プルデンシャル生命保険とジブラルタ生命保険の営業社員・元営業社員による不適切な金銭取り扱い問題で、プルデンシャル・グループは7月24日、新たな申し出のうち顧客125人、約7億9000万円を補償対象としたと発表した。
内訳はプルデンシャル生命が101人・約6億2000万円、ジブラルタ生命が24人・約1億7000万円。1月16日以降に申し出があり、7月8日までに審査を終えた365人のうち、240人は補償対象と認定されなかった。補償対象となった主な事案は、営業社員らによる金銭貸借、投資勧誘、投資先の斡旋だった。
1月に公表されたプルデンシャル生命の事案は、社員・元社員106人が顧客498人から計約30億8000万円を受け取ったというものだった。今回の約7億9000万円を単純に加えると、問題となった金額は約38億7000万円規模となる。
ただし、約30億8000万円は顧客から受け取った金額、今回の約7億9000万円は新たな申し出に対して認定された補償額であり、集計基準は同じではない。現段階で会社が「被害総額約39億円」と公式に確定したわけではない点には注意が必要だ。
追加で125人を補償対象に認定
7月24日の発表によると、1月16日以降にプルデンシャル生命とジブラルタ生命へ寄せられた申し出のうち、審査を終えたのは365人だった。
このうち125人・約7億9000万円が補償対象となった。残る240人には、社員からすでに全額返金を受けていたケース、投資先を紹介されたものの実際には送金していなかったケース、事実確認に必要な資料が提出されなかったケースなどが含まれる。
補償対象外という判断は、申し出た顧客の主張が一律に否定されたことを意味しない。補償を求めない意向を示した人や、すでに返金を受けた人も含まれている。
1月公表分では498人・約30.8億円
プルデンシャル生命は1月、社員・元社員による不適切な金銭取り扱いについて、実人数106人が顧客498人から計約30億8000万円を受け取っていたと公表した。
内訳は、投資話やもうけ話を持ちかけて受け取った金銭が約25億2000万円、個人的な金銭貸借や社内規程違反に当たる金銭の取り扱いが約5億6000万円だった。
このうち、社員らから顧客へ返金された金額は約7億9000万円で、差額は約22億9000万円とされていた。行為は1990年代から長期にわたり、架空の金融商品、仮想通貨、ファクタリング投資、高利回りをうたう案件など、複数の形で行われていた。
69人が保険以外の投資商品を240人に紹介
問題は、社員が直接金銭を受け取ったケースだけではない。
1月の調査では、社員・元社員69人が、社内規程で取り扱いを認められていない投資商品や事業者を顧客240人へ紹介していたことも判明した。
顧客が紹介先へ支払った金額は、社員の在職中の紹介分が約9億7000万円、退職後の紹介分が約3億4000万円で、計約13億1000万円に上った。
7月8日時点では、この240人のうち158人・約5億1000万円が補償対象となり、22人・約2億9000万円は補償対象外、40人・約2億6000万円は審査や対応が続いている。
「紹介代理店制度」や紹介エージェント型営業に疑惑の目
今回の問題を巡っては、社員個人の不正だけでなく、顧客紹介を軸に広げてきた営業構造そのものにも疑惑の目が向けられている。
プルデンシャル生命は、ライフプランナーが身近な人への提案から活動を始め、顧客からの紹介によって新たな顧客層を広げる営業モデルを公式に説明している。経験を積むほど紹介が広がり、顧客層や提案内容が変化していくことも、同社の採用ページに記載されている。
一部で「紹介代理店制度」や「紹介エージェント制度」と呼ばれている仕組みについて、会社の公開資料では同じ名称の正式制度を確認できない。
しかし、紹介者、ライフプランナー、顧客の関係が個人間の信頼を軸に深まる営業構造が存在することは確認できる。
紹介によってつながった顧客は、保険会社そのものより、紹介者や担当ライフプランナー個人を信用する場合がある。関係が強くなるほど、保険契約とは無関係の投資話や金銭貸借を持ちかけられても、「信頼できる人からの話」と受け止めてしまう危険がある。
通常の保険代理店であれば、募集管理、契約管理、手数料、責任主体が比較的明確になる。一方、紹介者が見込み客をつなぎ、実際の説明や契約はライフプランナーが担う形では、紹介後の接触や個人的な相談まで会社がどこまで把握していたのかが見えにくい。
「紹介しただけ」の人物、「契約を担当した」ライフプランナー、「信用して金銭を渡した」顧客の間で、誰がどの段階まで責任を負うのかが曖昧になれば、不正の発見は遅れる。
紹介型営業そのものが直ちに不正を生むわけではない。しかし、顧客との関係が担当者個人へ過度に集中し、本社や管理職の監督が届かなくなっていたのであれば、制度と運用の双方を検証する必要がある。
会社も営業制度と組織風土の問題を認める
プルデンシャル生命は、不適切行為の原因を一部社員の資質だけに求めていない。
1月の公表では、営業管理職による活動管理や本社部門のけん制が不十分だったことに加え、営業成績に強く連動する報酬制度、収入の不安定さ、高業績者を評価する組織風土など、営業諸制度に不適切行為のリスクが内在していたと説明した。
同社は報酬・表彰制度、営業活動の管理、採用や教育、本社による顧客確認などの見直しを進めている。7月の発表では、営業現場から独立した販売監督体制を整備し、顧客対応に関わる業務を統括する「カスタマーオフィス」を立ち上げたことも明らかにした。
また、2025年度決算では、影響を受けた可能性がある顧客への補償費用として、約47億円を特別損失に計上した。これは確定した補償総額ではなく、現時点で予想される支払額の見積もりとされている。
名古屋に支社が集中する東海地方も注視
東海地方の被害人数や金額について、会社側は地域別内訳を公表していない。このため、愛知県や静岡県で具体的に何人の被害が確認されているかは分からない。
一方、プルデンシャル生命は名古屋市内に複数の支社を置き、静岡県内にも営業拠点を展開している。東海地方が重要な営業地域の一つであることは、拠点配置からも明らかだ。
ただし、支社数の多さだけを根拠に、東海地方で被害が多いと断定することはできない。
確認すべきなのは、過去に担当者や紹介者から、生命保険とは別の投資話、元本保証をうたうもうけ話、個人的な金銭貸借、会社名義ではない口座への振り込みを持ちかけられた経験がないかという点だ。
会社は、生命保険以外の金融商品の販売、社員による個人的な投資勧誘、顧客との金銭貸借を禁止している。契約者でない人や、すでに契約を解約した人についても、心当たりがあれば申し出るよう呼びかけている。
契約者が確認しておくべきこと
担当者や元担当者から保険以外の話を持ちかけられていた場合は、やり取りを改めて確認する必要がある。
特に注意が必要なのは、次のようなケースだ。
担当者個人へ現金を渡した
会社名義ではない口座へ送金した
「社員しか購入できない」と説明された
元本保証や高利回りを約束された
保険と無関係の投資先や事業者を紹介された
担当者や紹介者へ金銭を貸した
契約書のないまま金銭を預けた
プルデンシャル生命は2005年5月以降、顧客から現金を預かる取り扱いを行っていないとしている。金額が少ない場合や、勧誘を断って実際に送金していない場合でも、会社は情報提供を求めている。
編集部まとめ
今回、新たに125人・約7億9000万円が補償対象となったことで、1月の大規模調査後も被害の申し出が続いている実態が明らかになった。
約30億8000万円と約7億9000万円を単純に足せば約38億7000万円となるが、前者は受領額、後者は新規申し出に対する補償認定額であり、同じ基準の「被害総額」ではない。
一方で、直接金銭を受け取った事案だけでなく、69人が240人へ未承認の投資商品や業者を紹介していた事実は重い。
問われているのは、一部社員の犯罪的行為だけではない。顧客紹介を軸にした営業モデル、担当者個人へ信頼が集中する関係、業績を重視した報酬制度、本社や管理職による監督の弱さが、長期間の不正を見逃す土壌になっていなかったかという点だ。
紹介型営業の強みは、人と人との信頼にある。
しかし、その信頼が会社の管理を離れ、保険とは無関係の投資や金銭貸借に使われたとき、強みはそのまま大きなリスクに変わる。
補償を進めるだけでは、信頼は戻らない。紹介者、ライフプランナー、会社の責任範囲を明確にし、顧客との接触を組織として把握できる仕組みへ改められるかが、再発防止の焦点となる。
週刊TAKAPI編集部/成田
特記事項:本記事はプルデンシャル・グループが2026年7月24日までに公表した資料などを基に構成しています。「紹介代理店制度」「紹介エージェント制度」という名称は公開資料上の正式名称として確認できないため、顧客紹介を軸とする営業構造への疑惑・検証課題として記載しています。東海地方の被害件数と金額は公表されておらず、地域別の被害規模を断定するものではありません。
問われるのは個人の不正だけではない
今回の問題では、新たに125人・約7.9億円が補償対象となり、1月の調査後も申し出が続いていることが明らかになった。焦点は一部社員による金銭不正だけではない。顧客紹介を軸に担当者個人へ信頼が集中する営業モデル、業績と連動した報酬制度、本社や管理職による監督の弱さが、長期間の不正を見逃す背景にならなかったかが問われている。紹介型営業の強みである人間関係が会社の管理を離れたとき、大きなリスクへ変わる。補償と並行して、紹介者、営業社員、会社の責任範囲を明確にする必要がある。
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