名古屋市熱田区の工事現場で今年2月、ゴンドラを使用していた31歳の労働者が墜落して死亡した事故をめぐり、名古屋東労働基準監督署は9月15日、日本ビソー株式会社と関係者1人を労働安全衛生法違反の疑いで名古屋地方検察庁に書類送検した。
労基署が問題としているのは、事故当日のゴンドラの作業開始前点検を行っていなかった疑いだ。
控えワイヤーが断裂 ゴンドラが大きく傾く
愛知労働局の発表によると、事故が起きたのは2026年2月3日。
名古屋市熱田区の外壁塗装修繕工事現場で、日本ビソーに雇用されていた31歳の労働者が、ゴンドラを使用して荷揚げ作業をしていた。
その際、ゴンドラの「控えワイヤー」が断裂。ゴンドラが大きく傾き、労働者が墜落して死亡した。
控えワイヤーとは、ゴンドラを吊り下げるワイヤーロープの一端を固定するため、屋上の構造物などに取り付けるワイヤーロープを指す。
労基署「作業開始前点検を行っていなかった疑い」
今回の書類送検で焦点となったのが、事故当日の点検だ。
ゴンドラ安全規則第22条では、事業者がゴンドラを使用して作業を行う場合、その日の作業を開始する前に点検を実施することを義務付けている。
点検項目には、
・ワイヤーロープや緊結金具類の損傷、腐食
・突りょうや昇降装置とワイヤーロープの取付部
・ライフラインの取付部
・巻過防止装置などの安全装置
・ブレーキや制御装置
・ワイヤーロープが通っている箇所の状態
などが含まれる。
名古屋東労基署は、日本ビソー側が死亡事故発生時に、この作業開始前点検を行っていなかった疑いがあるとしている。
労働安全衛生法違反の疑いで書類送検
労基署は、日本ビソー株式会社と関係者1人について、労働安全衛生法第20条、第27条やゴンドラ安全規則第22条などに違反した疑いがあるとして、9月15日に名古屋地検へ書類送検した。
労働安全衛生法第119条では、該当する規定に違反した場合、6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金を定めている。
また、同法第122条には、従業者などが法人の業務に関して違反行為をした場合、行為者だけでなく法人にも罰金刑を科すことができる「両罰規定」が置かれている。
ただし、今回の書類送検は刑事責任が確定したことを意味するものではない。今後、検察が捜査内容などを踏まえて刑事処分を判断する。
「ワイヤー断裂」と「点検未実施」の因果関係は断定できない
今回の発表で確認できる重要な事実は二つある。
一つは、控えワイヤーが断裂してゴンドラが大きく傾き、31歳の労働者が墜落して死亡したこと。
もう一つは、労基署が、事故発生時に作業開始前点検を行っていなかった疑いがあるとして書類送検したことだ。
一方、今回公表された資料だけでは、作業開始前点検を実施していればワイヤーの断裂や死亡事故を防ぐことができたのかなど、両者の直接的な因果関係までは明らかにされていない。
事故原因と法令違反の疑いは分けて見る必要がある。
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