串カツ田中、なぜ物価高で「100円ハイボール」にできる? “脱・串カツ田中”級改革の狙いを読み解く

「脱・串カツ田中」の本当の意味

さらに会社全体を見ると、変化はもっと大きい。

旧「串カツ田中ホールディングス」は2026年3月に「ユニシアホールディングス」へ社名を変更。串カツ田中だけに依存しない複数ブランド展開を進めている。

一方、その中核である串カツ田中自身も変わろうとしている。

50円の無限串。

100円のハイボール。

290円のサワー。

やきとんを意識した豚ホルモン串。

レバニラ炒め。

新しい店舗デザイン。

こうして見ると、今回の改革は単なる「串カツ田中の値下げ」ではない。

串カツを中心にした専門居酒屋から、価格を武器に日常利用を取り込む総合大衆酒場への再設計とも読み取れる。


値下げには当然リスクもある

もちろん、100円ハイボールが成功すると決まったわけではない。

最大のリスクは、客数や追加注文が想定ほど増えなかった場合だ。

既存客がこれまで450円の商品を注文していたのに290円の商品へ移るだけなら、売上を自ら削る「カニバリゼーション」が発生する。

さらに原材料、人件費、物流費、光熱費が上昇すれば、低価格を維持するハードルはさらに高くなる。

だからこそ今後見るべき数字は、100円ハイボールの販売杯数だけではない。

既存店客数、客単価、料理の注文点数、来店頻度、原価率、店舗利益。

このあたりがどう変化するかが重要になる。


50円串で客を呼び、100円ハイボールで再び呼ぶ

串カツ田中の戦略を整理すると、非常にシンプルな構造が見えてくる。

「値上げして1人から多く取る」のではなく、

「安い」と感じる商品を強烈に打ち出し、来店客数そのものを増やす。

2025年には50円の無限串がその役割を担った。

そして2026年、その役割を100円ハイボールにも広げた。

飲食店の倒産が過去最多となる環境で、値下げに踏み切るのは一見すると逆張りに見える。

しかし無限串で客数を伸ばした実績、約350店舗の規模、店舗オペレーションの標準化、AI発注・原価管理まで含めて考えると、単なる安売りとは少し違った姿が浮かぶ。

「商品一つ一つで利益を最大化する」のではなく、「店全体で利益を残す」。

100円ハイボールは、その考え方を象徴する商品なのかもしれない。

串カツ田中のリブランディングが成功したかどうかを判断するには、今後公表される既存店客数や客単価、利益率を追う必要がある。

値上げが当たり前になった外食市場で、「値下げして客を増やす」という逆方向の戦略がどこまで通用するのか。

居酒屋業界にとっても注目すべき試みになりそうだ。


Q串カツ田中の100円ハイボールは期間限定?
A2026年9月10日から始まった新グランドメニューとして案内されており、過去の「串の日」のような数日間限定キャンペーンとは位置付けが異なる。無限ハイボール(トリス)は税抜100円(税込110円)で提供されている。
Q串カツ田中は店舗数を減らしている?
A2025年11月期末時点の「串カツ田中」は344店舗。同期には19店を出店し、13店が退店した。直近でも新規出店が続いている。
Q50円の「無限串」は本当に売れている?
A同社によると、2025年4月の販売開始から2026年3月までにシリーズ累計販売数2,000万本、累計売上10億円を突破した。

※本記事は公開されている企業情報、報道内容、地域特性、市場動向などをもとに編集部が独自に考察した内容です。企業や関係者が公表している出店理由・経営方針を断定するものではなく、一部に編集部の見解や推測が含まれます。最新かつ正確な情報は、各企業・自治体の公式発表をご確認ください。

週刊TAKAPI編集部:黒木