札幌市教委、いじめ重大事態の調査開始10件を初公表 新ガイドライン運用後、学校の報告増える

札幌市教育委員会が、新ガイドライン運用後にいじめ重大事態に該当する可能性があるとして調査開始を公表した案件が10件あったことを伝える週刊TAKAPIの報道アイキャッチ

札幌市教育委員会は8月10日、いじめの「重大事態」に該当する可能性があるとして調査を始めた案件について、新たなガイドラインの運用開始後、保護者などの同意を得て公表できるものが10件あったと明らかにしました。

対象はガイドライン運用開始から7月末までに学校から報告された案件です。10件とは別に、調査開始について保護者などの同意が得られず、公表されていない案件もあるということです。

札幌市は2026年5月、いじめ重大事態の調査手順や調査結果の公表方法などを定めた独自ガイドラインを策定しています。市の公式ページでも現在、本書と概要版、調査開始時の公表資料が公開されています。

小中学校で暴力・暴言、器物破損、仲間外れなど

札幌市教委によると、今回公表された10件は小学校と中学校で起きた事案です。

暴力や暴言、器物破損、仲間外れなどが疑われ、いじめ重大事態に該当する可能性があるとして調査が始まっています。

ここで注意が必要なのは、10件すべてについて現段階で「重大ないじめが確認された」と結論づけられたわけではないことです。

重大事態に当たる可能性を早い段階で拾い上げ、事実関係を調べるために調査へ移行した案件が10件公表された、という位置付けです。

1月に「重大事態の可能性」ありながら未調査の事例判明

札幌市が対応を改めた背景には、2026年1月、いじめ重大事態に該当する可能性が高かったにもかかわらず、必要な調査が実施されていなかった事例が明らかになったことがあります。

市教委はその後、重大事態を見逃さず、調査開始から結果公表までの対応を明確にするため、5月18日に新たなガイドラインを示しました。

札幌市は同日、いじめ防止の基本方針も改定しています。市は、いじめの認知件数増加などを背景に、子どもの権利を踏まえた対応体制を強化する方針を示しています。

欠席3~5日の段階で市教委へ報告 判断を早める

新たな運用では、長期間の欠席に至るまで学校側だけで状況を見るのではなく、連続欠席が3~5日程度となった早い段階から市教委へ報告するよう求めています。

重大事態に該当する可能性を学校内部だけで判断せず、市教委と共有しながら早期に検討する狙いがあります。

従来よりも早い段階で案件が市教委へ上がる仕組みに変わったことで、今回の10件という数字も、単純に「いじめが急増した」と読むことはできません。

過去は年間2~4件 今回は運用開始から7月末までに10件

札幌市がこれまで年度単位で公表してきたいじめ重大事態は、2020年度から2024年度まで各年度2~4件でした。

これに対し、新ガイドラインの運用開始から7月末までに、同意を得て調査開始を公表した案件は10件に上っています。

市教委児童生徒担当課は、ガイドラインによって判断の視点を細かく示したことで、学校側が重大事態の可能性をより早く捉えるようになったとの認識を示しています。

つまり、数字の増加は「いじめそのものが短期間で増えた」というより、これまで学校内でとどまっていた可能性のある事案まで早期に報告・調査対象として拾う運用へ変わった影響を含んでいます。

札幌市がガイドラインを設けた目的も、重大事態調査の手順や専門家と学校の役割、児童生徒への支援を明確化し、調査を円滑に進めることにあります。市議会でも策定段階から、重大事態調査の長期化などが課題として説明されていました。

同意が得られなかった案件数は非公表

今回の「10件」には、もう一つ重要な留意点があります。

公表されたのは、調査開始について保護者などから同意が得られた案件です。

同意が得られず、公表対象となっていない案件もあるため、新ガイドライン運用後に市教委が把握した重大事態候補の総数が10件という意味ではありません。

市教委は、同意を得られなかった案件の件数については明らかにしていません。

このため、今後公表される数字を見る際も、「公表件数」と「市教委が把握・検討している案件全体」を区別する必要があります。

調査結果も公表へ 今後は毎月件数を更新

市教委は今後、各案件について事実関係を調査し、結果を報告書にまとめます。

保護者などの同意が得られた案件では、調査報告書についても公表する方針です。

札幌市は今後、いじめ重大事態調査の開始件数を毎月末ごろをめどに市のホームページで公表するとしています。

市の公式ページでは、重大事態調査検討委員会の情報に加え、ガイドラインや調査報告書を公開する仕組みがすでに整備されています。

編集部まとめ

札幌市で公表された10件は、単純な「いじめ重大事態の急増」を意味する数字ではありません。新ガイドラインによって学校が早期に市教委へ報告し、重大事態の可能性がある段階から調査する運用へ変わった結果を含みます。一方、公表されていない案件もあるため、今後は件数だけでなく、調査結果と学校側の初動が実際に改善したかを継続して見る必要があります。

週刊TAKAPI編集部/松本

特記事項

今回公表された10件は、保護者などの同意を得て調査開始が公表された案件であり、10件すべてについて「いじめ重大事態」との最終判断が確定したことを意味しません。また、同意が得られず公表されていない案件もあります。札幌市のガイドライン、基本方針などの公表資料と、市教委が明らかにした内容を区別して整理しています。

Q札幌市でいじめ重大事態の調査は何件始まったのですか?
A新ガイドラインの運用開始から2026年7月末までに、保護者などの同意を得て公表された調査開始案件は10件です。同意が得られず公表されていない案件もあります。
Q10件すべてで重大ないじめが確認されたのですか?
Aいいえ。暴力、暴言、器物破損、仲間外れなどが疑われ、いじめ重大事態に該当する可能性があるとして調査を始めた案件です。調査結果は今後まとめられます。
Qなぜ前年までより件数が増えたのですか?
A市教委は、新ガイドラインで重大事態を判断する視点を細かく示したことで、各学校が早期に案件を報告するようになったことが一因との認識を示しています。
Q新しいガイドラインはいつ始まったのですか?
A札幌市教育委員会は2026年5月18日に、いじめ重大事態の調査や調査結果の公表に関する独自ガイドラインを策定しました。
Q今後、調査結果は公表されますか?
A調査結果は報告書としてまとめられ、保護者などの同意が得られた案件については公表される方針です。市は今後、調査開始件数も毎月公表するとしています。札幌市は重大事態調査に関するガイドラインや報告書の公開ページを設けています。

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