【独自】春日井・中1女子に砲丸直撃 市教委「安全配慮・情報共有が不足」 顧問は事故時に別種目を指導

【独自】愛知県春日井市の中学校で発生した砲丸直撃事故、市教委が安全配慮と情報共有の不足を認めた独自取材

愛知県春日井市の市立中学校で9月30日、部活動中の中学1年の女子生徒(12)の頭部に砲丸が当たり、頭蓋骨を骨折する重傷を負った事故をめぐり、春日井市教育委員会が週刊TAKAPIの独自取材に対し、事故当時について「安全対策や安全配慮、情報共有も含めて、不足していたと言わざるを得ない状況だった」との認識を明らかにした。

事故当時、校内では工事の影響で陸上部の砲丸投げの練習場所が変更されていた。市教委によると、校長は従来の場所が使用できなくなり、練習場所を移す必要があること自体は把握していた。一方、変更後に具体的にどの場所で練習するかについて、管理職への報告や教職員間の情報共有が十分ではなかったという。

さらに事故発生時、陸上部顧問は同じグラウンド内の別種目を指導しており、砲丸投げ側を見ていなかったことも、市教委による聞き取りで判明した。

市教委は事故後、活動場所を変更する場合、顧問だけの判断で運用せず、管理職への報告と教職員・生徒への周知を徹底するよう各校に指導した。

9月30日午後4時34分、中1女子の頭部に砲丸

春日井市の公式発表によると、事故が起きたのは9月30日午後4時34分。

グラウンドでは、陸上部の1年生男子生徒2人がペアを組み、一人が砲丸を投げ、もう一人が回収する形で練習していた。その隣接する場所では女子ハンドボール部が活動していた。

ハンドボールが砲丸投げの練習場所へ転がり出たため、女子生徒が拾おうとしたところ、男子生徒が投げた砲丸が頭部に当たった。学校は午後4時35分に救急車を要請した。

女子生徒は頭蓋骨を骨折した。10月3日までに市が公表した情報では入院中で、意識があり会話ができる状態とされている。6日の取材でも、市教委はその後の詳しい病状について新たな情報は把握していないと説明した。

工事で場所変更 校長は必要性を把握していた

事故の背景として、市がすでに公表していたのが校内工事による練習場所の変更だ。

従来の砲丸投げの場所は、工事に伴うフェンスなどによって使用が難しくなっていた。

市教委によると、校長も従来の場所では活動できなくなることを把握しており、砲丸投げの練習場所を変更すること自体は必要な対応だったという。

今回の独自取材で新たに浮かび上がったのは、その「変更後」だった。

市教委は、変更先について「ここで練習する」という具体的な情報が管理職と十分共有されていなかったと説明した。

つまり、問題となっているのは工事によって場所を変えたことそのものではなく、新たな場所の安全性を誰が確認し、誰が把握し、学校全体として共有していたのかという点だ。

「顧問が大丈夫と思っても一人の判断では良くない」

市教委担当者は、事故後の対応について週刊TAKAPIにこう説明した。

「仮に顧問が大丈夫だと思っても、管理職への報告がなければ、当然一人の判断では良くない」

顧問本人から見れば安全だと判断した場所でも、管理職や他の教職員が見れば「危険ではないか」と気付く可能性がある。

今回、市教委が重く見ているのは、その複数の目によるチェックが十分に機能していなかった点だ。

事故後、市教委は各校に対し、活動場所を変更する場合には、顧問による安全確認に加え、管理職へ報告し、さらに教職員や生徒にも変更内容を周知することを指導した。

防護ネットや物理的な仕切りはなし

事故当時、砲丸投げの練習場所と隣接する部活動との間には、ハンドボールなどが入り込むのを防ぐ防護ネットや物理的な仕切りは設けられていなかった。

市教委も取材に対し、ネットなどがあれば、他部のボールが砲丸投げ側へ転がることを防げた可能性があるとの認識を示した。

市の公式資料でも、砲丸投げと女子ハンドボール部が隣接する場所で同時に活動していたことが確認されている。

安全確認は2人1組 顧問が投てき地点で確認する運用ではなかった

砲丸投げの安全確認がどのように行われていたのかについても、新たな事実が分かった。

市教委によると、砲丸投げは2人1組で行われ、投げない側の生徒が周囲を確認し、投げる側に投てきできる状態であることを伝えることを想定した指導が行われていた。

顧問自身が砲丸投げのすぐそばに立ち、投げるたびに周囲を確認する運用ではなかったという。

顧問について、市教委は未経験の教員ではなく、複数年の指導経験があると説明している。

事故の瞬間、顧問は別種目を指導

さらに重要なのが事故当時の顧問の位置だ。

市教委による学校側への聞き取りでは、事故直前、陸上部顧問は同じグラウンド内にある直線コースで別の陸上種目を指導していた。

事故が発生した瞬間は、視線も体の向きも砲丸投げ側には向いていなかったという。

市教委は事故後、単に顧問や教員が活動場所に「いる」だけではなく、生徒の活動全体を把握でき、異変や危険を察知できる位置から監督することを各校に改めて求めた。

担当者は、死角となる場所で生徒が活動していれば、結果として「見えていなかった」ことになるとの認識も示した。

ハンドボール部との同時練習「初めてに近かった」

練習場所自体は夏休みごろから変更されていたが、それまでの運用にも重要な違いがあった。

市教委によると、これまでは他の部活動が活動していない時間帯を選ぶなどし、砲丸投げの練習と他部の活動が重ならないよう配慮していたという。

夏休み中は各部の練習時間をずらすことも可能だった。

9月は雨によって屋外活動が難しい日が続き、事故当日は久しぶりに屋外で活動できる状況だったと市教委は説明する。

顧問への聞き取りでは、事故当日のように**砲丸投げと女子ハンドボール部が隣接する状態で同時に活動したのは「初めてに近い状況だった」**という。

一方、それ以前に危険な場面やヒヤリ・ハットが存在しなかったかについては、現段階では明確になっていない。

市教委「安全配慮と情報共有が不足」

今回の取材で市教委が示した認識は明確だった。

「安全対策や安全配慮、情報共有も含めて、不足していたと言わざるを得ない状況だった」

ただし、学校の調査委員会による調査は続いており、安全管理や情報共有の不足が事故の直接的な原因だったと確定したわけではない。

市教委が認めているのは、現時点で事故当時の安全管理体制に改善すべき問題が存在していたという点だ。

事故後、市教委が全校へ3つの安全対策

市教委は事故を受け、10月1日に緊急校長会議を開き、市内の学校に安全管理の再点検を指示した。市の公式発表では6日にも改めて緊急校長会議を開催し、さらなる安全確保を徹底するとしている。

独自取材から、市教委が特に重視している対策は大きく3つに整理できる。

第一に、現在行っている部活動について、練習場所と練習方法そのものが安全かを再点検すること。

第二に、顧問や教職員が立ち会うだけではなく、活動全体を見渡せる位置で監督すること。

第三に、工事などによって活動場所を変更する場合、変更先を安全確認した上で管理職へ報告し、教職員や生徒にも周知することだ。

市の公式資料でも、全校で安全管理体制や動線を確認し、複数の部活動が同一場所で活動する場合の安全配慮を徹底するとしている。休日の地域クラブ活動も安全点検の対象とされている。

今後も学校改修 「空いていたから」で場所を変えない

今回の事故が春日井市全体の問題にもつながる理由がある。

市教委によると、市内では老朽化した学校施設の改修工事を今後予定している学校が複数あり、部活動などの活動場所を従来から変更するケースが今後も想定される。

担当者は、今回の事故を踏まえ、顧問が「ここが空いていたから」といった理由だけで独自に場所を変更するのではなく、安全確認した上で管理職へ報告する運用を徹底する必要があるとの認識を示した。

工事そのものではなく、工事によって学校内の通常の動線や活動配置が変化した際、危険を組織として把握できる仕組みがあるかが問われることになる。

砲丸投げなど投てき種目のルールも検討へ

市独自で砲丸投げなど投てき種目の安全基準を設ける可能性について、市教委は、調査委員会の結果を踏まえ今後検討するとした。

どのような場所で投てき競技を実施するのか、どのような安全確認を行うのかなどを改めて整理し、中学校側へ示すことも検討する。

さらに、市教委担当者は、学校で投てき種目を今後どのような形で実施していくのかという点も含めて検討対象になるとの認識を示した。

現時点で砲丸投げなど特定の種目を中止、廃止すると決まった事実はない。

調査委員会に市教委職員 公表時期は未定

学校は事故翌日の10月1日、校内調査委員会を設置した。

市教委への取材によると、調査には市教委からも職員1人が加わり、学校外の立場から聞き取りなどに参加する予定だ。

市教委は学校から調査結果の報告を受けることになっているが、結果を市として公表するかどうかは現時点で決まっていない。

調査完了についても具体的な期限は設けておらず、「速やかに」「早急に」進めるとしているものの、明確なロードマップは現段階ではないという。

警察への報告は翌日 市教委が経緯説明

学校が警察へ事故を報告したのは、事故翌日の10月1日だった。これは市の公式資料でも確認されている。

市教委によると、事故当日は教頭など関係者が病院への付き添いなどに当たり、校長は学校に残って対応。事故当日の情報を整理した上で、翌日午前に警察へ報告したという。

市教委は、情報を整理した段階で報告したとの認識を示している。

生徒への心のケア 学習面にも配慮

市は事故後、学校の全生徒へ事故について説明し、陸上部と女子ハンドボール部の生徒に対してスクールカウンセラーによる心のケアなど必要な支援を行うとしている。

今回の取材でも、市教委は事故そのものを直接目撃していなくても、救急対応などを見た生徒がいる可能性を挙げ、「安心して学校生活や運動活動ができるようにする必要がある」と説明した。

被害生徒についても、学校生活から離れる期間が長くなる場合には学習面への配慮が必要になるとして、学校と保護者が相談しながら対応していくとの認識を示した。

市教委担当者は「一日も早い回復を願っている」と話した。

市内でも「過去に把握していない」重大事故

市教委担当者は、砲丸投げで今回のような重大事故について、市内では過去に例を把握していないと説明した。

近年、部活動や体育活動で市教委に報告されるような同程度の重大事故も頻繁には発生しておらず、今回の事故を極めて重く受け止めているという。

市の公式資料でも「本件を極めて重く受け止め」とし、安全管理体制の継続的な改善を進める方針を示している。

編集部まとめ

今回の事故を「校内工事によって砲丸投げの場所が変わったために起きた事故」とだけ捉えると、本質を見誤る。

工事によって従来の場所が使用できなくなれば、活動場所を変更すること自体は避けられない。

問われるのは、その先だ。

変更した場所が安全なのか。隣接する他部の動線に危険はないのか。顧問以外の管理職や教職員が配置を確認したのか。投てき中に生徒が入り込む可能性を物理的、人的にどう防いでいたのか。そして、顧問が複数種目を見る中でも、活動全体を監督できる体制になっていたのか。

今回、市教委は「安全対策や安全配慮、情報共有が不足していたと言わざるを得ない」と認めた。

事故原因の最終的な認定は調査委員会に委ねられる。一方で、市教委が事故後、管理職への報告、学校内での情報共有、活動全体を見渡せる位置からの監督を改めて各校に求めた事実は重い。

個々の顧問や生徒だけの問題として終わらせず、学校という組織が重大事故を防ぐための安全確認をどのように機能させるのか。

週刊TAKAPIは、調査結果と再発防止策が学校現場でどのように実行されるのか、今後も取材・検証を続ける。

週刊TAKAPI 編集部/成田

特記事項

この記事は2026年10月3日に公開した記事について、10月6日に春日井市教育委員会へ行った独自取材と、市が公表している資料を基に大幅に加筆・更新したものです。

事故原因については校内調査委員会による調査が続いています。安全配慮や情報共有の不足が事故の直接原因だったと確定したものではなく、学校、教員、生徒など特定の当事者の法的な過失を断定するものではありません。

被害生徒及び事故に関係した生徒はいずれも未成年者であるため、学校名、氏名など本人の特定につながる情報は掲載していません。

被害生徒の負傷後の状態については、市が10月3日までに公表した内容と10月6日の取材時点で市教委が把握している範囲を記載しています。

Q春日井市の中学校で起きた砲丸事故はいつ発生しましたか?
A2026年9月30日午後4時34分、愛知県春日井市の市立中学校のグラウンドで発生しました。女子ハンドボール部の中学1年女子生徒が、砲丸投げの練習場所へ転がったボールを拾おうとした際、砲丸が頭部に当たりました。
Q女子生徒はどのようなけがをしましたか?
A頭蓋骨を骨折する重傷を負いました。10月3日までに市が公表した情報では入院中で、意識があり会話ができる状態です。10月6日の市教委への取材では、それ以降の詳しい病状について新たな情報は把握していないとしています。
Qなぜ砲丸投げとハンドボール部の活動場所が近かったのですか?
A校内工事によって従来の砲丸投げ練習場所が使用できなくなり、別の場所へ変更されていました。市教委は、場所を変更する必要性自体はあった一方、変更後の具体的な場所について管理職への報告や情報共有が十分ではなかったとの認識を示しています。
Q事故当時、陸上部顧問は砲丸投げを見ていましたか?
A市教委による学校側への聞き取りでは、事故時、陸上部顧問は同じグラウンド内で別の陸上種目を指導しており、視線や体の向きは砲丸投げ側に向いていなかったということです。
Q春日井市教育委員会はどのような再発防止策を取っていますか?
A部活動の練習場所と方法の安全再点検、活動全体を把握できる位置からの監督、活動場所を変更する際の管理職への報告、教職員・生徒への情報共有などを各校に指導しています。砲丸投げなど投てき種目の今後の安全ルールについても、調査結果を踏まえて検討する方針です。

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