【静岡・牧之原】3歳女児バス置き去り死から4年 父「ただ生きていてほしかった」 園との約束果たされず、民事訴訟も継続

静岡県牧之原市の川崎幼稚園で起きた河本千奈ちゃん送迎バス置き去り死亡事件から4年を伝える週刊TAKAPIのアイキャッチ

静岡県牧之原市の認定こども園「川崎幼稚園」で、当時3歳だった河本千奈ちゃんが送迎バスに約5時間置き去りにされ、重度の熱中症で死亡した事件から、2026年9月5日で4年を迎える。

父親は4日、静岡市内で会見し、「千奈は社会の教訓になるために生まれてきたわけではない。ただ生きていてほしかった」と語った。事件後も園側への不信感は残り、家族が県外へ転居する際に園関係者と交わした「年に一度、仏前に手を合わせる」という約束も一度も果たされていないという。

遺族は2025年1月、園を運営する学校法人榛原学園や元園長らを相手に損害賠償訴訟を起こしており、事件から4年となる現在も責任をめぐる民事上の争いが続いている。

「娘を殺された側からすれば、やっぱり憎い」

父親は会見で、千奈ちゃんが高温となった車内で服を脱ぎ、水筒の麦茶を飲み干していたことに触れ、3歳なりに生き延びようとしていた姿を思うと、今も胸に刺さるような痛みがあると語った。

助けられなかったことや、あの園を選んでしまったことへの後悔も消えていないという。

事件後に生まれた妹は現在4歳となり、千奈ちゃんが生きた年齢を超えた。笑い方や仕草が似ていて、姉の姿を重ねることもあるという。

父親は園への感情について、「娘を殺された側からすれば、やっぱり憎い」「あんな園はなくなってしまえと思う」と率直に語った。

「年に一度、仏前に」 父親によると一度も実現せず

事件後、河本さん一家は県外へ転居した。

父親によると、その際、園の理事長や当時の担任らと、年に一度は千奈ちゃんの仏前に手を合わせることを約束した。しかし、この4年間で一度も実現していないという。

一方、運営法人側は、現在の理事長が月命日に事故現場で黙とうを続けていると説明している。

ただし、事故現場での黙とうと、遺族との間で交わした「仏前に手を合わせる」という約束は別の内容となる。

遺族は2025年1月に損害賠償訴訟

刑事裁判とは別に、遺族は2025年1月、学校法人榛原学園や元園長、元クラス担任らを相手取り、損害賠償を求めて静岡地裁に提訴した。

事件発生から時間が経過し、刑事裁判が終結した後も、園側の責任をめぐる法的手続きは続いている。

4年後の父親の会見は、制度改正や刑事判決だけでは事故をめぐる問題が終わっていないことを改めて示した。

元園長は実刑 元担任にも有罪判決

刑事裁判では、事件当日に送迎バスを運転していた当時の理事長兼園長・増田立義氏と、当時のクラス担任が業務上過失致死罪に問われた。

静岡地裁は2024年7月4日、増田氏に禁錮1年4カ月の実刑判決、元クラス担任に禁錮1年・執行猶予3年の判決を言い渡した。

双方とも控訴せず、判決は同月に確定した。

増田氏はその後、刑期を終えて出所しているが、父親によると、出所後も遺族への連絡はないという。

2022年会見では当時の園側対応にも批判

事件発生2日後の2022年9月7日には、当時の理事長兼園長だった増田立義氏らが記者会見を開いた。

会見では、園児の乗降確認が十分に行われていなかったことや、複数の確認ミスが重なっていたことが明らかになった。

当時の複数報道では、増田氏が千奈ちゃんの名前を複数回言い間違えたことや、会見中の表情や受け答えにも批判が集まったと伝えられている。

その後の刑事裁判では、園の責任者としての安全管理義務と、当日の運転者としての確認義務の双方について過失が認定された。

現園長が法人対応を批判 9月末で辞任意向

事件から4年を前に、現在の園内部からも運営法人への批判が出た。

牧之原市の公表資料によると、事件後の2022年9月に増田立義氏が理事長兼園長を辞任し、増田多朗氏が理事長、渡邊伊彦氏が園長に就任した。

その現園長・渡邊氏が9月4日に会見を開き、事件後の法人の対応に問題があったと主張した。

渡邊氏は、現在の理事長から職員らに「もう2年過ぎた」「時が来ればみんな忘れていく」といった趣旨の発言があったと説明。また、遺族が求めた事故現場への献花台設置が実現しなかったことなども問題視した。

渡邊氏は、組織内部から問題を明らかにするため会見したとして、9月末で園長を辞任する意向を示している。

一方、運営法人側は、理事長によるとされる発言について「事実ではない」と否定。月命日に事故現場で黙とうを続けているとし、献花台についても、恒久的に設置する場合の安全性などを考慮して検討していたと説明している。

現園長側と法人側の説明には食い違いがあり、この部分については今後も双方の主張を分けて確認する必要がある。

安全装置は義務化 それでも置き去り事故は再発

牧之原市の事件を受け、国は2023年4月から、対象となる幼稚園や保育所、認定こども園などの送迎バスに、置き去り防止を支援する安全装置の装備を義務付けた。

しかし、2025年9月には岐阜県大垣市の認定こども園で、2歳女児が約1時間、送迎バス内に取り残される事故が発生した。

安全装置が設置されていても、人が確認手順を省略すれば事故を防げないことを示す事例となった。

千奈ちゃんの父親も今回、機械を付けるだけではなく、使う側がルールを守らなければ同じことが起こり得るとの考えを示している。

編集部まとめ

事件から4年。刑事裁判では元園長と元担任の責任が認定され、安全装置の義務化も進んだ。

それでも、遺族と運営法人側の民事訴訟は現在も続き、4周年を前に現園長が法人対応を公に批判し、辞任意向を示す事態となった。

つまり今回問われているのは、4年前の事故原因だけではない。事故後に約束したことを守れているのか、安全対策が日常業務として定着しているのか、そして園の内部で事故への向き合い方が共有されているのかという「4年間の対応」そのものだ。

週刊TAKAPI編集部/成田

特記事項

この記事は、2026年9月4日に行われた河本千奈ちゃんの父親の会見と川崎幼稚園現園長の会見、運営法人側のコメント、2022年当時の園側記者会見に関する複数報道、静岡地裁の刑事裁判、2025年1月の民事提訴、牧之原市の公表資料などを基に構成しています。

2022年の会見で対応した当時の理事長兼園長は増田立義氏、事件後に就任した現在の学校法人榛原学園理事長は増田多朗氏、川崎幼稚園園長は渡邊伊彦氏です。

2026年9月4日の現園長会見で示された理事長の発言や献花台をめぐる指摘については、静岡新聞など複数の県内報道が伝えています。運営法人側は一部の内容を否定・反論しているため、記事では双方の主張を区別しています。

Q牧之原市の送迎バス置き去り事件はいつ起きたのですか?
A2022年9月5日、静岡県牧之原市の川崎幼稚園で発生しました。河本千奈ちゃん(当時3)が送迎バス内に約5時間取り残され、重度の熱中症で亡くなりました。
Q父親は事件から4年を迎えて何を語ったのですか?
A「千奈は社会の教訓になるために生まれてきたわけではない。ただ生きていてほしかった」と語り、現在も続く後悔や園側への怒りを明らかにしました。
Q園側との約束とは何ですか?
A遺族が県外へ転居する際、園関係者との間で年に一度、千奈ちゃんの仏前に手を合わせると約束したとされています。父親によると、この4年間で一度も実現していません。
Q元園長と元担任にはどのような判決が出ましたか?
A当時の理事長兼園長・増田立義氏には禁錮1年4カ月の実刑、元クラス担任には禁錮1年・執行猶予3年の判決が言い渡され、2024年7月に確定しました。
Q事件をめぐる法的な手続きは終わっていますか?
A刑事裁判は確定していますが、遺族は2025年1月に学校法人榛原学園や元園長らを相手に損害賠償訴訟を起こしており、民事上の争いは続いています。

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