編集部の考察①「土地は持っていれば価値がある」という前提が崩れている
今回の見直しが象徴しているのは、日本の不動産を取り巻く環境の変化ではないだろうか。
高度経済成長期から長く、日本では「土地は資産」というイメージが強かった。
しかし人口減少が進む地域では、土地を所有していること自体が必ずしもメリットとは限らない。
固定資産税、草刈り、樹木管理、境界問題、近隣対応など、土地には所有するだけで負担が生じる場合がある。
そして売却しようとしても需要がなければ現金化できない。
相続土地国庫帰属制度の登場、そして今回の売却価格の柔軟化は、「土地=資産」だけでは説明できない時代に入っていることを制度側も認識し始めた動きと見ることができる。
編集部の考察② 最大93%減は「土地の本当の市場価値」を突き付ける可能性
もう一つ注目したいのが、公的な評価額と実際に買い手が付く価格との違いだ。
土地には相続税評価額、固定資産税評価額、公示価格、実際の成約価格など複数の「価格」が存在する。
しかし最終的な市場価値は、実際にその金額を支払う買い手がいるかどうかに左右される。
財務省資料でも、国庫帰属した土地について市場性に乏しいものが多いことが指摘されている。
買い手が現れないたびに価格を下げていき、それでも売れないのであれば、結果として「その地域でその土地はいくらなら取引されるのか」という現実的な価格が見えてくる可能性がある。
これは今後、地方の土地政策を考えるうえでも重要なデータになるだろう。
編集部の考察③「国に返せば終わり」ではなく制度の出口が重要になる
相続土地国庫帰属制度は、所有者不明土地を増やさないための「入口」として重要な制度だ。
しかし制度利用が増えれば増えるほど、今度は国が取得した土地をどう処分・活用するのかという出口政策が重要になる。
隣接地所有者への売却、地域住民への売却、自治体による利用、農地としての活用など、土地によって最適な出口は異なる。
実際、法務省によると、2026年8月末までに申請を取り下げた1,139件のうち586件は「有効活用の見込みが生じた」ことが理由だった。
国へ渡す前の段階でも、自治体や国の機関による活用、隣接地所有者による引き受け、農地としての活用などにつながるケースが出ている。
つまり今後は、
「国が土地を引き取る制度」から「使われなくなった土地を再び利用可能な人へ動かす制度」へ
発展できるかどうかが問われる。
相続土地国庫帰属制度は今後どうなる?
制度開始から3年。
申請件数は約6,000件、国庫帰属は3,000件を超えた。
制度そのものは動き始めている。
一方で、国庫帰属した土地が増えれば、国による管理負担も増加する。
今回の財務省による評価方法の柔軟化は、この問題への一つの対応策だ。
今後注目されるのは、実際にどの程度の土地が売却できるようになるのかだろう。
最大93%まで評価額を下げても買い手が現れない土地が多数残るのであれば、価格だけでは解決できない問題であることも明確になる。
その場合、自治体との連携や隣接地との一体利用、土地の再編、公共利用など、別の出口策がさらに求められる可能性がある。
相続した「使わない土地」を個人だけの問題として抱え込ませないために始まった相続土地国庫帰属制度。
3年を経て、次に問われているのは、国が引き取った「使われない土地」を再び社会の中でどう動かすかである。
編集部注記
本記事の「編集部の考察」は、財務省・法務省が公表している資料、制度の運用状況、不動産市場を取り巻く環境をもとに週刊TAKAPI編集部が独自に考察したものです。将来の制度変更や土地価格を断定するものではありません。最新の制度内容については法務省、財務省などの公式発表をご確認ください。
週刊TAKAPI 編集部/黒木
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