2027年4月の開設が予定されている名古屋市立大学医学部保健医療学科看護学専攻「蒲郡キャンパス」をめぐり、蒲郡市が負担する公費の輪郭が見え始めている。
週刊TAKAPIが蒲郡市の2025年度、2026年度当初予算資料を確認したところ、看護系大学化・蒲郡キャンパス設置に直接関連する事業として計上された当初予算は、2025年度が5274万4000円、2026年度が3026万8000円。2年度を単純合計すると8301万2000円となる。
さらに2026年度には、現在の蒲郡市立ソフィア看護専門学校について、校舎外壁等改修1億4140万円、校舎内改修3550万円、学内LAN整備2950万円が計上された。3工事の合計は2億640万円に上る。
ただし、これら2億640万円の工事費すべてが「大学化だけのための費用」と確認されているわけではない。
大学化に直接関連する準備事業費と、既存校舎の維持・改修費をどこまで一体の事業コストとして捉えるのか。2027年4月の開設を前に、蒲郡市が最終的にどの程度の公費を投入するのか、その全体像を整理する必要がある。
2025年度は5274万4000円 うち負担金5200万円
蒲郡市が大学化に向けた予算を本格的に計上したのは2025年度だ。
当初予算には「(仮)地域看護学専攻設置推進事業費」として5274万4000円を計上。このうち5200万円が「設置推進事業費負担金」とされていた。
市の主要・新規事業資料では、この5274万4000円について全額を一般財源として計上している。
事業目的として市は、看護師養成事業を将来にわたり継続し、高度化する蒲郡市民病院の医療に対応できる人材を育成するため、ソフィア看護専門学校の施設を活用して名古屋市立大学の新たな看護学教育課程を設置すると説明していた。
同年4月には「看護専門学校大学化準備室」も新設され、ソフィア看護専門学校内に配置された。
この時点で大学化は、構想や要望の段階を超え、市の組織と予算を伴う事業として動き始めていたことになる。
2026年度は3026万8000円 うち負担金2500万円
2026年度になると、事業名称はより具体的な「名古屋市立大学蒲郡キャンパス設置準備事業費」に変わった。
当初予算額は3026万8000円。
このうち2500万円が「名古屋市立大学蒲郡キャンパス設置準備事業費負担金」として計上されている。
2025年度の5274万4000円と2026年度の3026万8000円を合わせると、看護系大学化・蒲郡キャンパス設置に直接関連する事業として計上された当初予算は、
2025年度 5274万4000円
2026年度 3026万8000円
2年度合計 8301万2000円
となる。
ここで注意が必要なのは、各年度の「負担金」を事業費とは別に加算しないことだ。
5200万円、2500万円はいずれも、それぞれの年度の事業費に含まれる内訳である。
2026年度、校舎改修3工事で2億640万円
一方、2026年度予算で大きく膨らんでいるのが「看護専門学校一般管理費」だ。
2025年度は5069万7000円だったのに対し、2026年度は2億6237万4000円。
前年度から2億1167万7000円増え、約5.2倍となった。
2026年度に計上された主な工事は、
- 校舎外壁等改修工事 1億4140万円
- 校舎内改修工事 3550万円
- 学内LAN整備工事 2950万円
の3件。
合計すると2億640万円となる。
3工事の合計額は、一般管理費の前年度からの増加額2億1167万7000円に近い規模となっている。
ただし、この数字だけから「一般管理費増加のほぼすべてが大学化による」と結論づけることはできない。
2億640万円を「大学化費用」と断定できない理由
名市大蒲郡キャンパスは、現在のソフィア看護専門学校の施設を活用して開設する計画となっている。
そのため、開設直前年度に同じ施設で外壁、内部、LANの大規模な工事が実施されることは、大学化との関係を確認すべき重要な材料になる。
一方、蒲郡市の予算資料上、これら3工事は「看護専門学校一般管理費」の中に計上されている。
現時点の公開資料だけでは、
「どの工事が大学化に必要なものなのか」
「どこまでが既存校舎の老朽化対策なのか」
「専門学校運営上も必要だった改修なのか」
を明確に分けることはできない。
そのため、
8301万2000円
+
2億640万円
を単純に合算し、「大学化に約2億9000万円」とするのは適切ではない。
今回確認できた数字は、性格の異なる予算として分けて見る必要がある。
逆に「8301万円だけ」が市負担の全体像でもない
一方で、8301万2000円だけを「蒲郡キャンパスに市が使う総額」と見ることもできない。
名古屋市立大学が公表している蒲郡キャンパスの概要では、設置準備だけでなく、開設後の「運営にかかる経費」についても蒲郡市が負担する計画となっている。
※名古屋市立大学公式サイトでは、蒲郡キャンパスの「設置準備・運営にかかる経費負担」について「蒲郡市により負担」と明記している。
https://www.nagoya-cu.ac.jp/news/20250731gamagori/
つまり、市の財政負担は2027年4月の開設時点で終わるとは限らない。
今後確認すべきなのは、
- 開設までの準備費総額
- 校舎改修費のうち大学化に伴う部分
- 大学側へ支払う負担金の算定根拠
- 教育設備や備品の追加整備費
- 開設後の年間運営負担
- その負担が何年間続くのか
という点だ。
名古屋市立大学は、名古屋市を設立団体とする公立大学法人名古屋市立大学が設置・運営する。
その一方、蒲郡キャンパスについては、設置準備と運営にかかる経費を蒲郡市が負担する計画となっている。
この費用構造は、蒲郡キャンパス事業を検証する上で重要なポイントになる。
協定締結時は「詳細を順次決定」
蒲郡市、名古屋市、名古屋市立大学の3者は2025年3月27日、ソフィア看護専門学校の施設を活用し、名市大医学部保健医療学科に新たな看護師養成教育課程を設置するための協定を締結した。
当時、市は準備事業の詳細について3者で協議し、順次決定していくとしていた。
つまり、協定締結時点ですべての費用や事業内容が確定していたわけではない。
その後、2026年度予算には外壁改修、内部改修、学内LAN整備など、具体的な施設工事が表れてきた。
2027年4月の開設予定まで約半年。
当初の構想から実際の整備段階へ進んだ今、市の負担額についても、個別予算ではなく全体像を確認する必要性が高まっている。
市議会でも「経費負担」は早くから論点
市の経費負担は、大学化計画が具体化した当初から市議会でも論点となってきた。
2025年3月定例会では、看護専門学校大学化準備室の新設や今後のスケジュール、市民病院への看護師確保策などとともに、市の経費負担についても質問項目として取り上げられている。
2026年度当初予算については、市議会で議決されている。
つまり、公費投入そのものは議会の議決を経ながら進んでいる。
一方、開設後の年間運営費や将来的な負担まで含めた総額は、現在公表されている個別の当初予算資料だけでは把握しにくい。
大学化で何を得るのか 費用と効果はセットで検証
公費投入の大きさだけで、大学化事業の評価を決めることはできない。
蒲郡市が大学化を進める背景には、ソフィア看護専門学校の志願者減少と、地域の看護師養成機能を将来にわたって維持する必要性がある。
市は、高度化する蒲郡市民病院の医療に対応できる看護人材の育成も、大学化の目的として掲げている。
名市大蒲郡キャンパスでは、1学年50人を募集する計画となっている。
重要なのは、市がいくら支出するかだけではない。
将来的に、
「何人の学生を安定して確保できるのか」
「何人が卒業するのか」
「そのうち何人が蒲郡市や東三河の医療機関で働くのか」
という成果まで確認する必要がある。
開設準備費、施設整備費、運営費と、地域医療にもたらす効果をセットで見ることが、公費投入を検証する上では欠かせない。
「大学が来る」だけでは見えない市の負担
公的資料から現時点で確認できるのは、看護系大学化・蒲郡キャンパス設置に直接関連する事業として、2025年度と2026年度の2年間で8301万2000円が当初予算に計上されたことだ。
さらに2026年度には、ソフィア看護専門学校の一般管理費の中で、外壁、内部、LANの3工事として計2億640万円が計上されている。
ただし、この2つをそのまま合算して「蒲郡キャンパスの総事業費」とすることはできない。
むしろ、今後の検証で重要なのはその内訳だ。
2億円を超える校舎工事のうち、どこまでが大学化のために必要なのか。
開設後、蒲郡市は毎年度いくらを負担するのか。
その負担はいつまで続くのか。
そして、公費投入によって地域の看護人材確保にどのような成果が生まれるのか。
週刊TAKAPIでは今後も関係先への確認を進め、蒲郡キャンパスをめぐる公費負担の全体像を継続して検証する。
編集部まとめ
名市大蒲郡キャンパスをめぐる市の負担は、一つの数字だけでは見えてこない。
看護系大学化・蒲郡キャンパス設置に直接関連する事業として計上された当初予算は、2025年度と2026年度の2年間で計8301万2000円。
一方、2026年度にはソフィア看護専門学校で、外壁、内部、LANの3工事として計2億640万円が予算化された。
この2億640万円すべてを大学化費用と断定することはできないが、開設直前の大規模改修である以上、大学化との関係や費用の内訳は確認すべき論点だ。
さらに、市の負担は設置準備だけでなく、開設後の運営にも及ぶ計画となっている。
「いくらかかるのか」だけでなく、「その公費によって地域に何が残るのか」。
蒲郡キャンパス計画は、開設の可否を追う段階から、公費投入の全体像と地域医療への効果を検証する段階へ入っている。
週刊TAKAPI 編集部/成田
特記事項
この記事は2026年10月3日時点で、蒲郡市、名古屋市立大学、市議会などが公表している予算資料、事業資料をもとに検証しています。
2026年度に計上された校舎外壁等改修、校舎内改修、学内LAN整備の各工事は「看護専門学校一般管理費」に含まれており、その全額が名市大蒲郡キャンパス設置に伴う費用であるとは確認されていません。
そのため、本記事では大学化・キャンパス設置に直接関連する準備事業費と、校舎改修費を分けて記載しています。
週刊TAKAPIでは今後も、施設改修と大学化の関係、開設後の年間運営負担、総事業費などについて関係先への確認を続けます。

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