蒲郡市で時間外手当未払い 34人に計53万円、公益通報で発覚 他部署にも調査拡大

愛知県蒲郡市で、市民課の職員が始業前に行っていた業務について、時間外勤務手当が支払われていなかったことが公益通報をきっかけに判明した。

市の調査で確認されたのは、職員個人が自主的に早く出勤していたというだけの話ではない。市民課ではシフト表が作成され、職員がそのシフトに基づいて、火曜日と金曜日の午前8時15分前後から通常の始業時刻である午前8時30分まで、証明書自動交付機の用紙補充などを行っていた。

市は2022年4月1日から2025年3月31日までの3年間について、退職者7人を含む34人に未払いの時間外勤務手当49万3,765円と遅延損害金3万7,022円を支給すると決定した。合計は53万787円となる。

さらに市は、この問題を受けて他部署にも聞き取りを実施。「検討が必要と判明した部署がある」として調査を継続すると公表している。

問題は市民課だけだったのか。蒲郡市の勤務管理をめぐる調査は、まだそこで終わっていない。

始まりは職員からの公益通報

問題が表面化したのは、2025年3月12日付の公益通報だった。

通報では、市民課で担当職員の当番表を作り、始業前に証明書自動交付機の用紙補充などを、時間外勤務の申請をしないまま行わせていたとして、「サービス残業」の疑いが指摘された。

蒲郡市が関係者に聞き取りを行った結果、シフト表が実際に作成され、それに基づいて職員が補充作業を担っていたことが確認された。

作業は火曜日と金曜日。時間帯は午前8時15分前後から8時30分までだった。

市が公表している人事行政資料では、通常の勤務時間は平日の午前8時30分から午後5時15分までとされている。つまり、今回確認された作業は通常の始業時刻より前に行われていたことになる。

34人に未払い 7人はすでに退職

市は未払いとなっていた時間外勤務手当について、2022年4月1日から2025年3月31日までの3年間にさかのぼって支給することを決めた。

対象となった職員は34人。このうち7人はすでに退職していた。

未払いの時間外勤務手当は49万3,765円で、遅延損害金は3万7,022円。合計すると53万787円となる。

2026年4月16日の公表時点で、市は時間外勤務手当を4月24日、遅延損害金を同月30日に支払う予定としていた。

「過去から」続いていた始業前業務

今回の公表資料には、もう一つ注目すべき表現がある。

公益通報の内容について、市は始業前の作業が「過去から時間外勤務の申請なしで実施させていた」と記載している。

一方、市が今回遡及して支給するとした期間は2022年4月から2025年3月までの3年間だ。

この運用そのものがいつ始まったのか、3年間より前にも同様の始業前作業が行われていたのか、公表資料からは分からない。

また、なぜ遡及支給を3年間としたのかについても、この資料では具体的な根拠は示されていない。

年間1億7600万円超の時間外手当 その一方で起きた未払い

蒲郡市が別途公表している「人事行政の運営等の状況」によると、令和6年度の普通会計における時間外勤務手当の支給総額は1億7614万8千円だった。

前年度は1億7964万8千円で、令和6年度は350万円減少。職員1人当たりの年間支給額も24万9千円から24万3千円となっている。

ただし、この1億7614万8千円は令和6年度普通会計全体の支給額であり、今回判明した49万3,765円は3年間にわたる市民課の未払い分である。両者を単純に比較したり、足し引きしたりすることはできない。

重要なのは、市が時間外勤務手当を年間1億円以上支給し、勤務時間を管理する制度を運用する一方で、シフト表に基づいて行われていた始業前業務が時間外勤務として適切に処理されていなかったという点だ。

市長「運用方法の不備」

鈴木寿明市長は公表資料で、時間外勤務手当の一部が未払いだった事実を認めた。

原因については「運用方法の不備」があり、手続きが適切に行われていなかったことを確認したと説明している。

再発防止策として、市は証明書自動交付機の運用体制を変更。用紙補充などを業務時間内に行う方式に改めた。

時間外勤務が必要な場合についても、所属長へ申し出て許可を得てから業務に当たるよう徹底するとしている。

市長は未払い分を速やかに支払うとともに、時間外・休日勤務の適切な取り扱いを全職員に周知し、働き方改革などに取り組むとして、市民に謝罪した。

市民課だけではなかった「調査」

この問題でさらに重要なのが、市が調査対象を他部署へ広げたことだ。

蒲郡市は市民課の問題を受け、他部署についても聞き取りを実施した。

その結果について、市は「検討が必要と判明した部署があるため、調査を継続している状況です」と公表している。

ただし、2026年4月16日の公表では、該当する部署の名称や部署数、対象となる職員数、どのような勤務実態について検討が必要と判断したのかは明らかにされていない。

当然ながら、この記載だけをもって他部署でも時間外勤務手当の未払いがあったと断定することはできない。

一方、市民課以外についても調査を継続する必要があると市自身が判断したことは事実だ。

「他部署調査」その後は

蒲郡市が本件を公表したのは2026年4月16日だった。

週刊TAKAPIが9月20日時点で市の人事課や職員人事・採用に関する公開資料を確認したところ、本件以降の懲戒処分などは掲載されているものの、4月に「継続している」とされた他部署への調査について、その最終結果と明示された公表資料は確認できなかった。

調査が現在も続いているのか。すでに終了しているのか。検討対象となったのは何部署なのか。追加の未払いは確認されたのか。

今回の問題は34人への約53万円の支払いだけで終わるのではなく、市役所全体の時間外勤務が適切に把握・処理されていたのかという検証につながっている。

週刊TAKAPIでは、他部署への調査状況について蒲郡市への追加取材を進める。

このニュースのポイント

Q何があった?
A蒲郡市市民課で、シフト表に基づき職員が始業前に証明書自動交付機の用紙補充などを行っていたにもかかわらず、時間外勤務の申請が行われず、手当が支給されていなかったことが公益通報で判明した。
Q未払いはいくら?
A対象は退職者7人を含む34人。2022年4月から2025年3月までの3年間について、時間外勤務手当49万3,765円と遅延損害金3万7,022円、計53万787円を支給すると市が公表した。
Q市民課以外でも未払いがあった?
A現時点では断定できない。市は他部署にも聞き取りを行い「検討が必要」と判明した部署があるとしているが、4月16日の資料では他部署での未払いの有無や部署名、対象人数などを公表していない。
Q蒲郡市全体ではどれくらい時間外手当を支給している?
A令和6年度普通会計では総額1億7614万8千円。ただし、今回の未払い額とは対象期間・範囲が異なるため単純比較はできない。
Q今後の焦点は?
A他部署への調査が現在どうなっているのか、対象となった部署数や勤務実態、追加の未払いが確認されたのかに加え、市民課で始業前の当番制がいつから行われていたのか、なぜ遡及支給が3年間なのかも確認すべきポイントとなる。

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担当記者:松本