豊橋市が2025年1月に開設した「空家相談窓口」に、開設年度から2026年8月20日までに計124件の相談が寄せられていたことが、週刊TAKAPI編集部の取材で分かった。
最も多いのは空き家の売却に関する相談。一方、所有者が売却を望んでも道路が狭く、解体や売却が難しい物件もある。適切に管理されていない空き家への対応では、所有者と連絡が取れなかったり、相続人が20~30人規模に広がったりするケースもあり、市が対応に苦慮する実態も見えてきた。
豊橋市の公式資料によると、現在の無料相談窓口は2025年1月31日に開設された。空き家の相続、売却、賃貸、解体などをワンストップで相談でき、必要に応じて専門事業者につなぐ仕組みだ。
豊橋市の空き家相談、2025年度は71件
豊橋市建築物安全推進課への取材によると、相談件数は、窓口を開設した2024年度が20件、2025年度が71件、2026年度は8月20日時点で33件だった。
計124件となる。
市が「解決」として集計している件数は、2024年度が10件、2025年度が16件、2026年度が8月20日時点で2件。計28件だった。
ただし、「124件のうち28件しか解決していない」という意味ではない。
相談者の中には、市や相談員から話を聞いて納得し、事業者の紹介までは希望しない人もいる。また、事業者を紹介している途中のケースや、紹介を受けたものの契約には至っていないケースもある。
「相談件数-解決件数」をそのまま未解決件数として扱うことはできない。
最も多い相談は「空き家を売りたい」
市によると、相談内容で最も多いのは売却だという。
背景には、親などから空き家を相続したものの、その後の扱いに困る所有者の存在がある。
担当者によると、すでに相続を終えた人から「この空き家をどうしよう」と相談を受けるケースがあり、売却や解体を希望する人が目立つ。
ただ、売却と解体は必ずしも別々ではない。
空き家の中に残された家財を処分したり、庭木を伐採したりした後、建物を解体して土地を売却するなど、複数の工程を経るケースもある。
そのため市が集計する「解決」も、すべてが不動産の売却成立を意味するものではない。売却のほか、解体、片付け、庭木の伐採など、相談者が希望した対応が完了したケースが含まれている。
相談から地元の不動産・解体業者へ どんな仕組み?
現在の相談窓口を運営しているのは、東京都港区に本社を置く空き家活用株式会社。豊橋市も公式サイトで同社との委託契約による事業であることを明記している。
市への取材によると、相談内容に応じて豊橋市内の不動産会社や解体業者などにつなぐ。
例えば、所有者から「解体したい」という相談が寄せられれば、対応できる事業者を探し、見積もりなどの回答を相談者に提示。その中から相談者が事業者を選択する仕組みだという。
市の公式サイトでも、専門アドバイザーが相談を整理したうえで、不動産事業者、解体業者、弁護士など相談内容に適した専門事業者を紹介するとしている。市内の協力事業者も募集している。 市によると、委託先の選定ではプロポーザルを実施。2者から応募があり、審査を経て現在の事業者を選定したという。市のウェブサイトにも、相談窓口構築・運営業務のプロポーザル関係資料が公開されている。
以前から相談はあった なぜ専用窓口を作ったのか
現在の専用窓口ができる以前も、建築物安全推進課では空き家に関する相談を受けていた。
しかし、市の担当者によると、当時は相談を受けても具体的な事業者を紹介することが難しく、実際の解決まで結びつけることに課題があった。
そこで、相談を受けるだけでなく、必要に応じて専門事業者につなげる仕組みとして現在の窓口を整備した。
市が2025年1月の開設時に発表した資料でも、「どこに相談すればいいのか分からない」「何から手を付ければいいのか分からない」といった所有者の悩みにワンストップで対応し、必要な専門事業者まで紹介することを窓口設置の目的としている。
2024年度から続く案件も 庭木を伐採したが売却は成立せず
相談を受けても、すべての空き家が短期間で処分できるわけではない。
市によると、2024年度から現在まで継続している案件が1件ある。
このケースでは所有者が売却を希望しており、まず家財への対応や庭木の伐採を進めた。その部分は終了したものの、その後の売却については取材時点で成立していないという。
「売りたい」だけでは売れない 道路の狭さが壁になる空き家
物件そのものの条件が解決を難しくする場合もある。
市の担当者が具体例として挙げたのが、空き家まで続く道路が狭い物件だ。
住宅が密集し、建物まで重機が入れなければ、所有者が解体を希望しても工事が難しくなる。立地条件によっては売却自体が難しいケースもあるという。
所有者に処分する意思があっても、空き家の立地や接道状況などによって解決までのハードルが大きく変わる実態がある。
さらに難しい「管理されない空き家」
所有者自身が市に相談してくるケースとは別に、行政側から対応を求めなければならない空き家もある。
豊橋市には、管理不全空家等や特定空家等の認定、措置の方針について協議する「豊橋市空家等対策協議会」が設けられている。
市条例でも、管理不全な状態にある空き家について、市長が所有者らに必要な措置を取るよう助言・指導できるとしている。
市への取材では、特定空家等について過去に1件あったものの、最近は該当案件はないとの説明があった。
一方、管理不全空家等についても複数の案件を扱っている。
市が苦労するのは「所有者と連絡が取れない」ケース
こうした管理されていない空き家で、市が特に苦労するのが所有者との連絡だという。
担当者は取材に対し、対応の難しさについて「まず連絡がつかないというところが一番」と説明した。
連絡が取れなければ、手紙を送り、場合によっては内容証明郵便を使って対応を求める。それでも所有者から回答が得られないケースがあるという。
建物が放置されているからといって、市がすぐに解体・処分できるわけではない。まず所有者を確認し、対応を求めていく必要がある。
相続人が20~30人規模に 全国に散らばるケースも
問題をさらに複雑にするのが相続だ。
市が所有関係を調査すると、相続人が20人以上、場合によっては30人規模に及ぶケースがあるという。
所有者の子だけで終わらず、孫や兄弟姉妹、その子や孫などへ相続関係が広がっている場合があるためだ。
さらに相続人が豊橋市内に住んでいるとは限らない。全国各地に散らばっているケースもあり、市側が相続関係を追い、連絡先を確認するだけでも時間を要する。
空き家問題は、建物の老朽化だけの問題ではない。「誰が所有し、誰が今後の処分を決められるのか」という権利関係が、解決を難しくする要因になっている。
空家バンクとは別制度 豊橋市は利活用と相談の両面で対応
今回取材した「空家相談窓口」と、豊橋市の「空家バンク」は別の制度だ。
空家バンクは、所有者から登録された物件情報を公開し、売却や賃貸などによる利活用につなげる制度。市は空き家の発生予防と地域活性化を目的の一つとしている。
市の空家等対策計画でも、「適切な管理」「利活用」「発生予防・抑制」を柱として空き家対策を進めている。国の空家等対策特別措置法は2015年2月26日に施行された。
相談に来る所有者を専門事業者につなぐ仕組みと、行政側から管理されていない空き家を追う仕組み。その両方が動いている一方、接道条件や複雑な相続関係など、制度だけではすぐに解決できない空き家も残る。
今回の取材で浮かび上がったのは、「空き家を何とかしたい」という所有者の意思だけでは解決できないケースがあるという現実だ。
豊橋市では空き家について無料で相談できる?
できる。豊橋市は空き家所有者や「空き家予備軍」を対象に無料相談窓口を設けており、電話やウェブから相談を受け付けている。専門アドバイザーが内容を整理し、必要に応じて不動産、解体、法律などの専門事業者を紹介する。
空き家を売りたい場合、豊橋市が売買してくれる?
市が直接売買する制度ではない。相談窓口では相談内容に応じた専門事業者を紹介する。また、空家バンクでも、市は売買・賃貸の交渉や契約そのものには関与しないとしている。
所有者が分からない空き家はすぐ撤去できる?
所有者不明や相続関係が複雑な場合は、所有者・相続人の確認や連絡などが必要となり、対応に時間を要することがある。今回の市への取材では、相続人が20~30人規模になるケースも確認された。
【特記事項】
本記事の相談件数・解決件数などは、週刊TAKAPI編集部が豊橋市建築物安全推進課へ電話取材した内容に基づいています。2026年度の相談件数・解決件数は8月20日時点です。また、市が集計する「解決」には売却だけでなく、解体、片付け、庭木の伐採などが完了したケースも含まれます。このため、相談件数から解決件数を差し引いた数字が、そのまま「未解決件数」になるものではありません。
週刊TAKAPI編集部:黒木

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