福島県棚倉町のゴルフ場でプロゴルファーを目指して働いていた男性研修生=当時19歳=が2022年に自殺したのは、職場でのパワーハラスメントが原因だったとして、男性の両親が2026年8月21日、ゴルフ場運営会社「棚倉開発」や当時の上司らに対し、約1億円の損害賠償を求める訴訟を福島地裁いわき支部に起こした。
白河労働基準監督署は、男性が受けた叱責などをパワハラと認定し、自殺は業務に起因するとして労災認定している。
一方、運営会社側は取材に対し、弁護士に対応を任せているとしてコメントを控えている。
19歳で「棚倉田舎倶楽部」に入社 プロ目指し練習
訴状などによると、男性は2021年3月、棚倉開発が運営する「棚倉田舎倶楽部」に入社した。
接客やボール拾いなどの業務に従事する一方、プロゴルファーになることを目指し、勤務の前後に練習を続けていたという。
研修生として働きながらプロテスト合格を目指す環境だったが、両親側は、男性が職場で継続的な叱責を受けていたと主張している。
「バカ」「来なくていい」などの叱責と主張
両親側によると、男性は2022年4月から6月にかけ、上司から週2〜3回程度、1回につき約1時間の叱責を受けていたという。
訴状では、「バカ」「来なくていいから」などの言葉を投げかけられていたとしている。
男性は同年6月24日、寮で死亡した。
白河労働基準監督署は、その後の調査で一連の叱責などについてパワーハラスメントに該当すると判断し、男性の死亡は業務に起因するとして労災認定した。
労災認定と今回の民事訴訟は別の手続きであり、今後は裁判で会社側や当時の関係者に民事上の責任が認められるかが争点となる。
両親が運営会社、当時の支配人らを提訴
両親が損害賠償を求めているのは、棚倉開発のほか、当時のゴルフ場支配人、男性の指導役だった先輩研修生。
請求額は約1億円としている。
代理人弁護士は8月21日に開いた記者会見で、男性について、ゴルフ場を練習環境として利用する側面があり、「プロになる」という夢を実現するため、簡単には辞められない状況だったとの趣旨を説明した。
両親側は、こうした立場の弱さや職場環境が男性を追い詰めたと主張している。
両親「毎日後悔している」
両親は提訴にあたり、「名門のゴルフ場で、息子がひどい扱いを受けるとは思っていなかった」とするコメントを発表した。
そのうえで、息子を助けられなかったことについて「私たちは毎日後悔している」としている。
今回の訴訟では、両親側が主張する叱責の内容や頻度がどのようなものだったのか、会社側が研修生の就労環境や精神的負担を把握していたのか、適切な安全配慮やハラスメント防止措置を講じていたのかなどが争点になるとみられる。
運営会社は「弁護士に任せている」
棚倉開発は取材に対し、今回の訴訟について「弁護士に任せており、コメントは控える」としている。
現時点で、両親側の具体的な主張に対する会社側の認否や、裁判でどのような反論を行うかは明らかになっていない。
棚倉開発の代表は、プロゴルファー・石川遼選手の父親が務めている。
ただし、今回の訴訟は会社や当時の上司らの法的責任をめぐるものであり、代表者個人に対する請求が行われているとの情報は現時点で示されていない。
今後の焦点は「安全配慮義務」とパワハラの因果関係
今後の裁判で重要になるのは、労災認定されたパワハラについて、民事上も会社側や当時の上司らの責任が認められるかどうかだ。
具体的には、叱責の内容や頻度、男性の心身の変化を周囲が把握できた状況だったのか、会社に相談や救済の仕組みがあったのか、配置転換や指導方法の見直しなどの措置を取れたのかが焦点となる。
また、男性が研修生として「プロになるために辞めにくい立場」に置かれていたという両親側の主張が、職場での力関係や心理的負担を判断する上でどのように評価されるかも注目される。
編集部まとめ
19歳という若さでプロゴルファーを目指していた男性の自殺をめぐり、両親が約1億円の損害賠償を求める訴訟に踏み切った。
今回の事案では、すでに労働基準監督署が職場での叱責などをパワハラと判断し、自殺との業務上の因果関係を認めて労災認定している。
一方、民事訴訟では、会社や当時の関係者それぞれにどの範囲まで法的責任があるのかが改めて審理される。
特に、研修生という立場で「仕事を辞めれば練習環境も失う」という構造があったのか、会社が若い研修生の心理的負担をどこまで把握し、保護できたのかが、この裁判の核心の一つとなりそうだ。
週刊TAKAPI編集部/成田
特記事項
この記事は2026年8月21日時点で公表されている訴訟内容、両親側の主張、労災認定の内容、運営会社側の回答を基に構成した。
「バカ」「来なくていいから」などの発言内容や叱責の頻度は、訴状などで両親側が示している主張を含む。
白河労働基準監督署による労災認定と、今回の民事訴訟における損害賠償責任の判断は別であり、会社や当時の関係者の民事上の責任は今後の裁判で審理される。
また、棚倉開発の代表者とされる石川遼選手の父親個人が今回の請求対象になっているとの情報は確認されておらず、会社代表という事実と訴訟上の責任は区別して記載している。
棚倉町のゴルフ場研修生自殺訴訟で分かっていること
福島県棚倉町のゴルフ場で働いていた男性研修生=当時19歳=が2022年に自殺したのは職場のパワハラが原因だったとして、両親が2026年8月21日、運営会社「棚倉開発」や当時の上司らに約1億円の損害賠償を求めて提訴した。白河労働基準監督署は一連の叱責などをパワハラと認定し、男性の死亡を業務上のものとして労災認定している。
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