トリドールHDに公取委勧告 「システム利用料」で37事業者への代金1.1%減額、1億4741万円

讃岐うどんチェーン「丸亀製麺」などを展開するトリドールホールディングスが、食品の製造を委託した37事業者への代金から「システム利用料」の名目で一律1.1%を差し引いていたとして、公正取引委員会は9月9日、同社に勧告を行った。

公取委によると、減額は2024年8月から2026年7月まで行われていた。このうち2024年8月から2025年12月までに差し引かれた金額だけで、計1億4741万1330円に上る。

今回の問題を簡単に整理すると、食品を製造した事業者が本来受け取る代金から、トリドールHD側が設定した仕組みによって毎回1.1%が差し引かれていたというものだ。

しかも、公取委の勧告書によると、トリドールHD自身は取引に使うシステムを卸売業者から無償で利用する一方、37事業者から徴収された「システム利用料」の一部を受け取る取り決めになっていた。

何が問題だった? 食品代金から「例外なく一律1.1%」

トリドールHDは卸売業者を介し、37事業者に対して、自社が子会社へ販売する食品の製造を委託していた。

その取引で採られていたのが「システム利用料」だった。

例えば製造代金が100万円だった場合、単純計算では1万1000円に相当する1.1%が差し引かれることになる。

公取委が問題としたのは、この減額が受注者側の責任によって生じたものではなく、「例外なく一律」に行われていたことだ。

2025年12月までの取引については改正前の下請法が定める「下請代金の減額の禁止」に違反し、2026年1月以降については改正後の取適法が定める「代金の減額の禁止」に違反すると認定された。

法律の名称は途中で変わっているが、今回の記事で重要なのはシンプルだ。受注した事業者側に責任がないのに、本来支払うべき製造代金を発注側の都合で減らすことは認められない。公取委は今回の1.1%の差し引きが、この禁止行為に当たると判断した。

2025年末までだけで1億4741万円

金額も大きい。

公取委によると、2024年8月から2025年12月までに37事業者から減額された金額は、計1億4741万1330円だった。

ただし、これは今回問題となった全期間の総額ではない。

減額は2026年7月まで続いており、2026年に行われた製造委託に関する減額分も別に存在する。

つまり「1億4741万円が最終的な減額総額」という意味ではなく、現時点で公取委が具体的な金額を明らかにしている2025年12月までの分だけで約1.47億円に達している、ということになる。

トリドールHDはシステムを無償利用 37事業者からは1.1%

では、「システム利用料」とはどのような仕組みだったのか。

公取委の別添勧告書には、トリドールHDと卸売業者との取り決めが記載されている。

トリドールHDは、卸売業者が提供する受発注機能などを備えた情報システムを利用していた。

その際、卸売業者はトリドールHDにシステムを無償で利用させる一方、食品を製造する37事業者から代金の1.1%相当額を「システム利用料」として徴収することになっていた。

さらに、卸売業者が徴収した金額の一部をトリドールHDへ支払うことも取り決められていた。

流れを簡単にすると、

トリドールHDが発注内容などを決定→ 卸売業者を通じて37事業者へ発注→ 事業者が食品を製造→ 支払時に代金から1.1%を差し引く→ 差し引いた金額の一部をトリドールHDへ支払う

という仕組みだった。

公取委は、この方法によってトリドールHDが代金を減額したものと認定した。

「卸売業者が引いたのでは?」公取委はトリドールHDを発注主体と認定

ここで疑問になるのが、実際の発注や支払いの間に卸売業者が入っているのに、なぜトリドールHDが違反主体になるのかという点だ。

公取委はこの点についても詳しく認定している。

卸売業者は、製品の仕様や製造を任せる事業者の選定、代金額の決定などには関与していなかった。トリドールHDから指定された内容に基づいて発注し、請求や支払いなどの事務手続きを行っていたという。

一方、実際に「何を作るのか」「誰に作ってもらうのか」「いくらで作ってもらうのか」を決めていたのはトリドールHDだった。

このため公取委は、卸売業者は事務手続きを代行していたにすぎず、実質的に37事業者へ製造を委託したのはトリドールHDだと判断した。

取引の間に別会社を挟んでいるかどうかだけではなく、誰が実際に取引条件を決定していたのかを見て、委託した主体を判断した形だ。

37事業者へ返還 2026年分には年14.6%の遅延利息も

公取委はトリドールHDに対し、37事業者から減額した金額を、公取委の確認を得た上で速やかに支払うよう求めた。

2026年に行われた製造委託については、減額した金額を返すだけではない。

改正後の取適法では減額した代金について遅延利息の対象が拡大されており、今回のケースでは一定期間について年14.6%の割合による遅延利息も支払うことになる。

なお「年14.6%」は、減額された2026年分すべてに単純に1年間分の14.6%を上乗せするという意味ではない。法律で定められた起算日から実際に支払う日までの日数に応じて計算される。

取締役会で「違反だった」と確認することも勧告

今回の勧告は、減額した金額を返せば終わりという内容でもない。

公取委はトリドールHDに対し、受注者側に責任がないにもかかわらず代金から一定割合を減額した行為が法律違反だったことを、取締役会の決議によって確認するよう求めた。

今後同様の減額を行わないことに加え、発注担当者に取適法の研修を行うなど、再発防止に必要な社内体制を整備することも勧告している。

さらに、勧告を受けた事実や講じた措置を役員・従業員に周知し、取引先の中小受託事業者にも通知した上で、対応内容を公取委へ報告する必要がある。

「丸亀製麺の客から1.1%」ではない

今回のニュースで誤解しないよう注意したい点もある。

問題となった「システム利用料」は、丸亀製麺の店舗を利用した客などから徴収したものではない。

トリドールHDが子会社へ販売する食品について、製造を委託していた37事業者との企業間取引で発生していたものだ。

公取委は、卸売業者を介した取引の実態まで調べた上で、トリドールHD自身が製造委託を行った主体であり、代金の1.1%を減額した行為が下請法・取適法に違反すると認定した。

このニュースのポイント

Q何があった?
AトリドールHDが食品製造を委託した37事業者への代金から「システム利用料」として例外なく一律1.1%を差し引いていたとして、公取委が2026年9月9日に勧告した。
Qどれくらいの金額?
A2024年8月から2025年12月までに減額された金額だけで1億4741万1330円。減額自体は2026年7月まで行われており、1億4741万円は全期間の総額ではない。
Q「システム利用料」は誰が負担していた?
A食品を製造する37事業者の代金から1.1%相当額が差し引かれていた。一方、トリドールHDは卸売業者のシステムを無償で利用し、卸売業者が徴収した金額の一部を受け取る取り決めになっていた。
Qなぜ卸売業者ではなくトリドールHDが違反主体になった?
A食品の仕様、受注者の選定、代金額などを実際に決めていたのがトリドールHDだったため。公取委は卸売業者について、発注や請求、支払いなどの事務手続きを代行していたにすぎないと認定した。
Q今後どうなる?
A37事業者への減額分の支払いが求められる。2026年分については、法令に基づき年14.6%の割合で計算される遅延利息も対象となる。また、取締役会での違反確認、担当者への研修などの再発防止策も求められている。

担当記者:週刊TAKAPI編集部