佐賀県唐津市の私立「城内シオン保育園」で、保育士による園児への虐待が1件認定された問題を巡り、保護者13人でつくる有志の会が9月2日、記者会見を開き、佐賀県に再調査を求めました。
有志の会は8月21日に結成。園が7月と8月に開いた保護者向けの説明で、これまで把握している内容との間に食い違いがあるとして、県による保護者への直接説明や、退職した職員への聞き取りを含む再調査を求めています。
会見では、園を退職した元職員19人へのアンケートで18人が「不適切な保育がなされていたと思う」と回答したとの結果も示されました。
一方、県がこれまでの調査で虐待と認定したのは1件です。有志側はほかにも問題となる保育があった可能性を指摘していますが、追加の虐待が行政によって認定された段階ではありません。
7月に県が指導 その後「虐待1件」の認定が明らかに
問題が表面化したのは7月です。
7月15日の地域報道では、城内シオン保育園で園児への虐待が疑われる行為があったとして、佐賀県と唐津市が園への立ち入り調査、職員への聞き取り、園内カメラ映像の確認などを行ったことが明らかになりました。
当時、県は「職員の対応は適切ではなかった」と判断し、園に再発防止のための研修や報告を求める指導を行ったと説明されていました。
その後の報道で、一連の調査の結果として県側が1件を虐待と認定していたことが明らかになっています。
このため、7月の「不適切な対応への指導」と、後に明らかになった「虐待1件認定」を別々の事案と捉えるのではなく、同じ問題に対する行政調査の経過として整理する必要があります。
「押し倒す」「頭のけが」は7月時点の関係者情報
7月15日の報道では、関係者の話として、保育士が園児を押し倒すなどの行為をしていたと伝えられています。
また、園児の頭にけががあったことから保護者が園へ連絡し、園長が園内カメラの映像を確認したとも報じられました。
ただし、この「押し倒す」「頭にけが」という内容は、7月時点で報じられた関係者情報です。
県が虐待と認定した1件について、行政が認定行為の詳細として同じ内容を公表したことまで確認できているわけではありません。
週刊TAKAPIでは、7月報道の関係者情報と、県による虐待認定を分けて扱います。
園児から「よくたたかれる」との訴えも 保護者側が問題視
有志の会が再調査を求める背景には、園側の説明だけでは解消されていない保護者側の疑問があります。
会見では、園児から「よくたたかれる」といった趣旨の話を聞いたとの保護者側の訴えも示されました。
こうした園児の発言について、具体的にいつ、誰から、どのような状況で聞き取ったものなのか、また行政調査で事実確認されたのかまでは、現時点の公開情報では明らかになっていません。
そのため、園児の発言そのものを新たな虐待の事実として扱うことはできませんが、有志側はこうした訴えも含め、現在の調査結果だけでは園内の実態を十分に確認できていないとして再調査を求めています。
元職員19人中18人「不適切な保育がなされていたと思う」
有志側がもう一つの根拠として示しているのが、元職員へのアンケートです。
会見に同席した唐津市議によると、園を退職した元職員19人を対象にしたアンケートで、18人が「不適切な保育がなされていたと思う」と回答したということです。
19人中18人という結果について、有志側は、現在勤務している職員だけを対象とした聞き取りでは園内の実態を十分に把握できない可能性があるとして、退職者への調査を求めています。
一方、公開されている情報だけでは、アンケートの全質問項目、回答者の在職時期、それぞれが何を「不適切な保育」と認識していたのかまでは分かっていません。
「不適切な保育」と行政上の「虐待」は同じ意味ではないため、アンケート結果だけで新たな虐待件数を判断することもできません。
有志の会は8月21日結成 保護者13人で再調査要求
有志の会は8月21日に、城内シオン保育園に子どもを通わせる保護者ら13人で結成されました。
9月2日の会見では、県に提出した申し入れ書について説明し、これまでの行政調査では対象になっていない退職職員への聞き取りなどを要望しました。
さらに、調査結果について県側が保護者へ直接説明する機会を設けることも求めています。
有志側は、園側が7月と8月に行った説明の内容について、把握している事実との間に矛盾があると主張。「園全体で虐待が行われているのではないか」との疑念を示しています。
これは有志側の見解であり、県や唐津市が園全体での虐待を認定したものではありません。
県「調査は終えているが、申し入れには回答する」
再調査を求める申し入れに対し、佐賀県側も姿勢を示しています。
9月2日の会見を伝えた報道によると、県こども未来課は、これまで実施してきた調査についてはすでに終了しているとの認識を示す一方、有志の会から提出された申し入れについては内容を確認したうえで回答する考えを示しました。
現時点で県が再調査を行うと決定したわけではありません。
今後の焦点は、元職員19人へのアンケートや園児に関する新たな訴えを、県が追加確認を必要とする情報として扱うのかどうかです。
また、有志側が求める退職職員への聞き取りについて、これまでの調査でどの範囲まで実施していたのかも確認が必要になります。
園側は保護者会を開催 最新の詳細回答は確認できず
園は問題発覚後、7月と8月に保護者へ経緯を説明しています。
7月の報道では、園長は取材に対して「何も話せない」と回答していました。
その後、有志側は園の説明内容に矛盾があるとしていますが、9月2日の会見で示された新たな指摘に対して、園側がどのような説明や反論をしているのかについては、今回確認した公開情報では十分に明らかになっていません。
城内シオン保育園は社会福祉法人友愛会が運営する私立保育所で、定員は80人。園の公式サイトでは「一人ひとりの個性を大切に」を保育理念として掲げています。
編集部まとめ
城内シオン保育園の問題では、県と唐津市による調査を経て、現時点で1件の虐待が認定されています。
これに対し、8月21日に結成された保護者13人の有志の会は、元職員19人中18人が「不適切な保育がなされていたと思う」と回答したアンケートや、園児から聞いたとする具体的な訴えなどを示し、調査範囲が十分だったのかを問い直しています。
県こども未来課は、従来の調査については終了しているとの認識を示す一方、有志側からの申し入れには回答するとしています。
次の焦点は、県が今回示された情報をどう評価し、再調査や追加の聞き取りが必要と判断するのかです。
週刊TAKAPI編集部/一条
特記事項
7月15日に報じられた「保育士が園児を押し倒した」「園児の頭にけががあった」とする内容は、当時の関係者情報です。県が虐待と認定した1件の具体的な行為として、同じ内容を行政が公表したことまで確認したものではありません。
元職員19人中18人のアンケート結果や園児の発言、有志の会が8月21日に保護者13人で結成されたこと、県こども未来課の回答については、9月2日の会見を伝えた公開報道に基づいています。アンケート結果や有志側の主張は、県による虐待認定とは区別して記載しています。
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