愛知県犬山市の入鹿池に航空自衛隊のT-4練習機が墜落し、隊員2人が死亡した事故について、航空幕僚監部は7月31日、事故調査結果を公表した。
調査で示されたのは、機体を墜落させた単一の原因ではなく、速度や高度の確認、操縦操作、後部座席へ持ち込まれた物品など、複数の要因が連続して影響した可能性だった。
一方、事故機には飛行記録装置が搭載されておらず、池から回収された部品も大きく損傷していた。空自は、墜落を決定づけた直接的な原因については特定できなかったとしている。
離陸後の上昇中に速度と高度の管理が崩れた可能性
事故は2025年5月14日午後3時8分ごろに発生した。
新田原基地所属のT-4は、名古屋飛行場を午後3時6分に離陸。宮崎県の新田原基地へ戻る途中、離陸から2分足らずで入鹿池に墜落した。
空自の解析では、前部座席の操縦者が離陸前にトランスポンダーの設定を失念し、上昇中に設定作業を行った可能性がある。
その作業や進行方向の調整に注意が向いた結果、速度計や高度計の確認が不十分になり、規定速度を超過したまま指定高度を通り過ぎた可能性が示された。
さらに、指定高度へ戻すための操作によって、機内に通常より重力がかからない状態が生じた可能性もあるという。
後部座席に持ち込まれた装備品
事故機の後部座席には、定期修理のため工場へ搬入されたF-15戦闘機の操縦者が搭乗していた。
この操縦者は、F-15の射出座席に収納されるサバイバル・キットを基地へ持ち帰るため、T-4の操縦席内へ持ち込んでいた。
調査では、機体にかかる重力が一時的に小さくなったことでキットを保持できなくなり、後部座席側の操縦桿に干渉した可能性が指摘された。
その結果、機体が意図しない降下姿勢に入り、操縦者による姿勢回復の操作も妨げられた可能性がある。
ただし、これはレーダー記録や飛行解析などから組み立てられた事故経過の一つであり、実際にキットが操縦桿へ接触したことが確定したわけではない。
高度約1280メートルから急激に降下
事故機は午後3時7分40秒、管制機関に対し、高度約1220メートルへ到達したと報告した。
しかし、その3秒後に出された管制指示には応答しなかった。
小牧基地のレーダーでは、午後3時7分44秒に高度約1280メートルまで上昇した後、4秒後には約1160メートルへ降下。午後3時7分52秒、高度約800メートルを最後に航跡が消えた。
空自は、午後3時7分59秒ごろに入鹿池の水面へ衝突したと推定している。機体やエンジン、操縦系統について、事故につながる異常は確認されなかった。
個人の操作だけでなく、部隊の管理体制も対象に
調査では、操縦者の操作だけでなく、サバイバル・キットを操縦席へ持ち込むことになった部隊側の管理も検証された。
当時、機体の定期修理に伴って装備品を運ぶ際の手段や判断基準が部隊内で統一されておらず、担当者によって輸送方法の判断が異なる状態だったという。
空自は再発防止策として、操縦系統に干渉する可能性がある物品を操縦席へ持ち込むことを禁止した。
装備品の輸送方法を明確にするほか、基本的な操縦手順、乗員同士の確認、低高度・高速域での訓練、脱出判断に関する教育も徹底するとしている。
編集部まとめ
今回の調査では、操縦中の確認不足と機内へ持ち込まれた物品が連鎖し、機体の急降下につながった可能性が示された。
一方、飛行記録装置がなく、直接的な原因は最後まで特定できなかった。事故で浮かび上がった運用上の問題を、再発防止策として現場へ定着させられるかが今後の焦点となる。
週刊TAKAPI編集部/一条
特記事項:航空幕僚監部が2026年7月31日に公表した事故調査結果を基に構成した。操縦操作、サバイバル・キットの移動、操縦桿への干渉については調査で示された可能性であり、確定した事故原因ではない。
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