高校通算140本塁打を誇る“怪物スラッガー”佐々木麟太郎が、ついに進路を決めた。
選んだのは、福岡ソフトバンクホークスではなく、MLBドラフト8巡目・全体235位で指名したマイアミ・マーリンズだった。
日本ではドラフト1位。米国では全体235位。
数字だけを比べれば、ソフトバンクの方が圧倒的に高い評価に見える。それでも佐々木は、整備されたNPBの育成環境ではなく、マイナーリーグからメジャーを目指す道を選んだ。
これは単なる「米国でプレーしたい」という憧れではない。
高校卒業後にスタンフォード大学へ進んだ時点から続いてきた、自分の力でMLBへの道を切り開くという覚悟の最終回答だ。
スタンフォード2年目で一気に評価を上げた
佐々木は花巻東高校時代、高校通算140本塁打を記録。卒業後はNPBへ直行せず、米国の名門スタンフォード大学へ進学した。
大学1年目は7本塁打、OPS.790。米国の投手、生活、言語、大学野球の環境に適応しながら、2年目には大きく数字を伸ばした。
今季は打率.262、16本塁打、47打点、OPS.952。
特に注目したいのは、本塁打数だけではない。50三振に対して45四球を選び、長打力と選球眼を両立させた。
ただ振り回すだけのパワーヒッターではなく、相手投手にストライクゾーンで勝負させる打者へ進化したのだ。MLB公式も、佐々木が2年目に16本塁打、OPS.952を記録し、三振数に迫る四球を選んだ点を紹介している。
約140メートル弾でスカウトの視線を奪う
ドラフト前のコンバインでも、そのパワーは際立っていた。
最速打球速度は115.4マイル、約186キロ。さらに458フィート、約140メートルの特大弾を放ち、MLB球団のスカウトに強烈な印象を残した。
打球速度だけなら、メジャーの強打者と比較されてもおかしくない水準だ。
マーリンズの担当者も、佐々木の最大の魅力として簡単には手に入らない規格外のパワーを挙げている。球団が全体235位で指名したのは、完成された即戦力というより、長打力を軸に大きく化ける可能性を買ったからだ。
「8巡目=高評価」ではない。それでも価値は大きい
冷静に見れば、8巡目・全体235位はMLBドラフトの上位指名ではない。
佐々木より先に234人が指名されている。ドラフト順位だけで見れば、球団内で優先的に育成されることが保証された立場でもない。
それでも、マーリンズがこの順位で佐々木を確保した意味は小さくない。
MLBドラフトでは、能力だけでなく、契約の可能性、守備位置、大学残留の選択肢、各球団の契約金配分まで含めて指名順位が決まる。
一塁手は、遊撃手や中堅手以上に打撃結果を求められるポジションだ。守備で評価を補いにくいため、打てなければ序列はすぐに下がる。
つまり、佐々木が評価された最大の理由は明確だ。
バット一本で、試合を変えられる可能性がある。
ソフトバンク1位より険しい道を選んだ理由
ソフトバンクはNPBドラフト1位で佐々木を指名し、球団施設の見学などを通じて獲得への強い熱意を示してきた。
国内最高水準のトレーニング設備、充実したサポート体制、安定した待遇。日本でプロ生活を始めるなら、これ以上ない環境の一つだった。
それでも佐々木が選んだのは、マーリンズだった。
マイナーリーグでは、長距離移動、慣れない生活、厳しい昇格争いが待っている。大学時代の実績も、高校通算140本塁打という看板も、プロ入り後の打席では助けてくれない。
結果を出せなければ、翌年には新たなドラフト選手や中南米の有望株が入ってくる。
佐々木は、その競争へ自ら飛び込む。
目先の待遇ではなく、最初から米国の評価基準の中でメジャーを目指すことを優先したと考えるのが自然だ。
契約金は約3800万円規模か
全体235位の契約金は、指名順位に設定された基準額から、約3800万円規模になるとみられている。
ただし、これは現時点での確定額ではない。
実際の契約金はマーリンズとの交渉で決まり、正式契約が完了するまでは変動する可能性がある。
ソフトバンクのドラフト1位であれば、契約金や年俸を含め、より高い条件が提示される可能性が高かった。
それでもマーリンズを選ぶなら、佐々木が見ているのは最初の契約金ではない。
メジャーへ昇格し、そこで本塁打を打ち、長期的に評価を勝ち取る未来だ。
マーリンズは佐々木に合うのか
マーリンズは、資金力でスター選手を集める球団ではない。
若手を育成し、戦力として起用しながらチームをつくる傾向が強い。過去にはジャンカルロ・スタントン、クリスチャン・イエリチ、マーセル・オズナらが球団組織から成長した。
若手にチャンスが巡りやすい点は、佐々木にとって好材料だ。
一方で、「若手を使う球団」と「簡単にメジャーへ上がれる球団」は同じではない。
佐々木は一塁手として、圧倒的な打撃結果を求められる。
木製バットへの完全適応、速球への対応、左投手攻略、守備力、長いシーズンを戦う体力。大学野球とは比較にならないほど細かく弱点を分析される。
特にマイナーでは、一度見つかった弱点を徹底的に攻められる。
そこで修正できるかどうかが、メジャー昇格を左右する。
大谷翔平と同じではない。だから面白い
佐々木は、大谷翔平と同じ花巻東高校出身だ。
父・佐々木洋監督は、大谷を高校時代に指導した人物でもある。そのため佐々木は、早い段階から「大谷の後輩」として注目されてきた。
ただし、両者が歩んだ道は違う。
大谷は日本ハムで二刀流を完成させてからMLBへ渡った。佐々木はNPBを経由せず、米国の大学からMLB傘下へ入ろうとしている。
佐々木が選んだのは、大谷と同じ道ではない。
大谷が開いた扉の先で、自分だけのルートをつくる挑戦だ。
将来、マーリンズの佐々木とドジャースの大谷がメジャーの舞台で対戦すれば、花巻東から続く新たな物語になる。
だが、その光景へたどり着くには、まずマイナーで結果を残さなければならない。
本当の勝負は正式契約後から始まる
佐々木がマーリンズ入りを決断したとしても、アメリカンドリームはまだ始まっていない。
正式契約を終え、傘下球団へ配属され、木製バットでプロの投手と対戦してからが本番だ。
8巡目指名の選手には、失敗を待ってくれる長い猶予があるとは限らない。
打てなければ評価は下がる。
守れなければ出場機会は減る。
故障すれば、同じポジションの選手に追い越される。
それでも佐々木は、安全な道ではなく、自分が最も望んだ場所へ向かうことを選んだ。
高校通算140本塁打の怪物が、米国でどこまで通用するのか。
長打力は本物なのか。
全体235位からメジャーの主砲へ這い上がれるのか。
佐々木麟太郎のアメリカンドリームは、ここから始まる。
週刊TAKAPI編集部/黒木
特記事項: 本記事はユーザー提供情報、MLBドラフトの公表情報、球団関係者の説明、スタンフォード大学での成績を基に構成しています。マーリンズは佐々木麟太郎を8巡目・全体235位で指名していますが、正式契約の成立については球団または本人側の最終発表を確認する必要があります。契約金などは交渉によって変動する可能性があります。
編集部まとめ
佐々木麟太郎は、ソフトバンクからのNPBドラフト1位指名ではなく、マーリンズからのMLBドラフト8巡目・全体235位指名を選び、米球界へ挑戦する意向を固めました。スタンフォード大学2年目に16本塁打、OPS.952まで成績を伸ばし、ドラフト前には約140メートルの特大弾も披露しています。ただし、8巡目は決してメジャー昇格が保証される順位ではありません。NPBより厳しく不安定な環境へ進む決断だからこそ、佐々木の長打力、適応力、修正力が本格的に試されます。
記事要点
佐々木麟太郎はソフトバンクのNPBドラフト1位ではなく、マーリンズからのMLBドラフト8巡目・全体235位指名を選び、米球界へ挑戦する意向を固めました。スタンフォード大学で成績を大きく伸ばし、規格外の長打力と選球眼を示した一方、8巡目からのメジャー昇格は簡単ではありません。正式契約後はマイナーで結果を積み重ね、全体235位という評価を自ら覆せるかが最大の焦点になります。
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