蒲郡市職員による被保護者との面談記録の偽造などが公益通報で指摘された問題を巡り、職員が実際に訪問した日時や行動を客観的に確認する資料について、市が公用車使用記録以外は調査していなかったことが、週刊TAKAPIの書面取材で分かった。
市の公益通報調査委員会は、死亡した被保護者32人全員についてケース記録票など複数の資料を個別に照合。通報で指摘された4項目はいずれも認定できず、「面談記録の偽造は存在しなかった可能性が高い」と結論づけている。
一方、訪問実態を確認する手掛かりとなり得た公用車使用記録は保存期間が1年だったため、調査時には当時の記録がすでに廃棄されていた。
今回、市は週刊TAKAPIに対し、公用車使用記録以外の客観資料については調査していないと回答。公用車使用記録の保存期間は現在も1年で、延長についても検討していないことを明らかにした。
死亡した被保護者32人、全員を個別に照合
週刊TAKAPIは市に対し、死亡した被保護者32人について、32人全員の死亡日とケース記録票上の面談日などを個別に照合したのか確認した。
市は、
「32人全員につきまして個別に照合いたしました」
と回答した。
照合に使用した資料については、死亡廃止となったケース記録票のほか、死亡届、生活保護開始時の徴収書類、生活保護台帳、生活保護決定調書を挙げた。
調査委員会は、これらの資料や関係者への確認などを踏まえ、公益通報で指摘された4項目について事実を認定できず、存在した可能性も低いと判断した。
その上で、福祉課職員Aによる被保護者との面談記録について、
「偽造は存在しなかった可能性が高い」
と結論づけている。
ここで注意が必要なのは、「偽造が存在しなかった」と断定したのではなく、調査の結果として「存在しなかった可能性が高い」とした点だ。
公用車使用記録は保存期間1年ですでに廃棄
一方、調査では確認できなかった資料もあった。
公用車使用記録は保存期間が1年だったため、公益通報の対象となった時期の記録は調査時点ですでに廃棄されていた。
このため、当時の公用車使用記録そのものから、職員の訪問日時や行動を確認することはできなかった。
そこで週刊TAKAPIは、公用車使用記録以外に、実際の訪問日時や職員の行動を客観的に確認できる資料を調査したのか市へ質問した。
具体的には、業務日誌、出張・外出記録、庁内システムの記録、勤務記録などを例として挙げた。
市の回答は、
「公用車使用記録以外につきましては調査しておりません」
だった。
「他の資料を一切調査していない」という意味ではない
この回答は、範囲を正確に整理する必要がある。
蒲郡市がケース記録票や死亡届など、ほかの資料を一切調査していなかったという意味ではない。
市は死亡した被保護者32人全員について、ケース記録票、死亡届、生活保護台帳、生活保護決定調書などを個別に照合している。
今回、市が「公用車使用記録以外は調査していない」と回答したのは、職員が実際に訪問した日時や行動を、ケース記録とは別の客観資料によって確認したのかという週刊TAKAPIの質問に対してだ。
調査委員会の結論と、訪問実態を確認するために利用できた資料の範囲は、分けて整理する必要がある。
保存期間は現在も1年 延長は「検討していない」
週刊TAKAPIは、過去の公用車使用記録が保存期間満了で確認できなかったことを踏まえ、現在の保存期間についても確認した。
市によると、現在も保存期間は1年で変更されていない。
さらに今回の調査を受け、保存期間の延長を検討したか尋ねたところ、
「保存期間の延長につきましては検討しておりません」
と回答した。
今回、過去の訪問実態を確認する際に公用車使用記録を利用できなかったものの、それを受けた保存期間の延長検討には至っていない。
ケース記録の作成・確認方法も変更なし
生活保護における面談記録やケース記録票の作成、確認、保存方法についても、市は今回の調査後に運用変更や見直しを行っていない。
現在は従来通り、ケースワーカーが訪問や面談を行った後にケース記録票へ内容を記載し、上席である福祉事務所長まで決裁を受けることで確認しているという。
週刊TAKAPIが、今回の調査を通じて記録保存やケース管理の面で改善が必要と判断された事項があったか確認したところ、市は、
「ありませんでした」
と回答した。
新たな再発防止策や改善措置もなし
市は、今回の公益通報調査を受けた新たな再発防止策や制度改善についても実施していない。
理由として、市は調査委員会の結論を挙げている。
調査委員会は、公益通報で指摘された4項目を認定できず、事実が存在した可能性も低いと判断。「面談記録の偽造は存在しなかった可能性が高い」と結論づけた。
さらに、調査委員会から再発防止策についての提言もなかったことから、市は新たな改善措置を行っていないとしている。
調査結果と、確認できた資料の範囲
今回の追加取材で、市の調査内容と調査後の対応がより具体的になった。
死亡した被保護者32人については、ケース記録票だけでなく死亡届、生活保護台帳など複数の資料が個別に照合されていた。
調査委員会は、その結果を踏まえて公益通報で指摘された事実を認定せず、「面談記録の偽造は存在しなかった可能性が高い」と結論づけた。
一方で、職員の訪問日時や行動を別の客観資料から確認する点では、公用車使用記録は保存期間満了で確認できず、それ以外の資料についても調査していなかったことが今回の書面回答で分かった。
このことだけを理由に、調査委員会の結論が誤っていた、あるいは実際に面談記録の偽造が存在したと判断することはできない。
ただ、公益通報調査について検証する上では、何を確認できたのか、何を確認できなかったのかを区別して示すことも重要となる。
編集部まとめ
蒲郡市の公益通報調査委員会は、死亡した被保護者32人全員について複数の行政資料を個別に照合し、面談記録の偽造について「存在しなかった可能性が高い」と結論づけた。
一方、職員の訪問日時や行動を客観的に確認する公用車使用記録は、保存期間1年のため調査時にはすでに廃棄されていた。
週刊TAKAPIの書面取材に対し、市は、訪問実態を確認するための公用車使用記録以外の客観資料については調査していないと回答した。
さらに、公用車使用記録の保存期間は現在も1年。延長についても検討していない。
ケース記録票の作成・確認・保存方法についても運用変更はなく、新たな改善措置も実施されていない。
調査委員会が出した結論と、その結論に至る過程で確認できた資料の範囲は別の論点だ。
週刊TAKAPIでは、公益通報調査の手法や行政記録の保存のあり方について、今後も確認・検証を続ける。
週刊TAKAPI 編集部/成田
特記事項
本記事は、蒲郡市の「被保護者面談記録の偽造等」に関する公益通報調査について、週刊TAKAPIが蒲郡市企画部人事課へ追加取材を行い、書面で得た回答を中心に構成しています。
蒲郡市公益通報調査委員会は、通報で指摘された4項目を認定できず、それらの事実が存在した可能性も低いとして、面談記録の偽造について「存在しなかった可能性が高い」と結論づけています。本記事は、面談記録の偽造が存在したと認定または断定するものではありません。
市の「公用車使用記録以外につきましては調査しておりません」との回答は、職員の訪問日時や行動を客観的に確認する資料について尋ねた質問に対するものです。死亡した被保護者32人については、ケース記録票、死亡届、生活保護台帳など複数の行政資料が個別に照合されています。
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