愛知・名古屋2026アジア競技大会で、タイのテックボール代表関係者が競技会場の食事についてSNSに投稿した問題を巡り、大会組織委員会会長を務める愛知県の大村秀章知事が「こういう人には来てほしくなかった」などと発言し、タイ国内でも波紋が広がっている。
大村知事は10月6日の会見で、食事について発信した関係者を念頭に「再生回数を稼ぎに来たのかと思った」とする趣旨の発言をした。タイ紙カオソッドなど複数の現地メディアがこれを報じ、SNSでは批判的な反応が出ている。
ただ、今回の問題には重要な前提がある。テックボールはOCA=アジア・オリンピック評議会の要請を受けて追加された競技で、大会組織委員会と国際競技団体などが締結した覚書では、競技運営、会場整備、宿泊、輸送、警備、人員確保などの準備・運営を、原則として国際競技団体側が自らの責任で行うと定めていた。
さらに大会組織委員会は9月22日、SNSで批判されたテックボール競技会場の飲食について、組織委員会が提供したものではないと公式に説明している。
今回の論点は、「食事を誰が提供したのか」という運営上の責任と、「国際大会の組織委員会会長として発言がどう受け止められたのか」を分けて考える必要がある。
発端はタイ関係者による食事のSNS投稿
問題の発端は、タイのテックボール代表関係者が大会期間中、競技会場で提供された食事についてSNSで発信したことだった。
投稿では食事の量や選択肢の少なさが取り上げられ、日本国内でも「大会の選手向け食事に問題があったのではないか」とする形で拡散した。
一方、大会組織委員会は、問題になった飲食について自ら提供したものではないと説明。宿泊施設での食事については、競技日程やトレーニング、アレルギー、宗教・文化上の食事制限などを踏まえた提供体制を整えているとしていた。
つまり、SNSで映された競技会場の食事と、大会組織委員会が用意した宿泊施設での食事サービスは、同じものではない。
テックボールはOCA要請で追加 通常競技とは異なる運営
テックボールは、湾曲した専用テーブルを使い、サッカーや卓球の要素を組み合わせた競技。
愛知・名古屋大会ではOCAから追加実施の要請があり、パデルとともに大会競技へ加えられた。
追加競技を受け入れる際、組織委員会はOCAと国際競技団体との覚書に、
- 競技運営
- 会場整備
- 宿泊
- 輸送
- 警備
- 人員確保
- 関連する契約
- それらに伴う経費
などについて、国際競技団体が自らの責任で準備・運営すると明記した。組織委員会による支援は「最低・最小限」とされている。
この契約関係を踏まえると、テックボール会場で提供された食事を、そのまま「大会組織委員会が用意した食事」と扱うのは正確ではない。
大村知事「再生回数を稼ぎに来たのか」
大村知事は10月6日の会見で、食事に関するSNS投稿について強い言葉で反応した。
報道によると、大村知事は投稿した関係者について、「何をしに来たのか」「再生回数を稼ぎに来たのかと思った」とする趣旨の発言をしたうえで、
「こういう人には来てほしくなかった」
と述べた。
ここで注意が必要なのは、発言をタイ代表全体に来てほしくなかったと広げないことだ。
日本側の報道では、食事についてSNS投稿した関係者を念頭に置いた発言として伝えられている。
一方、タイ側の記事では見出しや要約によって「タイ選手に来てほしくなかった」と受け取れる表現も使われており、発言の対象範囲が広く伝わった面もある。
