相続したものの、「使う予定がない」「売ろうとしても買い手が見つからない」。
こうした土地を一定の条件のもとで国に引き渡せる「相続土地国庫帰属制度」が、2023年4月のスタートから3年を迎えた。
制度の利用が広がる一方、新たな課題も浮かび上がっている。
それは、国が引き取った土地を、その後どうするのかという問題だ。
財務省は、国庫に帰属した土地の売却を進めるため、現状有姿で売却する場合のリスクや市場からの反応を価格に反映し、条件によっては当初の評価額から最大93%低い水準まで段階的に評価額を修正できる仕組みを示している。
制度は「相続した不要な土地を国が引き取る」という第1段階から、国が引き取った土地をどう市場へ戻すのかという第2段階に入りつつある。
相続土地国庫帰属制度とは?「いらない土地なら何でも国が引き取る」わけではない
相続土地国庫帰属制度は、相続や遺贈によって土地を取得した人が、一定の要件を満たした場合に、法務大臣の承認を受けて土地を国庫へ帰属させることができる制度だ。
背景にあるのが、全国的な所有者不明土地問題である。
土地を相続しても利用する予定がなく、売却もできない。そのまま相続登記や管理がされなくなれば、時間の経過とともに所有関係が複雑になる可能性がある。
そこで、「土地を手放す」という選択肢を制度として設けた。
ただし、どんな土地でも国に渡せるわけではない。
建物が存在する土地や、境界が明らかでない土地、通常の管理・処分に過大な費用や労力を必要とする土地などについては、申請段階で却下されたり、審査の結果として承認されなかったりする場合がある。
3年間で申請5997件、国庫帰属3119件まで増加
法務省が公表した2026年8月31日時点の速報値を見ると、制度への申請は全国で5,997件となった。
内訳は、
田・畑 2,335件
宅地 2,091件
山林 902件
その他 669件
となっている。
一方、実際に国庫への帰属が認められた土地は3,119件。
内訳では宅地1,164件、農用地989件、森林203件、その他763件となっている。
制度そのものが、土地を手放したい相続人に一定程度利用されていることが数字から分かる。
しかし、ここから先に別の問題が生じる。
国が土地を引き取れば、それで土地の管理問題そのものが消えるわけではない。
所有者が個人から国へ変わるだけで、土地は残るからだ。
財務省が直面した「国が引き取っても売れない土地」
財務省が2026年6月17日の財政制度等審議会・国有財産分科会に示した資料によると、2026年3月末時点で国庫帰属した土地は2,606件。
このうち財務局等が引き受けた宅地948件とその他638件を合わせると1,586件に達していた。
問題はその後だ。
財務省は、国庫に帰属した土地について「市場性に乏しいものが多い」と説明している。
売却できる可能性がある土地については一般競争入札などの手続きを進めてきたものの、2026年6月時点で売却に至ったものはなかった。
つまり、
相続人が手放したかった土地を国が引き取ったものの、国もまた処分に苦戦している
という構図が表面化したことになる。
なぜ最大93%も評価額を下げられるのか
ここで財務省が打ち出したのが、評価方法と売却手続きの見直しだ。
大きなポイントの一つが「現状有姿売買」である。
国が測量や境界確定協議、地下埋設物などの調査を行わず、一定のリスクを買主側が引き受ける形で売却する。
当然、通常の土地売買より買主側のリスクは大きくなる。
そこで財務省は、こうした取引条件を価格に反映する考え方を示した。
標準的な修正率は30%減(残価率70%)とされた。
さらに重要なのが、そこから先だ。
買い手が現れなければ3カ月ごとに価格を修正
土地情報を公開しても買受けなどの要望がなければ、市場から「その価格では需要がない」というシグナルが出たと判断できる。
財務省の方式では、市場の反応を確認しながら3カ月ごとに10%ずつ段階的に評価額を修正していく。
市場性による修正の下限は残価率10%。
さらに先ほどの現状有姿売買による30%の修正を組み合わせると、
当初100 → 70 → 最終的に7
という計算になる。
つまり、当初の評価額から見ると最大93%減となる。
例えば当初の評価額が1,000万円だった土地なら、単純な仕組み上のイメージでは最終的に70万円相当まで下がり得る。
ただし重要なのは、最初からすべての土地を93%引きで販売する制度ではないということだ。
市場から需要がないことを確認しながら段階的に価格を修正する仕組みであり、「国有地の一律93%OFF」と理解するのは正確ではない。
なぜ国は安くしてまで土地を売りたいのか
理由の一つは、土地を所有し続けることにもコストがかかるためだ。
買い手がいない土地を国が保有し続ければ、土地の管理費だけでなく、財務局などによる事務コストも発生する。
しかも相続土地国庫帰属制度の利用が今後さらに増えれば、国が管理する土地も積み上がっていく可能性がある。
財務省自身も、処分できない土地については管理コスト、つまり国民負担が長期にわたって発生することを問題として挙げている。
高い評価額を維持したまま何年間も売れない状態を続けるより、市場の需要を価格に反映し、民間利用へ戻した方が合理的なケースがあるという考え方だ。
