪主張退ける

同僚の女性客室乗務員への不同意わいせつ罪でANAの男性機長に懲役1年8月の実刑判決が言い渡された東京地裁の裁判

同僚の女性客室乗務員にわいせつな行為をしたとして、不同意わいせつ罪に問われた全日本空輸(ANA)の男性機長(44)に対し、東京地裁は7月14日、懲役1年8月の実刑判決を言い渡した。

検察側の求刑は懲役2年6月。被告側は身体に触れた行為の一部を認める一方、「同意があったと認識していた」と無罪を主張していたが、裁判所は退けた。

大川隆男裁判官は、機長としての立場が被害女性に心理的な圧力を与え、拒絶しにくい状況を生んだと認定。犯行態様や被害結果に加え、被告に十分な反省が見られないとして、執行猶予を付けない実刑が相当と判断した。

初対面の女性CAに複数回接触

事件は2023年10月10日未明、高松市内で起きた。

被告と被害女性は、同日の羽田発高松行きの便で初めて一緒に勤務した。乗務後、ほかの同僚を交えて会食し、宿泊先のホテルへ戻る途中に被害が起きたとされる。

判決によると、被告は横断歩道やコンビニ、ホテルのエレベーターなどで、女性の尻を衣服の上から触るなどの行為を複数回繰り返した。

裁判所は、一度きりの偶発的な接触ではなく、場所を変えながら行為が続いた点を重く見た。

「業務に不利益が及ぶ」と意識させたと認定

裁判では、機長と客室乗務員の職務上の関係が大きな争点となった。

検察側は、被告が機長としての立場を背景に、女性へ「拒めば今後の業務に影響するかもしれない」と意識させ、抵抗しにくい状況を作ったと主張した。

裁判所も、直接的な人事権の有無だけでなく、航空機内で強い権限と責任を持つ機長という立場が、女性の判断や行動に心理的な影響を与えたと認めた。

女性の証言については、内容に不自然な点がなく、被害を誇張する動機も見当たらないとして信用性を認定した。

被告側は「同意があると思った」と無罪主張

被告側は、女性の身体に触れた行為の一部を認めたものの、会食中に会話が弾んだことなどから、接触を受け入れてもらえると思っていたと説明した。

さらに、機長には女性を直接評価する権限がなく、拒否できないほどの上下関係はなかったと反論した。

しかし東京地裁は、初対面だったことや行為が複数回に及んだこと、女性が積極的に接触を受け入れたと判断できる事情がないことから、「同意があったと認識していた」とする主張を認めなかった。

被害女性はPTSDを発症、現在も休職

被害女性は被害者参加制度を利用し、公判で意見を述べた。

事件後に心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症し、現在も休職していると説明。「人生を壊された」と強い苦痛を訴え、被告への厳しい処罰を求めた。

客室乗務員として働き続けることが困難になった被害結果も、量刑判断の重要な要素となった。

ANAは一時乗務を外すも約2カ月後に復帰

ANAは事件発覚後、社内調査を実施し、被告を一時的に乗務から外した。

ハラスメント防止に関する研修などを課した上で、約2カ月後には機長業務へ復帰させていたとされる。

会社側は再発防止に取り組む姿勢を示しているが、被害女性が現在も休職する一方、被告を比較的短期間で乗務へ戻した判断については、今後も説明が求められる。

機長という立場を利用した犯行と判断

今回の判決では、勤務時間外の行為であっても、職場内の立場や権限が相手の意思表示に影響した場合、不同意の判断で重視されることが示された。

東京地裁は、複数回にわたる行為、被害女性が受けた深刻な精神的被害、被告の反省状況を踏まえ、懲役1年8月の実刑を選択した。

被告側が控訴するかどうかは、現時点で明らかになっていない。

週刊TAKAPI編集部/成田

特記事項:本記事は、東京地裁の判決内容、公判で示された検察側・弁護側の主張、被害女性の意見陳述、ANAの説明を基に構成しています。判決は第一審であり、控訴された場合は上級審で改めて審理されます。

編集部まとめ

東京地裁が重視したのは、単に身体へ触れたという事実だけではない。機長という立場が女性に心理的な圧力を与え、拒絶しにくい状況を生んだ点だった。

被告側は「同意があると思った」と主張したが、初対面の同僚に対して行為を繰り返した経緯や、女性の証言内容から退けられた。

被害女性はPTSDを発症し、今も職場へ戻れていない。航空業界に限らず、職場の力関係を背景にした性加害へ、企業がどこまで迅速かつ厳格に対応できるかも問われている。

QANA機長にはどのような判決が言い渡されましたか。
A東京地裁は7月14日、不同意わいせつ罪に問われたANAの男性機長(44)に、懲役1年8月の実刑判決を言い渡しました。検察側の求刑は懲役2年6月でした。
Q事件はいつ、どこで起きましたか。
A2023年10月10日未明、高松市内の横断歩道やコンビニ、宿泊先ホテルのエレベーターなどで起きたとされています。
Q裁判所はなぜ不同意と判断したのですか。
A機長としての立場が女性に心理的な圧力を与え、業務上の不利益を意識させることで、拒絶しにくい状況を生んだと判断しました。
Q被告側はどのように主張しましたか。
A身体に触れた行為の一部を認めながら、「同意があったと認識していた」として無罪を主張しました。
Q被害女性は現在どうしていますか。
A事件後にPTSDを発症し、現在も休職していると公判で明らかにしています。

記事要点

東京地裁は7月14日、同僚の女性客室乗務員への不同意わいせつ罪に問われたANAの男性機長(44)に、懲役1年8月の実刑判決を言い渡した。

裁判所は、機長という職務上の立場が女性に心理的な圧力を与え、拒絶しにくい状況を生んだと認定。被告側の「同意があったと認識していた」との無罪主張を退けた。

被害女性は事件後にPTSDを発症し、現在も休職している。ANAは事件発覚後に被告を一時乗務から外したが、約2カ月後に機長業務へ復帰させていた。

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