大阪府堺市で2019年、いじめを受けて不登校になっていた市立中学校の女子生徒が自ら命を絶った問題で、市は10月4日、いじめと死亡との関連について改めて検証する再調査を本格的に始めました。
前回の第三者委員会は、女子生徒が受けたいじめを重大事態と認定し、いじめと不登校との因果関係も認めました。一方で、いじめと女子生徒の死亡との因果関係については認めませんでした。
その後、前回の調査では確認できなかった女子生徒のスマートフォンから、亡くなる前に同学年の生徒から送られた「地獄に落ちろ」といったメッセージや、女子生徒の精神的な苦痛をうかがわせる記録が新たに確認されました。
市は、こうした資料について、前回の調査結果に影響を及ぼす可能性がある重要な事実と判断しています。
女子生徒が亡くなってから7年。今回の再調査では、前回確認できなかった記録を加えた場合、死亡との関連についての評価が変わるのかが最大の焦点になります。
10月4日、第1回の再調査委員会
堺市は10月4日、「堺市いじめ問題再調査委員会」の第1回会合を開きました。
再調査委員会は、法律、医療、心理、福祉、教育などの専門家で構成され、市長から諮問を受けて、前回の重大事態調査を改めて検証します。
今回の再調査は、単に7年前の事案をもう一度調べ直すものではありません。
前回の調査時には確認できなかったスマートフォン内の記録という、新たな資料を加えて、女子生徒が不登校になった後の状況や心理状態、いじめとの関連を再検証するものです。
「死ね」「うざい」 いじめを受け不登校に
女子生徒は当時、堺市立中学校に通っていました。
学校生活の中で、同級生から「死ね」「うざい」などと言われるいじめを受け、その後、不登校になりました。
前回の第三者委員会は、女子生徒が受けた行為をいじめ重大事態と認定。
さらに、いじめが女子生徒の不登校につながったことについても因果関係を認めました。
一方、女子生徒が自ら命を絶つまでには不登校となってから一定の期間があり、その間もいじめの影響が継続していたとまでは認定できないとして、死亡との因果関係については認めませんでした。
前回はなぜ「死亡との関連」を認めなかったのか
今回の再調査を理解するうえで重要なのが、前回の第三者委員会がどこまで認定していたのかです。
前回の結論を整理すると、
いじめはあった。
いじめによって女子生徒は不登校になった。
一方で、
その影響が女子生徒の死亡に至るまで続いていたとまでは確認できなかった。
というものでした。
つまり、「いじめの存在」を否定した調査ではありません。
問題は、不登校となった後から女子生徒が亡くなるまでの期間に、いじめや同級生との関係がどのように影響し続けていたのかを十分に確認できなかった点にありました。
今回、新たに確認されたスマートフォン内の記録は、この部分を再検証する重要な材料になります。
なぜ7年後に再調査なのか 前回はスマホ内部を確認できず
では、なぜ重要なメッセージが前回の調査に反映されなかったのでしょうか。
堺市によると、前回の重大事態調査当時、女子生徒のスマートフォンにはパスワードが設定されており、端末内部の情報を確認できませんでした。
その後、保護者が端末のロックを解除。
内部に保存されていた画像やメッセージなどを確認できるようになり、遺族が再調査を求める際に市へ資料を提出しました。
市は内容を精査し、不登校期間中の女子生徒の心情を推察でき、前回の調査結果に影響を及ぼす可能性がある重要な事実が確認されたとして、再調査を決めました。
今回のポイントは、新たな資料が後から作られたわけではなく、前回の調査時には存在していたものの、端末のロックによって確認できなかった記録が後になって確認可能になったことです。
スマホに「地獄に落ちろ」 亡くなる前にもメッセージ
新たに確認された資料には、女子生徒が亡くなる前の時期に、同学年の生徒から送られた「地獄に落ちろ」といった攻撃的なメッセージが含まれていました。
さらに、女子生徒自身が精神的な苦痛を抱えていたことをうかがわせる記録も確認されています。
この点は、前回の調査結果と大きく関わります。
前回は、不登校となった後も、いじめの影響が死亡に至るまで継続していたとまでは認定されませんでした。
しかし、亡くなる前の時期にも同学年の生徒から攻撃的なメッセージが届いていたことが確認されたことで、不登校後も女子生徒がどのような人間関係や心理的負担の中にいたのかを改めて検証する必要が生じました。
2025年11月に遺族が再調査要望 2026年2月に市が決定
遺族は2025年11月、スマートフォンから新たな資料が確認されたとして、堺市に再調査を求める要望書を提出しました。
市は提出された資料を精査し、2026年2月17日に再調査を実施することを正式に決定しました。
市はその理由について、前回の調査結果に影響を及ぼす可能性のある新たな重要事実が判明したためと説明しています。
そして10月4日、第1回の再調査委員会が開催されました。
遺族は以前にも再調査を求めていた
遺族が再調査を求めたのは今回が初めてではありません。
遺族は2022年にも、前回の調査が十分ではなかったなどとして再調査を求めました。
しかし、市は当時、必要な調査は行われているとして再調査を実施しませんでした。
その後、スマートフォンから前回確認できなかった資料が見つかったことで状況が変わりました。
今回、市が再調査に踏み切った大きな違いは、前回の結論に影響する可能性のある新たな資料が具体的に提出されたことにあります。
再調査で何を検証するのか
再調査で重要になるのは、「地獄に落ちろ」というメッセージが存在したかどうかだけではありません。
検証すべきなのは、女子生徒が不登校となった後も、いじめや同学年の生徒との関係による心理的負担が継続していたのかという点です。
さらに、
女子生徒にメッセージが送られた時期。
その前後の人間関係。
女子生徒が当時残していた記録。
学校や家庭での状況。
学校や市側が女子生徒の状態をどこまで把握していたのか。
こうした事実を総合して、前回確認できなかった期間について改めて検証することになります。
新しいメッセージだけで因果関係が確定するわけではない
今回確認されたスマートフォンの記録は、再調査を実施する重要な材料となっています。
ただし、「地獄に落ちろ」といったメッセージが存在したことだけで、直ちにいじめと女子生徒の死亡との因果関係が確定するわけではありません。
再調査委員会は、メッセージが送られた時期や内容だけでなく、女子生徒の心理状態、その前後の生活状況、学校や家庭との関係なども含めて検証する必要があります。
一方で、前回の第三者委員会が確認できなかった資料が存在していたことも事実です。
今回問われるのは、前回の結論そのものを直ちに否定することではなく、新たな資料を加えて検証した場合に「死亡との関連は認められない」という評価が変わるのかという点です。
母親「当時は届かなかった娘の想い、その言葉が届くように」
再調査委員会が始まったことを受け、女子生徒の母親は、
「当時は届かなかった娘の想い、その言葉が届くように心から願っています」
とコメントしています。
遺族は、前回確認できなかったスマートフォンの資料も含め、女子生徒が亡くなるまでに何が起きていたのかを改めて検証するよう求めています。
7年を経て改めて問われる「不登校後の時間」
今回の再調査で最も重要なのは、女子生徒が不登校となった後の期間です。
前回の調査では、いじめから不登校に至るまでの関連は認められましたが、その影響が死亡まで継続していたとまでは認定されませんでした。
今回、新たに確認されたスマートフォンの記録が、不登校後の女子生徒の心理状態や同学年の生徒との関係をどこまで明らかにするのか。
そして、それを踏まえて前回の評価が維持されるのか、変更されるのか。
7年を経て始まった再調査では、この空白期間をどこまで具体的に検証できるかが焦点となります。
編集部まとめ
堺市の女子中学生が2019年に自ら命を絶った問題で、市がいじめと死亡との関連について再調査を始めました。
前回の第三者委員会は、いじめと不登校との因果関係を認めた一方、死亡との因果関係については認めませんでした。
今回、状況を大きく変えたのが、前回の調査では端末のロックによって確認できなかった女子生徒のスマートフォンです。
その後、端末内部を確認できるようになり、亡くなる前の時期に同学年の生徒から送られた攻撃的なメッセージや、女子生徒の苦痛をうかがわせる記録が確認されました。
市は、こうした資料を前回の調査結果に影響を及ぼす可能性がある重要な事実と判断しています。
再調査の焦点は、不登校となった後もいじめの影響が続いていたのか、そして新たな資料を加えたことで前回の「死亡との因果関係は認められない」という評価が変わるのかという点です。
週刊TAKAPI 編集部/一条
特記事項
本稿は2026年10月4日までに確認できた堺市の公表内容、前回の調査結果、新たに確認された資料に関する情報を整理して構成しています。
女子生徒の死亡といじめとの因果関係については現在再調査中であり、結論は確定していません。
また、新たに確認されたメッセージの存在だけをもって、特定の生徒の責任や女子生徒の死亡との因果関係が確定したものではありません。
未成年者のプライバシー保護のため、女子生徒や関係する生徒を特定する情報は掲載していません。

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