【豊橋・渇水】大村知事「水田は水がいらなくなる」発言にコメ農家反論 県資料では9月から需要減、収穫前まで水管理

豊川用水の渇水を巡る大村知事の発言と豊橋市のコメ農家の反論を伝える報道アイキャッチ

豊川用水で深刻な渇水が続く中、農業用水を巡る愛知県側の説明と、豊橋市のコメ農家の受け止めに認識の差が表面化している。

8月26日夜の報道では、大村秀章知事が水田について「不需要期なので水田は水がいらなくなる」とする趣旨の発言をしたのに対し、豊橋市のコメ農家から「水はずっと必要」と反論する声が出た。

ただ、愛知県や国の公的資料を確認すると、論点は単純に「知事か農家のどちらが正しいか」ではない。

豊川用水地域全体では農業用水の使用量が8月をピークに9月から減少する。一方、水稲は生育段階によって収穫直前まで水管理が必要で、豊川用水地域では畑地かんがいも年間を通して利用されている。

県資料「8月をピークに9月から減少」

愛知県議会の2026年3月13日の農林水産委員会で、県側は豊川用水地域の農業用水について、「4月の代かき開始以降、水利用は増加し、8月をピークに9月から減少」すると説明している。

5月から8月までの4カ月間で年間農業用水のおよそ7割を使用するという。

この点だけを見れば、夏のピークを越えることで、豊川用水全体として必要となる農業用水量が減少していくという県側の説明には根拠がある。

しかし、同じ県議会答弁では、豊川用水地域について「畑地かんがいが盛んで、年間を通して農業用水を利用している」とも説明している。

つまり、9月から需要量が減ることと、農業用水が不要になることは同じではない。

水稲は収穫直前まで水管理 県の栽培暦にも記載

水田単位で見ると、さらに事情は異なる。

愛知県が公表している水稲品種「あいちのこころ」の栽培暦では、収穫時期を9月中旬としたうえで、「落水は収穫7日前まで行わない」と記載している。

農林水産省の「農業技術の基本指針」でも、登熟期には間断かんがいによって根の活力を維持し、気象条件に応じて通水間隔や落水時期を判断するよう求めている。特に高温時については、出穂後の通水管理と収穫前の早期落水防止を徹底するよう示している。

愛知県内でも品種や田植えの時期、ほ場の状態によって収穫時期は異なるため、すべての水田が8月末を境に一斉に水を必要としなくなるわけではない。

「総需要」と「目の前の田んぼ」 見ている単位が違う

今回の食い違いを読み解くうえで重要なのは、県と農家が見ている「単位」の違いだ。

県が水資源管理の立場から扱うのは、豊川用水地域全体でどれだけ農業用水が使われるかという総需要だ。その需要は8月をピークに9月から低下する。

これに対し、農家が管理するのは個々の水田であり、現在の稲の登熟状況や収穫予定日、高温、土壌の状態などに応じて水を入れるかどうかを判断する。

したがって、

「豊川用水全体の農業用水需要が減る」

ことと、

「いま育てている水田では水が要らない」

ことは別の意味になる。

「不需要期」という行政上の表現が個々の水田にもそのまま当てはまるように受け取られれば、農家側との認識差が生じる余地がある。

豊川用水は現在も3用途で5%節水

水資源機構によると、豊川用水では8月21日から、農業用水、水道用水、工業用水のすべてで5%の節水対策が実施されている。

8月26日更新の渇水情報でも、この節水措置と渇水対策本部の設置継続が確認できる。

宇連ダムでは26日朝の時点でも有効貯水量が約160万立方メートルまで低下しており、依然として厳しい水源状況が続いている。

今回の問題は単なる発言を巡る応酬ではなく、限られた水を地域全体でどう配分しながら、収穫前の農作物への影響を抑えるのかという実務的な問題でもある。

コメ概算金も前年から大幅低下

農家を取り巻く環境では、水不足と同時に2026年産米の価格も課題となっている。

愛知県内の2026年産コシヒカリ1等米の概算金については、玄米60キロ当たり1万6800円と報じられている。前年産の約2万8500円を大きく下回る水準だ。

概算金は最終的な販売価格そのものではないが、肥料や農薬などの生産コストを抱える農家にとって、収穫量や品質だけでなく採算にも関わる。

渇水による水管理の制約と米価の下落が同時に進めば、生産現場への負担はさらに重くなる。

編集部まとめ

大村知事の「不需要期」を巡る発言に豊橋市のコメ農家が反論した今回の問題は、県と農家のどちらか一方の説明だけでは整理できない。

県の公式資料では、豊川用水の農業用水需要は8月をピークに9月から減少する。一方で、県の水稲栽培暦や国の指針では、収穫前まで適切な水管理が必要であることも示されている。

したがって、「需要が減る」と「水が不要になる」は明確に分けて説明する必要がある。

なお、26日夜時点で、今回報じられた知事発言について、県が公開する会見全文など一次の発言記録は確認できていない。発言の正確な前後関係については、県側の記録や追加説明が公表された段階で改めて確認する必要がある。

週刊TAKAPI編集部/一条

特記事項

本記事は2026年8月26日に新たに報じられた大村秀章知事の発言と豊橋市の農家の反応について、愛知県議会、愛知県、農林水産省、水資源機構の公表資料を照合して構成した。

知事の「不需要期」に関する発言は26日夜の報道で確認したもので、記事作成時点では県公式の会見録などによる発言全文を確認できていない。このため、発言の趣旨と公的資料との整合性を中心に検証している。

愛知県の「あいちのこころ」栽培暦は特定品種の標準的な栽培例であり、豊橋市内すべての水田に同一の収穫時期や落水時期が適用されるものではない。

豊川用水では現在、農業用水5%、水道用水5%、工業用水5%の節水対策が実施されている。

Q大村知事は何と発言したと報じられていますか?
A水田について「不需要期なので水田は水がいらなくなる」とする趣旨の発言が報じられています。ただし、記事作成時点では県公式の会見全文による確認はできていません。
Q豊川用水の農業用水は9月から減るのですか?
Aはい。愛知県は県議会で、4月の代かき以降に利用量が増え、8月をピークに9月から減少すると説明しています。
Q9月になると水田では水が不要になるのですか?
A一律には言えません。水稲の品種や生育状況によって異なり、愛知県の栽培暦では収穫7日前まで落水しない例も示されています。
Q豊川用水では現在どの程度の節水が行われていますか?
A農業用水、水道用水、工業用水の3用途で、それぞれ5%の節水対策が実施されています。
Q「需要が減る」と「水が要らない」は同じ意味ですか?
A同じではありません。豊川用水全体の総需要は9月から減少しますが、個々の水田では収穫時期や生育状況によって引き続き水管理が必要な場合があります。

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