愛知県豊川市の「空き家バンク」で、現在募集中の物件が9件となっていることが、週刊TAKAPI編集部の市への電話取材で分かった。
2026年度は取材時点で新規登録0件。一方で、すでに4件が成約している。
過去5年度では新規登録が計25件、成約が計22件となっている一方、現在掲載されている物件の中には、制度が始まった2018年(平成30年)から登録が続いている物件も1件あるという。
なぜ成約する空き家がある一方、長期間残り続ける物件もあるのか。
週刊TAKAPI編集部が豊川市の担当者に、空き家バンクの登録状況や成約件数、売れにくい理由について聞いた。
この記事の要点
- 豊川市の空き家バンクで現在募集中の物件は9件
- 2026年度は取材時点で新規登録0件、成約4件
- 2022~2026年度の新規登録は計25件、成約は計22件
- 現在も2018年登録の物件が1件残っている
- 市担当者は長期化する要因として立地や建物の古さを挙げる
豊川市の空き家バンクとは?現在の登録物件は9件
豊川市への取材によると、2026年9月25日時点で空き家バンクに掲載され、募集している物件は9件。
空き家バンクは、空き家などを売りたい・貸したい所有者と、購入・賃借を希望する人をつなぐ仕組みだ。
豊川市では2018年(平成30年)から制度が始まった。
現在掲載されている9件は、これまで登録された全物件の数ではなく、成約などによって掲載を終了した物件を除いた現在募集中の物件数となる。
豊川市の空き家バンク、売買・賃貸の内訳は?
現在掲載されている物件は、売却を希望するものが中心となっている。
市担当者への取材では、「賃貸でも売却でもどちらでもよい」という物件が1件あり、この物件を含めると賃貸として検討できる物件は2件との説明だった。
つまり、豊川市の空き家バンクでは、現時点では賃貸よりも売買を前提とした物件が中心となっている。
豊川市の空き家バンク、過去5年度で新規登録25件・成約22件
週刊TAKAPI編集部は豊川市に、2022年度以降の新規登録件数と成約件数を確認した。
市から回答があった数字は次の通り。
【豊川市 空き家バンクの年度別実績】
2022年度(令和4年度)
新規登録:6件
成約:3件
2023年度(令和5年度)
新規登録:8件
成約:6件
取り下げ:1件
2024年度(令和6年度)
新規登録:4件
成約:4件
2025年度(令和7年度)
新規登録:7件
成約:5件
2026年度(令和8年度・取材時点)
新規登録:0件
成約:4件
【5年度合計】
新規登録:25件
成約:22件
取り下げ:1件
※年度別の新規登録件数と成約件数は、同一物件が同じ年度に登録・成約したことを示すものではありません。
※豊川市は空き家バンクの「成約率」を算出していません。
直近5年度を合計すると、新規登録は25件、成約は22件となる。
2026年度は新規登録0件、それでも4件が成約
特に目を引くのが2026年度だ。
新規登録は取材時点で0件にもかかわらず、成約は4件発生している。
これは、空き家バンクの「登録」と「成約」が必ずしも同じ年度に発生するわけではないためだ。
過去の年度に登録された物件が掲載され続け、2026年度に入ってから成約するケースもある。
空き家バンクの動きを見る際には、新規登録数だけでなく、過去から残る登録物件がどの程度動いているのかを見る必要がある。
「25件登録・22件成約」でも成約率88%とは言えない
ここで注意したいのが「成約率」だ。
過去5年度を単純合計すると、
新規登録25件 成約22件
となる。
数字だけを割り算すれば88%になるが、これは豊川市の空き家バンクの「成約率」を意味しない。
週刊TAKAPI編集部が市に確認したところ、市では空き家バンクの成約率を算出していないという。
例えば2026年度は新規登録0件に対して成約4件となっているように、成約した物件には以前の年度に登録されたものが含まれる。
そのため、単純に「25件のうち22件が成約した」と解釈することはできない。
豊川市で最も長く掲載されている空き家は2018年登録
成約する物件がある一方、長期間にわたって掲載されている物件もある。
市によると、現在募集中の物件で最も古いものは、制度が始まった2018年(平成30年)に登録された1件。
2026年時点でも登録が続いている。
一方、最も新しい物件は2026年3月に登録されたものだという。
そのため、現在の9件すべてが長期間成約していないわけではなく、登録期間には大きな差がある。
なぜ空き家バンクでも売れない?市が挙げた2つの理由
では、なぜ長期間成約しない物件があるのか。
豊川市の担当者が取材で挙げたのが、主に次の2点だった。
「立地」と「建物の状態」だ。
登録される物件の中には、人が多く住んでいる場所から離れているなど、利用しにくい立地のものもあるという。
さらに問題になるのが、空き家そのものの老朽化だ。
「建物がものすごく古い」再利用できない空き家も
担当者によると、空き家バンクへ登録される建物の中には、築年数が経過し、そのまま再利用することが難しい物件もある。
空き家を購入したとしても、そのまま住めるとは限らない。
担当者は取材に対し、購入後などに建物を取り壊し、更地にして引き渡すケースもあると説明した。
比較的状態の良い建物が少ないことについても、空き家の利活用を進める上で一つのネックとの認識を示している。
空き家バンクに登録するのはどんな物件?
空き家を所有している人が、最初から空き家バンクを利用するとは限らない。
市担当者によると、まず所有者自身で売却を試みたり、一般の不動産会社に相談したりするケースがある。
そこで売却できれば、市の空き家バンクには登録されない。
一方、不動産会社を通じても売れず、それでも物件を手放したいという所有者が空き家バンクに登録するケースが多いという。
この点は、空き家バンクに長期間残る物件が存在する背景を考える上でも重要だ。
一般の不動産市場で買い手が見つからなかった物件が登録されるケースがある以上、空き家バンクに掲載しただけですぐ成約するとは限らない。
空き家の相談から登録する割合は?担当者「半々ぐらい」
空き家について相談した所有者のうち、どの程度が実際に空き家バンクへ登録するのか。
豊川市では、この割合について具体的な統計値は示していない。
ただ、担当者は取材に対し、実務上の感覚として「半々ぐらい」との認識を示した。
これは市が集計・公表している正式な登録率ではないため、「相談者の50%が登録する」と断定することはできない。
空き家バンクを途中で取り下げる人はいる?
成約しなければ永久に掲載され続けるわけでもない。
所有者の意向によって、登録を取り下げる場合もある。
市が過去5年度について確認したところ、2023年度(令和5年度)に1件の取り下げがあった。
担当者によると、長期間掲載しても売れなかったことから登録をやめたり、所有者自身が売却そのものをやめたりするなど、理由はさまざまだという。
豊川市には空き家のリフォームや片付けを支援する制度も
豊川市では、空き家の流通や利活用を進めるため、空き家バンクに関連した支援制度も設けている。
市担当者によると、空き家バンクへの登録後、契約者が決まるなど一定の条件を満たした場合、物件のリフォームや家財の片付けなどに対する補助を受けられる制度があるという。
古い住宅の場合、購入価格だけでなく、改修や家財処分などの費用が発生する可能性がある。
こうした負担を軽減し、次の所有者・利用者につなげることも空き家対策の一つとなっている。
豊川市の空き家バンクは今後どうなる?
今回の取材で浮かび上がったのは、単純な「登録件数」だけでは分からない空き家バンクの実態だ。
2026年度は取材時点で新規登録0件ながら4件が成約している。
一方で、現在も2018年から登録が続く物件が1件ある。
成約する物件がある一方で、立地や建物の老朽化などによって長期間残る物件もあるということだ。
空き家バンクが実際の空き家解消につながるかを見るには、「何件登録されているか」だけでなく、どの程度の期間で成約したのか、長期掲載物件をどう流通させるのかも重要になる。
週刊TAKAPIでは今後も、豊川市を含む東三河の空き家対策について取材を続ける。
特記事項
※本記事の登録件数、成約件数、取り下げ件数などは、2026年9月25日に週刊TAKAPI編集部が豊川市 空き家バンク担当部署へ電話取材をもとにしています。年度別の新規登録件数と成約件数は同一物件を示すものではなく、市は成約率を算出していません。
週刊TAKAPI編集部:黒木

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