愛知県蒲郡市の市民課で、始業前に業務を行っていた職員へ時間外勤務手当が支払われていなかった問題を巡り、市が他部署を含めて続けていた追加調査を2026年5月8日に終了していたことが、週刊TAKAPIの取材で分かった。
市は4月16日の公表時点で、検討が必要な部署があるとして調査を継続すると説明していた。
蒲郡市企画部人事課が週刊TAKAPIの書面取材に回答したところ、検討対象となったのは市民課を含む6部署。追加調査の結果、市民課以外では時間外勤務手当の未払いは確認されなかった。
一方、市は5月に調査を終えた後、その結果を追加公表していない。現時点でも公表する予定はないとしている。
34人に計53万787円 市民課の始業前業務で未払い
問題は、2025年3月12日付の公益通報をきっかけに明らかになった。
市民課では、シフト表に基づき職員が始業前に証明書自動交付機の用紙補充などを行っていたが、時間外勤務の申請がされていなかった。
蒲郡市は、2022年4月1日から2025年3月31日までの3年間について、退職者7人を含む34人を対象に時間外勤務手当49万3,765円と遅延損害金3万7,022円、計53万787円を支給すると公表していた。
同時に市民課以外の部署にも聞き取りを行い、「検討が必要と判明した部署がある」として調査を継続していた。
今回の書面回答で、この追加調査が5月8日に終了していたことが初めて具体的に確認できた。
検討対象は市民課含む6部署
市によると、検討が必要と判断されたのは、
総務部税務課、市民生活部市民課、福祉部福祉課、福祉部長寿課、市民病院事務局医事課、会計室の6部署だった。
市は書面回答で、これらの部署について、勤務開始前に釣銭となる小口現金を金庫から所属課へ持ってくる作業が行われているとの回答があり、検討が必要と判断したと説明した。
作業時間は1~2分程度。
市は、午前8時30分の勤務開始後でも対応可能だったとした上で、職員がスムーズに勤務を開始できるよう率先して行っていたものと「推測」している。
現在は改善されているという。
追加調査は「所属長への聞き取り」
週刊TAKAPIは、追加調査について、職員への聞き取りだけでなく、出退勤記録、時間外勤務命令簿、当番表、シフト表などを確認したのか尋ねた。
市は調査方法について、
「所属長への聞き取りを行いました」
と回答した。
勤務時間前に実施している業務のうち、勤務開始後の業務遂行に必要となる準備的行為について、所属長から報告を求めたとしている。
一方、週刊TAKAPIが例示した出退勤記録や時間外勤務命令簿などについて、個別にどの資料を確認したのかは今回の書面回答では具体的に示されなかった。
市は、調査の結果、市民課以外では時間外勤務手当の未払いは確認されなかったとしている。
勤務管理や時間外勤務申請の方法について、新たに改善が必要と判断された事項も「ありませんでした」と回答した。
調査終了後も結果公表せず
4月16日の公表では、市自身が「調査を継続している」と明らかにしていた。
しかし、その調査が5月8日に終了した後、結果について追加の公表は行われなかった。
週刊TAKAPIが理由を尋ねると、市は、
「他部署において時間外の未払いが確認できた場合には報告させていただく予定であり、未払いが確認できなかったため公表しませんでした」
と回答した。
今後、この追加調査結果を公表する予定についても、
「公表する予定はありません」
とした。
その一方で、市は今後同様の事案が発生した場合、公表方法についても検討するとしている。
シフト表は係長が作成 管理職も始業前業務を把握
市民課で問題となったシフト表について、今回の回答で管理側の認識も明らかになった。
市によると、シフト表を作成していたのは係長だった。
さらに、所属長や管理職も、シフト表に基づいて証明書自動交付機の用紙補充などが始業前に行われていたことを把握していたという。
つまり、始業前業務そのものについては管理職側も認識していた一方、時間外勤務の申請にはつながっていなかったことになる。
始業前業務が「いつから」かは確認できず
市は4月の公表で、始業前の業務が「過去から」行われていたとしていた。
週刊TAKAPIが「過去から」とは具体的にいつ頃からなのか確認したところ、市は、
「始業前の業務がいつから行われていたかどうかは、確認出来ませんでした」
と回答した。
市が確認できたのは、問題となった証明書自動交付機が2007年1月9日から稼働しているという事実だった。
ただし、自動交付機が2007年から稼働していることと、今回問題となった始業前業務が同時期から行われていたことは同じではない。
市自身も、始業前業務の開始時期については確認できていないとしている。
2022年4月以前は調査せず
未払い手当の支給対象を3年間とした理由について、市は労働基準法の賃金請求権に関する時効規定を挙げた。
市は、賃金請求権を5年間とする規定がある一方、附則で当分の間は3年間とされていることを根拠にしたと説明している。
週刊TAKAPIが、2022年4月以前についても同様の勤務実態があったか確認したのか尋ねたところ、市は、
「2022年4月以前につきましては確認しておりません」
と回答した。
始業前業務そのものがいつ始まったかは確認できていない一方、市が未払い調査の対象としたのは2022年4月以降だった。
全所属長へ時間外勤務の取り扱いを周知
市は再発防止策として、全所属長に対して時間外勤務の適正な取り扱いを周知した。
具体的には、時間外勤務には所属長による事前命令が必要であること、時間外勤務に該当しない行為の例、突発的な勤務が発生した場合には事後承認が必要であることなどを周知したという。
市民課でも、証明書自動交付機の用紙補充などを勤務時間内に行う運用へ変更している。
編集部まとめ
今回の独自取材で、市民課の時間外勤務手当未払い問題について、公表後に続けられていた調査の具体的な経過が明らかになった。
追加調査は5月8日に終了し、検討対象は市民課を含む6部署だった。市民課以外では未払いは確認されなかった。
一方、市は「調査を継続している」と公表していたものの、調査終了後の結果は追加公表せず、今後も公表する予定はないとしている。
また、市民課では係長がシフト表を作成し、所属長や管理職も始業前業務を把握していたことが新たに分かった。
始業前業務がいつ始まったかは確認できず、2022年4月以前については調査していない。
未払いが確認された期間について是正するだけでなく、調査範囲をどこまで設定するのか、終了した追加調査をどのように市民へ説明するのかも、行政の透明性を考える上で残る論点となる。
週刊TAKAPI 編集部/成田
特記事項
本記事は、蒲郡市が公表した時間外勤務手当未払い問題について、週刊TAKAPIが追加取材を行い、蒲郡市企画部人事課から得た書面回答を中心に構成しています。
書面回答で示された「6部署」には市民課が含まれています。
また、証明書自動交付機が2007年1月9日から稼働していることは確認されていますが、始業前業務が2007年から続いていたとする事実は確認されていません。市は始業前業務の開始時期について「確認出来ませんでした」と回答しています。
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