【独自取材】県は処分後に何を変えたのか 東三河2事案を検証 ハラスメント相談3年71件、酒気帯び後は再周知

愛知県東三河の県機関で起きたセクハラと酒気帯び運転について処分後の再発防止策を検証する週刊TAKAPIの報道イメージ

愛知県東三河の県機関で起きたセクシュアル・ハラスメントと酒気帯び運転。週刊TAKAPIは9月19日、それぞれの懲戒処分そのものではなく、処分後に県が何を変え、再発防止をどう進めているのかを独自取材した。

対象は、農業水産局東三河農林水産事務所の課長補佐級職員によるセクハラ事案と、企業庁東三河水道事務所の課長補佐級職員による酒気帯び運転だ。行為の性質も所管も異なり、悪質性や処分内容を比較するものではない。一方、「処分後の組織対応」という視点で見ると、両事案とも新制度を大幅に追加したのではなく、既存の研修、資料、相談体制、注意喚起を改めて職員へ徹底する対応が中心だった。

重要なのは、新制度を作ったかどうかだけではない。既存の仕組みを再徹底した結果、職員の判断や管理職の初動が実際に変わったのか。今回の2件を一本にまとめる理由は、そこにある。

東三河農林水産事務所 部下にキス、ホテルへ誘い減給6か月

愛知県の公表によると、処分を受けたのは東三河農林水産事務所の課長補佐級男性職員。当時53歳だった。

男性職員は2025年5月と11月、職場の懇親会で部下職員にキスをしたほか、ホテルへ誘うなど、セクシュアル・ハラスメントに該当する行為をした。県は2026年3月27日付で、男性職員を減給10分の1、6か月の懲戒処分とした。

週刊TAKAPIが愛知県人事課監察室へ確認したところ、県は処分当日の3月27日に臨時の監察会議を開催。各局の主管課で人事を担当する職員へ事案を説明し、全職員への注意喚起を改めて求めた。

県では従来からコンプライアンス研修を実施し、管理職向け研修でもセクハラを含むハラスメントを扱っている。一方、今回の事案を受けて管理職向け研修を新設したり、問題行為をしていない管理職全員を個別指導したりしたわけではない。

事案は職場の懇親会で発生したが、飲酒を伴う懇親会などを対象とした県全体の新たな統一ルールも設けていない。相談体制についても新窓口を新設したのではなく、所属や監察室による既存の相談体制を継続している。

3年間の相談は71件 パワハラ64件、セクハラ7件

今回の独自取材では、愛知県人事課監察室に寄せられた直近3年間のパワハラ・セクハラ相談件数も明らかになった。

2023年度はパワハラ22件、セクハラ1件の計23件。2024年度はパワハラ23件、セクハラ3件の計26件。2025年度はパワハラ19件、セクハラ3件の計22件で、3年間の合計はパワハラ64件、セクハラ7件の計71件だった。

監察室はセクハラ相談の推移について、おおむね同程度との認識を示している。2023年度の1件から翌年度に3件へ増えているものの、この数字だけから増加傾向と断定することはできない。

また、71件はあくまで「相談件数」だ。71件すべてでハラスメントが認定されたわけではなく、懲戒処分件数や被害を訴えた職員の実人数とも異なる。相談件数が増えた場合でも、職場環境の悪化だけでなく、相談窓口が利用されやすくなった可能性なども含めて慎重に読む必要がある。

監察室の調査開始から処分までは約3〜4か月

今回のセクハラ事案では、監察室が局の人事担当者から連絡を受けたのは2025年12月ごろだった。その後、事実確認などを進め、2026年3月27日の処分に至っている。確認できた範囲では、監察室の調査開始から処分までは約3〜4か月となる。

一方、被害を受けた職員が最初に相談・申告した時期は今回の取材では確認できていない。そのため、「被害申告から処分まで約4か月」とは言えない。行政処分までの時間を評価する場合には、調査開始時期と最初の相談時期を分ける必要がある。

監察室は今回の事案について、県職員のコンプライアンス意識が「まだまだ不十分であった」との認識を示している。研修についても同じ内容を固定的に繰り返すのではなく、受講者から寄せられる「より実践的な内容に」といった趣旨の意見を取り入れながら見直す考えを説明している。

ここで今後の検証点になるのは、単純な相談件数の増減より、問題が深刻化する前に相談へつながるのか、管理職が早期に対応できるのかという部分だ。

東三河水道事務所 前夜に約5時間半飲酒、翌朝0.39mg

もう一つは、企業庁東三河水道事務所で起きた酒気帯び運転だ。

県によると、当時59歳だった課長補佐級男性職員は2026年3月5日午後7時ごろから翌6日午前0時30分ごろまで、自宅で缶チューハイ350ミリリットルを1缶、焼酎のお湯割りをコップ5杯飲んだ。飲酒時間は約5時間半だった。

飲酒を終えてから約7時間10分後の午前7時40分ごろ、自家用車で通勤中、豊川市内で警察官の検問を受け、呼気1リットル当たり0.39ミリグラムのアルコールが検出された。酒気帯び運転の基準値である0.15ミリグラムを上回っていた。

県は7月8日付で職員を停職3か月の懲戒処分とした。また、東三河水道事務所の所長には、職員を管理監督する立場としての責任を理由に「所属長厳重注意」とした。職員本人への懲戒処分と、所長への所属長厳重注意は区別して扱う必要がある。

今回の事案は、飲酒直後に運転したケースではない。一定時間を空け、一晩をまたいだ翌朝の通勤時にアルコールが検出された点が特徴となる。

処分後は全職員へ再周知 新しい資料ではなく既存資料を使用

週刊TAKAPIが企業庁に確認したところ、処分後、庁内の全職員へ飲酒運転防止を改めて周知した。

所属長などから直接伝え、所属によっては職員へ個別に注意を促したところもあれば、職員全体へ周知したところもあったという。一律に全職員へ個別面談を実施したという対応ではない。

企業庁では以前から、アルコールの量と体内から抜けるまでにかかる時間などをまとめた資料を用意していた。今回の処分後はその既存資料を再周知し、前夜に飲酒した場合でも翌朝までアルコールが残る可能性があることを改めて注意喚起した。新たな資料を作成したわけではない。

翌朝の運転対策で今後見るべきなのは、資料が配られたかどうかではない。「時間を空けたから大丈夫」という自己判断を防ぎ、前夜の飲酒を翌朝の運転リスクまで含めて考える習慣が定着したかという点になる。

公用車のアルコールチェックは今回の新対策ではない

企業庁では、公用車を保有する所属にアルコールチェック機器を配備し、職員が業務で公用車を運転する際には毎回チェックを行っている。

ただし、これは今回の酒気帯び運転後に始めた制度ではなく、従来から実施していた対策だ。今回の職員が運転していたのも公用車ではなく、自家用車だった。

したがって、公用車のアルコールチェックを今回新たに導入された再発防止策として扱うことはできない。

企業庁は、再発防止策の効果を目に見える形で確認することは「なかなか難しい」との認識を示している。一方、取材時点では処分後に新たな問題は起きていないと説明した。ただし、新たな問題が確認されていないことと、今回の注意喚起による効果が実証されたことは同じではなく、企業庁も具体的な数値で効果を示したわけではない。

企業庁では各所属で研修を行うほか、人事担当者が年1回、全所属を回って資料を渡すなど職員へ働きかける機会も設けている。今回の事案についても、こうした機会を含めて継続して注意喚起する考えを示している。

2件に共通するのは「再周知」 評価すべきはその先

今回の2件で確認できた組織対応には共通点がある。

セクハラ事案では、処分当日に臨時監察会議を開き、全職員への注意喚起を求めた。酒気帯び運転では、庁内全職員へ改めて注意を促し、翌朝までアルコールが残る可能性を含む既存資料を再周知した。

いずれも、処分を契機に全く新しい制度を大量に追加したという対応ではない。

しかし、そこから「対策が弱い」と結論づけることはできない。新しいルールや資料を増やしても、職員の行動が変わらなければ再発防止にはならないからだ。

逆に、既存対策をもう一度知らせたから十分とも言えない。

今回の独自取材から次に追うべき項目は明確になった。

ハラスメントでは、相談が早期につながるか、管理職が問題の初期段階で対応できるか

酒気帯び運転では、前夜の飲酒を翌朝運転まで含めたリスクとして職員が認識し、同種事案が繰り返されないか

「何を新設したか」だけではなく、「既存の対策を再徹底した結果、現場で何が変わったか」。ここまで追う必要がある。

編集部まとめ

懲戒処分の公表は、不祥事対応の終点ではない。

今回の独自取材では、愛知県が処分後に注意喚起や資料の再周知を行っていたことだけでなく、今後どこを確認しなければ再発防止策の実効性を評価できないかが見えてきた。

ハラスメントでは、相談件数そのものより、相談が問題の深刻化前につながるかが重要になる。酒気帯び運転では、前夜の飲酒を翌朝の運転まで含めて判断する認識が職員へ定着するかが焦点になる。

再発が確認されていないことを、そのまま対策成功の証明にはできない。一方、新制度がないことだけを理由に対策不足とすることもできない。

必要なのは、処分後の組織対応を時間を置いて再確認することだ。

週刊TAKAPIは今後も、**「誰がどの処分を受けたか」だけではなく、「処分後に組織がどう変わったのか」**を継続して検証する。

週刊TAKAPI編集部/成田

特記事項

本稿は、週刊TAKAPIが9月19日に公開した東三河農林水産事務所のセクハラ事案と、企業庁東三河水道事務所の酒気帯び運転事案に関する2本の独自取材を、「処分後の組織対応」という視点で横断的に再構成した記事です。

両事案は行為の内容、処分理由、所管が異なり、本稿は悪質性や処分の重さを比較するものではありません。

ハラスメント相談71件は、愛知県人事課監察室が週刊TAKAPIの取材に回答した2023年度から2025年度までのパワハラ・セクハラ相談件数です。ハラスメント認定件数、懲戒処分件数、被害を訴えた職員の実人数を示すものではありません。また、同一案件について複数回相談した場合の詳細な集計方法については、今回の取材では確認していません。

セクハラ事案について確認できた約3〜4か月という期間は、被害申告から処分までではなく、監察室が局の人事担当者から連絡を受け、調査を開始してから処分までの期間です。最初の相談・申告時期は今回の取材では確認できていません。

酒気帯び運転について、職員本人は停職3か月の懲戒処分、所長は管理監督責任を理由とする「所属長厳重注意」です。本稿では両者を同じ種類の措置として扱っていません。

公用車運転時のアルコールチェックは今回の事案後に導入された新制度ではなく、企業庁が従来から実施していたものです。

本稿で扱う懲戒処分や注意措置と、刑事手続き上の責任は区別しています。

Q愛知県のパワハラ・セクハラ相談は3年間で何件ありましたか?
A2023年度から2025年度までの3年間で計71件です。内訳はパワハラ64件、セクハラ7件です。71件は相談件数であり、認定されたハラスメント件数ではありません。
Q東三河農林水産事務所のセクハラ事案後、県は何をしましたか?
A処分当日に臨時監察会議を開催し、各局の人事担当者を通じて全職員への注意喚起を求めました。一方、今回の事案を契機とした懇親会の新たな県統一ルールや新相談制度は確認されていません。
Q東三河水道事務所の酒気帯び運転では、どの程度のアルコールが検出されましたか?
A呼気1リットル当たり0.39ミリグラムです。職員は前夜の飲酒を終えてから約7時間10分後、自家用車で通勤中に検問を受けました。
Q東三河水道事務所長も懲戒処分を受けたのですか?
A職員本人は停職3か月の懲戒処分を受けました。所長については、管理監督する立場としての責任を理由に「所属長厳重注意」とされています。
Q2つの事案の処分後対応に共通していた点は何ですか?
A全く新しい制度を大幅に追加するより、既存の研修、資料、相談体制、注意喚起を改めて徹底する対応が中心だった点です。今後は、その対応が早期相談や職員の判断・行動の変化につながるかが検証点になります。

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