【愛知・瀬戸】聖霊高校ソフト部18歳主将の自殺で約4700万円請求 遺族が南山学園と元顧問を提訴

愛知県瀬戸市の聖霊高校ソフトボール部で主将だった18歳女子生徒の自殺を巡り、遺族が南山学園と元顧問に約4700万円の損害賠償を求めて提訴した問題を伝えるニュース画像

愛知県瀬戸市の私立聖霊高校ソフトボール部で主将を務めていた女子生徒=当時18歳=が2022年に自殺した問題で、遺族が10月7日、当時の男性顧問による不適切な指導が自殺につながったなどとして、学校を運営する学校法人南山学園と元顧問を相手取り、慰謝料など計約4700万円の損害賠償を求めて名古屋地裁に提訴した。

遺族側は、主将就任後に女子生徒が強い叱責を繰り返し受け、自殺当日の練習でも主将としての適性や存在を否定するような言葉を受けたと主張。学校側についても、長年にわたり元顧問に指導を委ね、過度な叱責が生じ得る状況を十分に是正しなかったとして責任を求めている。

一方、南山学園は現時点で「訴状が届いていないためコメントできない」としており、元顧問や学校法人側の法的責任は確定していない。

2021年7月に主将就任 遺族側は「強い叱責が続いた」と主張

訴状などによると、女子生徒は2021年7月にソフトボール部の主将に就任した。

その後、チーム内でミスが起きた際などに、主将という立場から特に強く叱責されることがあったという。

遺族側は、元顧問が他の部員の前で、主将でなければ試合に出していないといった趣旨の発言をしたこともあったと主張している。

2022年4月19日の練習では、主将としての適性や存在を否定するような言葉を受けたとされ、女子生徒は同日夜に死亡した。

ここで重要なのは、これらが今回の訴訟で遺族側が示した主張を含むという点だ。具体的な発言内容や、その言葉と死亡との法的な因果関係については、今後の民事裁判で審理される。

第三者委「強い言葉が自責感を強めた可能性」

学校側が設置した第三者委員会は2024年に調査報告書をまとめた。

報告書は、女子生徒が主将として重圧を抱える中、強い言葉による指導が本人の不全感や自責感を強めた可能性を指摘した。

さらに、自殺については衝動的な行為だったとみられる一方、部活動での対応が一因だった可能性は否定できないとの趣旨の評価を示している。

ただし、第三者委員会は元顧問の指導だけを女子生徒の死亡の唯一の原因と認定したわけではない。

今回の裁判では、第三者委員会の評価を踏まえながら、元顧問の指導と死亡との法的な因果関係がどこまで認められるのかが争点になる。

20年以上ほぼ単独の指導体制 第三者委が危険性指摘

第三者委員会の報告書は、元顧問が20年以上にわたり、ほぼ一人でソフトボール部を指導してきた体制についても問題を指摘した。

報告書は、専門性や指導力を持つ顧問が長期間にわたり単独に近い形で指導を続けた場合、第三者の目が届きにくくなり、閉鎖的・独善的な指導に陥る危険性があるとの趣旨を示している。

つまり、今回の問題は元顧問個人の言動だけではなく、長期間にわたる指導体制を学校がどのように管理・検証していたのかという論点も含んでいる。

ただし、学校側にどの程度の法的な監督義務違反があったのかは、現時点で確定していない。ここも今回の訴訟で遺族側が責任を求めている争点の一つとなる。

愛知県への報告は約3年間途絶える

この問題では、女子生徒の死亡後の学校と愛知県との情報共有も問題となった。

愛知県によると、県は2022年7月に学校側へ経過を確認していたが、その後2025年9月まで約3年間、学校から県への報告はなかった。

2025年9月に問題が報道された後、県は学校に第三者委員会の調査結果や経緯の提出を求め、学校側から報告を受けた。大村秀章知事は、約3年間報告がなかったことについて「極めて遺憾」とする認識を示している。県は県内の私立学校に対しても、重大事案について適切に報告するよう改めて通知した。

今回の損害賠償請求とは別の論点だが、重大事案発生後の学校側の情報共有や検証体制がどのように機能していたのかを考える上で重要な経緯となる。

学校は2025年に会見 第三者委の指摘を「重く受け止める」

聖霊高校は2025年9月に会見を開き、第三者委員会が元顧問の不適切な指導を認定したことについて、学校側として重く受け止めているとの考えを示した。

当時、学校側は女子生徒の死亡について謝罪するとともに、生徒の心のケアや部活動の指導体制の見直しを進める考えを説明していた。学校側は保護者説明会も開き、スクールカウンセラーの配置を増やすなどの対応を説明している。

一方、保護者からは元顧問が第三者委員会の報告後も一定期間部活動の指導を続けていたことなどについて不安の声も出ていた。

「厳しい指導」とハラスメントの境界も争点に

遺族側は今回の訴訟で、元顧問による発言について、競技力向上を目的とした通常の指導ではなく、女子生徒の人格を否定するような行為だったと主張している。

高校の部活動では、指導者と生徒との間に明確な力関係がある。

その中で、強い言葉による指導がどこまで許容されるのか、競技上の叱責と人格を傷つけるハラスメントをどのように区別するのかは、今回の裁判でも重要な論点になり得る。

ただし、元顧問の具体的な発言について違法性が認められるか、またそれが女子生徒の死亡と法的な因果関係を持つかは、裁判所が証拠や双方の主張を踏まえて判断することになる。

約4700万円請求 裁判で何が争われるのか

遺族は南山学園と元顧問に対し、慰謝料など計約4700万円の損害賠償を求めている。

今後の主な争点としては、

  • 元顧問がどのような言動を行ったのか
  • その言動が指導の範囲を超えた違法なものだったのか
  • 元顧問の言動と女子生徒の死亡との因果関係
  • 学校法人が指導体制をどこまで把握・監督していたのか
  • 学校側に安全配慮義務上の問題があったのか

などが考えられる。

現時点では原告である遺族側の主張が示された段階であり、南山学園と元顧問側の詳しい認否や反論は明らかになっていない。

南山学園「訴状が届いていない」

南山学園は今回の提訴について、現時点では訴状が届いていないためコメントできないとしている。

南山学園は聖霊中学校・高等学校を設置する学校法人で、聖霊高校は愛知県瀬戸市に所在する。学校法人 南山学園

訴状が送達された後、学校法人と元顧問が遺族側の主張をどこまで認め、どの部分を争うのかによって、裁判の具体的な争点が明確になる。

編集部まとめ

愛知県瀬戸市の聖霊高校ソフトボール部で主将だった女子生徒=当時18歳=が2022年に自殺した問題で、遺族は10月7日、学校法人南山学園と元男性顧問を相手取り、約4700万円の損害賠償を求めて名古屋地裁に提訴した。

遺族側は、元顧問による強い叱責や人格を否定するような言葉が女子生徒を追い詰め、学校側も長期間にわたる指導体制を十分に管理しなかったなどと主張している。

第三者委員会は、強い言葉による指導が本人の不全感や自責感を強めた可能性を指摘し、部活動での対応が死亡の一因だった可能性を否定できないとの評価を示した。

一方、第三者委員会は元顧問の指導だけを唯一の原因と認定したわけではない。元顧問の言動と死亡との法的な因果関係、学校法人側にどこまで監督上の責任があったのかは、今後の裁判で審理される。

週刊TAKAPI 編集部/松本

特記事項

本記事は2026年10月7日時点で確認できた提訴内容、学校側が設置した第三者委員会の調査結果、愛知県の公開情報などをもとに構成しています。

本件は民事訴訟が提起された段階です。南山学園および元顧問の損害賠償責任は確定していません。

また、第三者委員会は部活動での対応が女子生徒の死亡の一因だった可能性を指摘していますが、元顧問の指導だけを唯一の原因と認定したものではありません。

Q聖霊高校ソフトボール部を巡り、誰が誰を提訴しましたか?
A2022年に自殺した当時18歳の女子生徒の遺族が、学校法人南山学園と当時の男性顧問を名古屋地裁に提訴しました。
Q遺族はいくらの損害賠償を求めていますか?
A慰謝料などとして計約4700万円を求めています。
Q第三者委員会は元顧問の指導をどう評価しましたか?
A強い言葉による指導が女子生徒の不全感や自責感を強めた可能性を指摘し、部活動での対応が死亡の一因だった可能性を否定できないとの趣旨の評価を示しました。
Q学校側の責任は認定されていますか?
A現時点では認定されていません。遺族側は学校が指導体制を十分に監督しなかったなどと主張しており、今後の裁判で審理されます。
Q南山学園は提訴について何としていますか?
A現時点では訴状が届いていないためコメントできないとしています。

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