愛知県は9月30日、一宮市の医療法人有俊会(いまむら病院)が、新型コロナウイルス感染症患者を受け入れる医療機関を対象とした「愛知県医療従事者応援金」を不正に受給していたと認定し、交付決定の一部を取り消した。
返還を求めた金額は1000万9020円。
県の検査では、実際には行われていない消毒作業を行ったとする虚偽の納品書だけでなく、実際には行われていない酸素療法を実施したとする改ざんされた診療録の写しが、実績報告書に添付されていたことが確認されたという。
医療法人には、返還金とは別に年10.95%の加算金も課される。
医療従事者を支えるための「応援金」
問題となったのは、コロナ患者を受け入れる入院医療機関を対象とした「愛知県医療従事者応援金」。
医師や看護師、臨床検査技師など、感染リスクを抱えながら患者対応にあたった医療従事者の処遇改善や、患者受け入れに必要となる施設内の消毒作業などを支援する制度だった。
患者の症状に応じて基準額が算定され、酸素療法を必要とする患者への対応なども算定に関係する。
その制度を利用していたのが、一宮市今伊勢町本神戸字無量寺東17に所在する医療法人有俊会(いまむら病院)だった。
代表者は理事長の今村洋史氏。
4回で計1748万9020円を受給
愛知県によると、医療法人有俊会に対する応援金の交付実績は2021年度から2022年度までの計4回。
2021年度第1回が500万円、第2回が50万円。
2022年度は第1回が1088万9020円、第2回が110万円で、交付総額は1748万9020円に上る。
今回、県が交付決定を取り消したのは、この全額ではない。
対象となったのは、2022年度第1回交付分のうち1000万9020円だった。
発端は理事の詐欺罪での起訴
事態が大きく動いたのは2026年2月17日。
愛知県によると、医療法人有俊会の理事が応援金を詐取したとして、名古屋地検から詐欺罪で起訴された。
起訴を受け、愛知県は補助金交付が適正だったのかを確認するため、法人から提出されていた関係資料の検査や関係者からの情報収集を開始した。
その結果、県は法人から提出されていた資料について、内容が虚偽だったことを確認したとしている。
なお、刑事事件については起訴段階であり、刑事責任については今後の裁判で判断される。
「行われていない消毒作業」虚偽の納品書
県が不正事実として明らかにした一つが、消毒作業をめぐる納品書だった。
県によると、
実際には実施されていない消毒作業が、あたかも実施されたかのように記載された虚偽の納品書
が作成され、その納品書を添付した実績報告書が県へ提出されていた。
つまり、県が今回確認したのは単なる申請内容の記載ミスではない。
実施されていない作業について、実施されたとする内容の書類が補助金の実績報告に使用されていたということになる。
さらに「診療録の写し」も改ざん
県が確認した不正は、それだけではなかった。
患者への酸素療法に関係する診療録についても問題が確認された。
県によると、
実際には実施されていない酸素療法が実施されたとする、改ざんされた診療録の写し
が実績報告書に添付されていた。
医療現場で患者の診療内容を記録する診療録。
今回県が公表した内容では、その「写し」が改ざんされ、補助金の実績報告に使われていたことになる。
愛知県が「不正受給」と認定
こうした検査結果を踏まえ、愛知県は医療法人有俊会による補助金の受給を「不正受給」と認定した。
9月30日付で、愛知県補助金等交付規則第16条第1項、第2項に基づき交付決定の一部を取り消した。
取消額は1000万9020円。
県は同日付で法人に返還を要請し、期限を2026年10月16日としている。
1000万円だけではない 年10.95%の加算金
法人側が支払うことになるのは、1000万9020円だけではない。
愛知県は補助金等交付規則第18条第1項に基づき、返還金とは別に加算金の納付も求める。
加算金は、補助金を受領した日から実際に返還金を納付する日までの日数に応じて算出され、利率は年10.95%。
そのため、最終的な納付額は今回取り消された1000万9020円を上回ることになる。
コロナ禍の医療現場を支えるための公金
今回の問題で見落としてはならないのは、不正受給が認定された制度が何のために設けられていたのかという点だ。
医療従事者応援金は、新型コロナの感染拡大という異例の状況の中、感染リスクと向き合いながら患者を受け入れていた医師、看護師、臨床検査技師などを支えるための公金だった。
また、医療機関が患者を受け入れるために必要となる消毒作業などにも公費が投入された。
今回、県が認定した不正には、その制度の支給根拠そのものに関わる「消毒作業」と「酸素療法」の双方が含まれている。
総額1748万円余りのうち、なぜ1000万円余りなのか
一方、今回の県の決定には今後確認すべき点も残る。
法人が2021年度から2022年度に受け取った応援金は計1748万9020円。
これに対し、今回取り消されたのは1000万9020円だ。
県は、名古屋地検が起訴した対象である2022年度第1回交付決定額の一部を取消対象としている。
残る交付分についてどのような確認が行われたのか。
また、虚偽の納品書がどのような経緯で作成されたのか、改ざんされた診療録の写しがどの段階で作成・提出されたのかについても、今回の県発表だけでは詳細は明らかになっていない。
週刊TAKAPIでは、愛知県による行政上の不正認定と、名古屋地検による刑事事件の双方について、引き続き確認を進める。
このニュースのポイント
※刑事事件については起訴段階であり、被告の有罪が確定したものではありません。
担当記者:鈴木

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